第60話 幕間 もし俺が常識改変を使えるなら零と新に常識を埋め込むね

 注:今回のお話は自作品の『肉体関係を持っていた“元”幼馴染と関係を取り戻す』とのコラボ回です。しかし、こちらのお話を読まなくても楽しめる内容になっております。

 また、本編に大きく関与する事はありませんので、こうしたコラボ回が苦手という方は飛ばしていただいてもらって大丈夫です。


 それでは物語へ移ります。








 ―――――――――――――――――――――――


「みーちゃん! 今日迷子になりたい気分なんだ! あーちゃんと三人で行こ!」

「なんで? もう一回言うね。なんで?」

「そういう訳だからみんな先帰っといてね!」

「おーい、俺の意思は?」

「私の意思がみーちゃんの意思、私の意思が世界の意思だよ」

「逆ジャイアニズムやめろ。あと規模がでかい」


 と、そんな訳で俺は零に連れられて新を迎えに行った。


「お兄ちゃん! 我慢できなくてえっちな事しにきたの!? あれやりたい! 常識改変して貞操観念バグらせてグラウンドの真ん中でえっちするやつ!」

「もし俺が常識改変を使えるなら零と新に常識を埋め込むね」

「それはまた今度ね、あーちゃん」

「なんで出来る前提なの?」

「そんな事よりあーちゃん、迷子なりに行こ」

「いいよ」

「軽いな!?」



 そういう訳で、俺と新で零について行く事になった。


「……それにしても、どこに行く気なんだ?」

「ここではないどこかへだよ……」

「何も考えてないんだな」

「その可能性は十割あるかな」

「そうでしかないじゃねえか。……もう一度聞いておくが。なんでまた迷子になりたくなったんだ?」

「気分」

「猫もびっくりな気分屋だな」

「え? 私とにゃんにゃんしたいって?」

「言ってない」

「お兄ちゃん! お兄ちゃんも私の中の肉襞の迷路に入りたくなってきたよね!」

「なってない。ここまだ中学校の近くでお前の友達らしき人もいるけど良いのか?」

「え? もっと見せつけてって事? ……こ、ここでするの!?」

「そろそろ俺が逮捕されそうだからやめようなって言ってるんだよ」


 嫌だ。妹に手を出すド変態クズに間違われるのは。



 ……あれ? もしかして手遅れ?


