第12話 辺境の街

 レン達が乗る乗り合い馬車が領都から辺境の街に到着した。


 レンは辺境の開拓村まで行くのだが、開拓村まで行く馬車は無かったので、一番開拓村に近い街に行く馬車に乗っていたのだ。


 此処からレンは馬車を降りて一人で辺境の開拓村に向う事になる。


「ええええええ! フンフとここでお別れなの? ねぇねぇ、私と一緒に暮らしましょうよ。ねぇ、いいでしょ。レンくんお願いよ」


 商人の使用人カミラは泣き出さんばかりに、必死にレンにお願いするが………。


「駄目に決まってるだろ! いい加減に諦めなさい。眷属はテイマーに従属するんだ。フンフもレンから離れたく無いだろうよ」


 商人の男はシベリアンハスキーのコボルト・フンフに抱きついているカミラを無理矢理引き離す。


「あああああ、フンフ! また遊びましょう。絶対よおおおおお!」


 そんな商人とカミラを残念そうな目で見ながら、アンナとバークはレンに別れを告げる。


「アイちゃんのお陰でとっても楽しい旅になったわ。私達はこの街に住む事になるから、困った事があったらいつでもきてね」


「うちのカミさんが世話になったな。大工仕事が必要になったら声を掛けてくれ。格安で仕事をするからなぁ」


「いえいえ、こちらこそアインスがアンナさんに大変お世話になりました。この御恩はいつかお返ししたいと思います」


「まあ、御恩なんてないわよ。いつでも顔を見せにいらっしゃいな」


「はい。有難う御座いました」


 アンナとバークに別れを告げると、四人の冒険者達が待っていた。


『朝焼けの光』の四人だ。


「護衛の報告で冒険者ギルドに行くんだが、レンも一緒に行こう。ドライ達の従魔登録をする必要があるし、冒険者登録もした方が後々良いだろう。身分証明にもなるし、薬草や素材を売る事も出来るからな」


 とリーダーが誘うので、レンは一緒に冒険者ギルドに行く事にした。


(冒険者ギルドに一人で行くと、お決まりのパターンで悪い人に絡まれたりしそうだからな。一緒に行った方が良さそうだ)


 という訳で、レンと5匹のコボルト、『朝焼けの光』の四人は冒険者ギルドに向かった。


「お母さん、何あれ? ワンちゃん? 可愛い〜」


 それは、女の子の一声から始まった。それまで、興味深そうに眺めていたが、ジッとコボルト達を黙って見詰めるだけだった女の人達が一斉に喋りだす。


「きゃあああ、ナニあれ! 可愛い!」

「モフモフした〜い」

「ねぇねぇ、犬じゃないわよね」

「そりゃそうでしょ。犬は二本足で歩かないって」


 綺麗でモフモフで可愛い5匹のコボルトが、あの飢えた目で涎を垂流し襲って来る汚くて臭いコボルトだとは誰も思わない。


「ありゃ、これは思ってたよりやべぇな」


 リーダーが思わず口にした。


「そうね。こんなに可愛いんだもの。ほっとけないわね」


「早めに従魔の証を着けないと一悶着起きそうね」


 狩人の女と魔法使いの女もリーダーに同意する。


「取り敢えず、冒険者ギルドに急ぐか」


「はい」


 リーダーの言葉にレンは状況を理解出来ず、返事をするしかなかった。


「ワフ?」


勿論、コボルト達も状況は理解出来ない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る