第15話 解体所のとっつぁん

 解体所に来たフェルダーとレン、そして5匹のコボルト達。


「ワンワン」(食い物の臭いだワン)

「ワォーン」(美味そうな匂いがするワン)

「ガウガウ」(こっちから良い匂いだワン)

「バウバウ」(どれどれワン)

 クンクン ←アインス


 コボルト達は辺りの臭いを嗅いでまわる。


「あんまりウロウロするなよ! よう、とっつぁん。久しぶりだな」


「おお、フェルダー。元気そうだな。後ろにいるのは、………コボルトか。随分綺麗にしてるじゃねえか」


 解体所の髭の親父に親しげに話し掛けるフェルダー。


「ひと目で見破るなんて流石とっつぁんだ」


「ははは、伊達に長年解体はやってねえぞ」


「買い取りを頼むよ。そこの台に出していいか?」


 フェルダーは空いている解体用の台を指差した。


「おう、そこで問題ねえ」


 ガシャ、ガシャ………。


 とっつぁんが解体用の台に向かって歩いて来た。右足に義足をつけていて、片足を引き摺っていた。


 フェルダーはマジックバッグから次々と魔物の素材を台の上に置いていく。


 台の上は素材で山盛りになった。


「おお、随分多くの魔物を討伐したようだな。俺が教えた解体の腕も鈍ってないようだ」


「ああ、領都から護衛をしてきたからな。途中で狩った魔物は全て持ってきた。おい、レン。薬草も買い取りに出したらどうだ?」


「へっ? 薬草? 薬草なんて持ってないよ」


「ああ、アインスが回復薬と薬草を大量にもってたぞ。回復薬は使うかも知れないから良いとして、薬草は買い取って貰ってもいいんじゃないか?」


「え! アインス、本当?」


「ワフ」(此処に入れてるワン)


 秋田犬のコボルト・アインスは鞄を肩から掛けている。


(アンナから薬草採取用に鞄を譲り受けたのは知っているけど、もしや?)


「アインス、薬草を鞄から出してみて」


「ワフワフ」(分かったワン)


 アインスが解体の台に薬草を出していく、明らかに鞄には入らない大量の薬草が次から次へと出てくる。


(アンナさんにマジックバッグを貰ってたのかぁ。これは、いつかお返ししないと駄目だなぁ)


「ほほう、薬草の採取も丁寧でいい状態だ。買い取り額に色を付けさせて貰うよ」


 そんな事をしていると。


「ワンワンワンワン」(お腹空いたワン)

「ワォーン」(我慢出来ないワン)

「ガウガウ」(この匂いたまらんワン)

「バウバウ」(ねぇ、なんか食べたいワン)


 ゴールデンレトリーバーのコボルト・ツヴァイ、フラットコーテッドレトリバーのコボルト・フィア、ドーベルマンのコボルト・ドライ、シベリアンハスキーのコボルト・フンフが騒ぎ出した。


「おう、腹減ったのか。とっつぁん、コイツらが喰える解体の余りはあるか?」


 フェルダーはコボルト達の言葉を正確には分からないが、言いたい事は大体分かるようだ。


「ああ、そこの樽に捨てる内蔵や、人は喰えない肉などが入っているから、喰えるなら喰ってもいいぞ」


「ワンワン♪」(ワーイ)

「ワオーン♫」(食い物だワン)

「ワフーン」(有難うワン)


 コボルト達は人の言葉が理解出来るので、樽に駆け寄る。


 アインスがマジックバッグから鉄板と薪を出すと、フィアが生活魔法の『ストーン』で簡易の竈門を作り、フンフが生活魔法の『ファイア』で薪に火を付けて、肉や内蔵を焼き始めた。


「ワフワフ」(軽く焼くと美味しいワン)


「コイツら、やけに慣れてるなぁ」


 とっつぁんはそんなコボルト達に関心するばかりだ。

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