「大丈夫、捕まる時は一緒だよ。みーちゃん」

「誤解が解けるようにしてくれませんかね」


 そんなやり取りをしながら歩く。……時間にして、三十分以上。


「……どこまで歩くつもりなんだ? あと歩きづらい」

 俺は今右から零、左から新に抱きつかれながら歩いていた。歩行の邪魔である。


「んー。もーちょい?」

「まじでどこまで行くつもりなんだ……?」


 そうしてまた十分ほど歩いていると……やけに目立つカップルとすれ違った。


 高校生のカップルだろう。すっごい美男美女が手を握って歩いている。


 その男子高校生と目が合った。なんとなく……親近感を覚えた。いや、俺なんかが親近感を覚えるなど烏滸おこがましいぐらいのイケメンなのだが。


「みーちゃん。どうかしたの?」「……水音みなと? どうかした?」

「「……いや、なんでもない」」


 俺とその高校生とで言葉が被った。思わず苦笑が漏れる。向こうも同じようだった。



「むぅ……みーちゃんに薔薇のオーラが漂ってる」

「俺にそっちの気はねえよ」

「……まさか、水音」

「無いから。最近変に邪推してくる女子は増えてきているが」


 と、お互いに似たようなやり取りをしながら……また、歩き始めた。


 もう会う事はないだろうなと、その時は考えていた。


 ◆◆◆


「お兄ちゃん! 疲れた! 駅弁で運んで!」

「置いていってやろうか。……まあ、結構歩いたしな。そういえばさっきカフェがあったよな。行ってみるか」


 彩夏の曲も流れていたというのもある。どうせなら推しの曲を聞きながら休みたい。


 そういう事で、数分ほど歩いてカフェへと戻ってきた。


 外から見て……なかなか客が多い。それでもとりあえず中を見てみようと入ってみる。


 すると……空いてる席はなさそうだった。


「みーちゃん。ここ人いっぱいだよ?」

「分かってる。……だが、他に休めそうな所もない」

「とか何とか言いながら。彩夏ちゃんの曲に誘われて来たくせに。あとで【地獄・乳潰し】の刑ね」

「頭悪そうな技名やめろ」

「じゃあ私がお兄ちゃんのお兄ちゃん撫でて癒してあげるね!」

「癒されねえだろうな。つか大声でそんな事言う……な?」


 そんなやり取りをしながら空いてる席がないかもう一度見渡してみると……。


 先程の男子高校生と目が合った。



 やべ、今のやり取り見られてたか? また正常な人にドン引かれてしまう……。


 その時だ。店員さんが近づいてきた。


「申し訳ありません、お客様。現在席が埋まっておりまして……相席などでもよろしいでしょうか?」

「籍が!? じゃあ、みーちゃん、私と籍を入れるしか……」

「お前は黙ってろ。はい、お願いします」

「し、失礼します。少々お待ちください」


 いやもう本当にすみません店員さん。この馬鹿が馬鹿で。


 そして、その店員さんは……なんと。先程の高校生カップルに近づいた。よく見れば、その高校生カップルの隣に中学生らしき美少女が見える。妹だろうか。


 そんな事を考えていると、店員さんがその男子高校生……面倒だな。DKと略そうか。いや、それだとあのゴリラが頭に浮かぶな。やめておこう。


 男子高校生は店員さんと話し、二人を一目見ている。


 そうして。俺は彼らと相席する事になった。


「え、ええと。先程はどうも。相席もありがとうございます」

「あ、ああ。大丈夫ですよ」


 初対面こそ丁寧に。そして礼儀正しくしなければいけない。俺は容姿に優れていないので尚更大事だ。


 そして、その男子高校生の正面に座る。俺に続いて、零と新も会釈をして座った。



 ……それにしても、男子高校生呼びはやっぱりあれだよな。


「えっと……折角ですし、自己紹介なんかしても良いですか? ……何かの縁だと思って」


 言葉にしてみて新手のナンパかなんかと間違われそうだと思ったが、彼は一瞬考えた後に頷いた。


「そう……ですね。このまま気まずい雰囲気なのも良くないですし」


 俺はホッとしつつ、先にこちらからしようと咳払いをした。


「俺は蒼音未来です。高校一年生で、帰宅部です。趣味は特に無いです」

 そんな簡単な自己紹介だ。これはあちらの自己紹介のハードルをへんに上げたくないからである。……自分でも趣味がないはどうかと思うが。


 俺の次は零だ。零はニコリと微笑んだ。そうだ。忘れていたが、こいつは擬態が上手いのだ。普通の挨拶くらい出来るだろう。


「九条零です。みーちゃんの幼馴染で、将来はみーちゃんのお嫁さんになって子供を百人作る事です。最近の日課はみーちゃんの使用済み下着を盗む事です」


 ……。


 まじでぶん殴ってやろうか? こいつ。


「初対面からえぐいのぶっ込まないでくれる? 友達百人出来るかなのノリで言うことじゃないし三人とも困惑してるよ?」

「あ、じゃあ次私! 私は蒼音新! 中学二年生で、お兄ちゃんの妹だよ! 将来の夢はお兄ちゃんのお嫁さんになってお兄ちゃんと全部の体位を試す事だよあ、あと最近の日課はお兄ちゃんが寝てる時に部屋に忍び込んでお兄ちゃんがえっちな夢見れるように耳元で囁きかける事だよ!」

「第一印象最悪だよ! 俺が本格的にやばいクズ野郎みたいになってんな!?」


 ああもう、もしかしたら仲良くなれていたのかもしれないのに!


