第13話 ダリアとエリー

 レン達が冒険者ギルドの建屋に入ると、注目が一斉に集まった。レンを見ている人は誰もいない、コボルト達に注目しているのだ。


「あれ、『朝焼けの光』じゃないか?」

「帰って来たのか」


『朝焼けの光』は割と有名みたいだ。


 ギルドの中はレンがラノベでよく見たギルドの様子そのままだったが、時間的に窓口が混む時間では無いのか、並んでいる冒険者はまばらで、併設した酒場で飲む荒くれ共がワイワイガヤガヤしていた。


 レン達がギルドの中に入ると、一瞬シーンとなり………。そのまま沈黙が続いている。


「あれ、何かしら?」

「犬の魔物のようね」

「初めて見たわ」

「モフモフね」

「可愛い〜」


 女の冒険者がヒソヒソと話だし、男の冒険者は探るように無言で見詰めていた。


 そのうち一人の女性の冒険者が近付いてきた。


「ダリアさん、その魔物は何かしら? 初めて見たのだけど、可愛いですね」


「あ〜、後で話すから。今は先に窓口に行きたいわ」


(魔法使いの女の名前はダリアと言うのか)


「エリーさん。その──」

「そのモフモフを───」


「あー、あとあと」


 その後も女の冒険者達が寄ってくるが、狩人の女であるエリーも最後まで言わせず、窓口に急ぐ。


 しかし、女性冒険者達の様子に金になる匂いを感じとった荒くれ者が、『朝焼けの光』の前に立ち塞がった。


「おい、随分変わった魔物を連れてるじゃねえか。俺達にも一、二匹分けてくれよ」


「5匹全部でも良いぜ、なあ!」


「がははは、俺達はCランクパーティの『漆黒の翼』だ。知ってるか? この街に──」


 ドカッ!


 槍術士の男が槍の石突で、話している髭面の男の鳩尾をついた。


「邪魔」


「うぷっ、おのれ何すんじゃあああ!」


「あ゛ぁ? 俺達がBランクパーティの『朝焼けの光』と知っていて喧嘩を売ってるのかあ?」


 リーダーが威圧しながら『漆黒の翼』達を睨む。


「おい、よそ者のあいつらが、この街のトップパーティ『朝焼けの光』に喧嘩売りやがったぞ」


「調子に乗ってたからな、いい気味だぜ」


 周りの冒険者の声が聞こえてきて狼狽え始める『漆黒の翼』。


「Bランク………」

「いや、俺達はそんなつもりじゃ──」


「そんなつもりがどんなつもりか知らないけどね。私達に喧嘩売ってただで済まない事を教えてあげるわ」


「そうそう教育が必要ね。リーダー、後は宜しく!」


 お気に入りのコボルト達を寄越せと言われて、怒り心頭の槍術士とダリアとエリーは、バキバキと指を鳴らして『漆黒の翼』のメンバーを連れてギルドを出て行く。


「ワンワン」(俺達も行くぜワン)

「ワオン」(教育だワン)

「バフバフ」(勿論だワン)


 その後をゴールデンレトリーバーのコボルト・ツヴァイと、フラットコーテッドレトリバーのコボルト・フィア、シベリアンハスキーのコボルト・フンフの三匹が、ふんすと鼻息を漏らして当然の様について行こうとする。


「おい、ツヴァイとフィアとフンフはこっちな。従魔登録しなきゃならないからな」


 三匹のコボルトを見てリーダーが止める。


「「「ク〜ン」」」


 残念そうな三匹。


(バリバリの武闘派になったようなコボルト達を見て、『朝焼けの光』に預けて良かったのだろうか?)


 ふと不安に思うレンだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る