「…………大変なんですね?」

「やめて! そんな可哀想な人を見るような目で見ないで! 今までで一番リアルな反応で心にくるから!」


 恐らく今までで一番傷ついたかもしれない。いや、相手が悪い訳ではない。悪いのは四割零四割新でこれを制御しきれなかった俺が二割だ。


 すると、次に彼が自己紹介を始めた。


「……俺は獅童水音しどうみなと。同じ高校一年生だ。タメ口で喋って欲しい。俺もその方が楽だ。趣味は料理で…………将来の夢はカフェで働く事だな」


 そんな彼を……俺はめちゃくちゃガン見してしまった。彼……水音が苦笑するのを見て俺はハッとなった。


「ああ。すっごい久々に正常な男子に会えた気がするからつい。あ、ごめん。続けてくれ」


 俺の言葉に、水音の隣にいた美少女JKが苦笑しながらも口を開いた。


「私は竜童火凛りんどうかりん。……水音とは幼馴染で、趣味も……料理かな。将来の夢は水音とカフェを開く事、かな」

「やべえ……すっげえ正統派なヒロイン来てる……え? うちこんなんなんだけど」

「こんなんとは何か。こんなんとは。超王道ヒロインぞ? 我」

「はは。帰れ。元の世界に。あ、どうぞどうぞ。お気になさらず」


 困惑している三人へ告げる。最後に美少女JCが……困惑しながらも笑顔を見せた。


「えっと。僕は獅童水美しどうみなみです。獅童水音の妹で、新ちゃんと同じ中学二年生です。バスケ部に入ってて、将来の夢は……まだ決めてないです」

「私と同じ匂いがする……さては水美ちゃんもブラコンだな!?」

「まとも成分補給出来たと思ったらこれだよ。初対面で失礼だぞ。悪いな」

「い、いえ……とっても個性的で面白いです。……それに、僕も兄さんの事は大好きですから」


 彼女は笑顔でそう言った。思わず涙が出そうになる。


「み、未来!? どうしたんだ!?」

「い、いや……世の中にはこんなに正常な人達が居るんだなって思うと嬉しくて…………それはそれとして、世の中の不条理が俺の周りに集まってるんだが」

「…………情緒凄いな。大丈夫か?」

「あ、大丈夫です。みーちゃんの通常運転なので」

「そ、そうか」


 水音がすっごい引いてるけど。まあ許容範囲だ。視線が蔑むようなものにはなっていない。


「そういえば、その制服って隣町の高校の物だよな。どうしてここに?」

「え? そんな遠くまで来てたの? 俺達」


 水音の言葉に俺は驚き……思わず零を見た。


「お前なぁ……いきなり今日は迷子になりたい気分だから着いてきてって言うかと思えばこれかよ」

「てへっ。許してにゃん」

「ぶん殴るぞまじで」

「まあまあお兄ちゃん。落ち着いて。おっぱい揉む?」

「揉まねえ。つかまじでやめて? 折角繋がりを持てそうだった人達にドン引かれてるから」


 やっぱり猿轡でも持ってきておいた方が良かっただろうか。……いや、もっと引かれるな。


「めちゃくちゃ勘違いされそうだから言っとくけど、俺は妹に手を出したりしてないし、こいつは別に恋人でも無いからな?」

「ん。恋人じゃなくて妻です」

「呼吸をするように嘘をつかないでくれるかな?」


 どうにか自身のフォローをしようとするも意味が無い。幸い……三人は笑ってくれていた。


「そういえば気になってたんだが、水音は……竜童さんと交際してるのか? デリカシーの無い質問で悪いな」


 ふと、先程から疑問に思っていた事が口から飛び出した。


「ああ……」

 水音が竜童を見た。……やはり、デリカシーがなかっただろうか。


 水音は俺を見て、頷いた。


「そうだ。付き合ってる」

「……! 火凛ちゃん! どうやって堕としたの!? 参考にしたい!」

「え、ええ? えっと……体で?」

「火凛さん?」

「全裸でベッドに入っても襲われない場合は!?」

「零さん?」


 公衆の面前で何を言っているんだこいつは。……ん? 向こうも凄いこと言ってなかった?


 しかし、それを聞くより早く新が口を開いた。


「ねえねえ。水美ちゃんはお兄ちゃんのベッドに忍び込んだりしないの?」

「えっ!? えっと……時々兄さんと姉さんと一緒に寝てるけど」

「良いな! お兄ちゃん、私もお兄ちゃんと寝たい! 裸で絡み合って!」

「要求が多いな? 簀巻きにして廊下に寝転がしてやろうか」

「それ……悪くないかも」

「なあ水音。叱ってもご褒美、放置もご褒美にしかならないやつの矯正の仕方ってどうすればいいか分かるか?」

「い、いや……難しいな。それは」


 ……やはり水音も分からないか。諦めるしかない。


 この状況に少し疲れ、俺はため息を吐いた。そして、立ち上がる。



「……悪い。少し御手洗に行ってくる」

「大丈夫? 手伝おっか?」

「頼むからもう口を開かないでくれ。あとめちゃくちゃ俺がいない間不安なんだが」

「大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫」

「はいは一回の上位互換みたいなのやめてくれる? 壊れたロボットかと思ったよ。……一応、本気で不快ならちゃんと伝えれば大丈夫だ」


 零は頭がおかしいだけで性格が悪い訳では無い。三人へそう言い残して行こうとすると……水音が立ち上がった。


「あ、俺も行くよ。丁度行きたかった所だ」

「ああ、分かった」


 俺は水音に頷き、一緒に御手洗へと向かった。


 ……零達を残していくことに少し。いや、かなり不安ではあったが。


 ◆◆◆


「水美ちゃんの性癖ってどんなの? 私はね。――自主規制――自主規制――自主規制なんだけど」

「いきなりだね……それに。全部初めて聞いたんだけど。あと、あんまり外でそんな話はしない方がいいんじゃ……?」

「今の世の中は多様性が大事なんだよ」

「そ、そうなのかな……?」

「そうだよ。時代は変わってきてるんだよ。だから兄妹とかも関係ないんだよ。ぐちゃぐちゃのぬっちょぬちょのぱっちょんぱっちょんして良いんだよ」

「やっぱり僕騙されてない!?」

「てへっ」

「それで誤魔化せると思ってるの!?」

「零ちゃんが可愛く舌を出したら八割は許してくれるって言ってた」

「その考え方良くないよ!?」

「てへっ」

「……うぅ。頭痛くなってきた」

「大丈夫? おっぱい揉む?」

「揉まないよ!」

 普段は女の子相手でもこんな事は言わないけど、つい水美ちゃんが可愛くて言っちゃった。


 すると、水美ちゃんが私のおっぱいをじーっと見てきた。

「……どうやったらそんなにおっきくなるの?」

「お兄ちゃんが寝てる間にこっそり手を使って……」

「聞くんじゃなかった……」

「ちなみに私はこの方法を試してから一年でバストサイズが2カップ上昇しました」

「!?」

「あと気持ちいいからおすすめだよ」

「当たり前のように犯罪を推奨しないで……でも、2サイズ……僕だとDカップに……」


 私は水美ちゃんの葛藤を見ながらうんうんと頷いた。近親相姦の輪が広がるのはいい事だ。後でお兄ちゃんが知ったらご褒美をくれるしばかれるはず。


 その後、水美ちゃんとお兄ちゃんとえっちな事をするのがダメかどうか談義をするなどした。




 ◆◆◆


 私は火凛ちゃんから色々な話を聞いていた。


 どうやればみーちゃんを堕とせるのかのアドバイスとか、初体験で失敗しないためには……など。


 火凛ちゃんは凄いし可愛い。髪と肌を見れば、どれだけ丁寧に手入れをしているのか分かる。


 それと……なんとなく、私と同じオーラを感じる。


「……そういえば、零ちゃんはどうして彼を好きになったの?」

「みーちゃんだから」


 即座に私が返すと、火凛ちゃんが苦笑いをした。


「……でも、なんとなくわかる気もするよ。私も水音だから好きになったんだし」

「ん。そういう事。……火凛ちゃんって将来は何人子供が欲しいの?」

「また踏み込んだ質問だね……最低でも二人は欲しいかな。出来ることならもっと欲しいけど。零ちゃんは?」

「百人」

 私の言葉に火凛ちゃんがピシリと固まった。


「……ふ、双子でも五十年ぐらいかかるけど。大変そうだね」

「やる気と気合いでどうにかする。あと愛の力」

「そんな少年漫画みたいな……」


 大抵は不思議パワーでどうにかなるからその辺は問題ない。


「私もみーちゃんとの子供欲しいなー。未零ちゃんと早く会いたいなー」

「子供の名前まで決めてるんだ……」

「ん。火凛ちゃんは決めてないの?」

「私は……生まれてから決めようかなって。水音の名前ってね。産まれた時の環境から付けられたんだ。私、その考えが……私、結構好きだったから」

「ん。素敵だね。私も二人目はそうしよっかな」


 そうして話していると……みーちゃん達が帰ってきたのだった。


 ◆◆◆


 水音と仲良くなった。どうやって仲良くなったかと言えば、お互いのモノが同じくらい大きかったから。お互いの悩みを共有しているうちに、自然と仲良くなった。


 その後、水美ちゃんに良くない事を教えている新へお仕置きをするなどした。


 そして、雑談をしていると……時刻は六時近くになっていた。


「……そろそろお開きにするか?」

「そうだな。帰るまでそこそこ時間は掛かりそうだし……」

「あ。そういえば。隣町のショッピングモールまで行くバスが近くにあったはずだよ」

「え、ほんと? じゃあそれに乗ろ、みーちゃん」

「そうだな……近くのバス停は」

「あ、僕知ってますよ! 案内します!」

「お、ありがとー! 水美ちゃん!」


 いやもう、本当に良い出会いであった。この世には狂キャラしかいないのかと思っていた。


 彩夏が俺の友人であり……惚れられていた事を零がバラしたり、今度水音に料理を教えてもらう事などを約束したりしていると、バス停に着いた。


 時刻を確認すると、バスもすぐに来るようだ。


「ありがとうな、ここまで案内してくれて」

「ああ。……っと、そうだ。連絡先交換しておかないか?」

「あっ、そうだな」


 俺はスマホを取り出し、水音と連絡先を交換した。零は竜童と。新は水美ちゃんと交換していた。


「ん。また困ったことあったら相談するね、火凛ちゃん」

「分かった。私も連絡するからね」

「水美ちゃん! ブラコン同士頑張ろうね! 今度おすすめのエロ同人誌おすすめする「何言ってんだ?」あいたっ」

「あ、あはは……僕も連絡するね」


 と、その時バスが来た。


 零が竜童に。新が水美ちゃんにぎゅっとハグをした。


「ん。今度は私の友達も紹介するからね」

「ん。私も。彩夏ちゃんとか星ちゃんとか……友達紹介するね」

「水美ちゃん、今度お買い物行こうよ! 私水美ちゃんに合いそうな服屋さん知ってるんだ!」

「うん! 分かった! 行こうね!」


 零と新が初見の相手と仲良くなるのは珍しい。そんな光景に頬が緩みながら……俺はバスへと乗った。


「それじゃあな、また会おう」

「ああ。元気でな」

「ばいばい、火凛ちゃん。また色々教えてね」

「ん。頑張ってね、ばいばい」

「水美ちゃんも頑張ってね! 次会うまでには私もお兄ちゃんの子供十一人くらい孕むから!」

「あ、あはは……サッカーチーム作れちゃうね。法律は犯さないようにね?」

「大丈夫! 私は犯される側だから」

「……本当にごめんな? こんな妹で」

「い、いえいえ! 楽しかったですよ!」

「そう言ってくれると助かるよ」



 これ以上バスの運転手に迷惑をかける訳にはいかない。俺達は一番後ろの方へ座る。


 姿が見えなくなるまでの間、水音達は手を振ってくれた。


「……みーちゃん」

「なんだ?」


 零が俺を見てニコリと笑う。


「今度カフェに行った時はおっぱいチャレンジしようね」

「台無しだよ。今いい事言って俺が『そうだな』って言って終わる所だっただろうが」

「お兄ちゃんの肉棒チャレンジも見たい!」

「あんまり大きい声出さないで、新。ああもう、運転手のおっちゃんびっくりしてハンドルぐらついてるから」

「じゃあ見せ槍チャレンジする? その辺のJK捕まえて」

「なんで犯罪臭増す提案した? 俺まだ捕まりたくないよ?」

 そんなやり取りをしながらも……俺は息を吐いた。



 まあ、これが俺達らしいか。

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