第50話 みーちゃん成分が足りない!
「みーちゃん成分が足りない!」
いきなり俺は押し倒された。
「なんか懐かしいなこの感覚。というかずっと二人きりだっただろうが」
新は今風呂に入っている。それで俺は零と話していたのだが。唐突に……本当にいきなり押し倒されたのだった。
「観測されてない世界は無いも同然なんだよ、みーたん」
「その世界一頭の悪い呼び方をやめろ」
しかし、零はそんな俺の言葉を気にせず、頬へと手をやってきた。
「最近私のキャラが薄くなってる気がして」
「安心しろ。お前以上にキャラが濃い存在なんてこの世に……いや、この世にもあの世にも居ないぞ」
「またまた。私なんてただの一般人だよ」
「ただの一般人は生霊も出さないし未来予知もしねえんだよ」
「未来予知ってみーちゃんの名前も入ってるから私専用の能力って感じするよね」
「ちょっと分かるのが腹立たしいな」
「私の二つ名にしようかな。【未来予知】の零でどう?」
「的確に俺の黒歴史を抉るのやめてくれない? 吐くよ?」
「吐く時は私の口にね」
「世界一最悪な口移しだよ」
そんな事を話しながらも流れるように服が脱がされていく。
「なんかお前の動きどんどん洗練されていってない?」
「みーちゃんもえっちして半年経ったぐらいの反応だよね。顔に反して心臓がドキドキしてるけど」
「男としての意地くらい張らせてください零さん」
「逆に折りたくなっちゃうよ……そんな事言われたら」
「おまわりさーん!」
「ふふふ……泣き叫んでも誰も来ないよ」
「この性犯罪者! 変態!」
「んっ……私ね。逆レイプからの逆転ものも嫌いじゃないよ。あと今のでちょっと濡れちゃった」
「んな報告いらん。離せ。服を着ろ」
「それと私ね。服って要らない存在だと思うんだ」
「ついでの感覚で人類の最古の叡智を否定するんじゃないよ」
「だって、服さえなかったら三大欲求を同時に満たせるんだよ。お風呂でご飯食べながらイチャラブ陵辱しよ」
「情報量情報量。そういうプレイしながら飯が食えるわけないだろ」
「やってみないと分からないよ。さ、お風呂行こ。あーちゃんも待ってるよ」
「収集つかなくなるから。一旦落ち着かない? それと乳首くりくりするのやめてくれない? くすぐったいんだけど」
「こっちの開発もしたいなって思ってるんだけど。あ、そうだ。じゃあ一緒に開発すればいいんだよ。はい、みーちゃん。もちもちこねこねして良いんだよ?」
「擬音が生々しいわ。やめろ。手を誘導するな」
「大きさとか柔らかさとか。えっちなのは誰にも負けないからね」
手にもちもちとしてやわっこい触感が。
「触感もいいけど食感でも良いんだよ?」
「だから地の文に突っ込むな。……突っ込む? いや、この場合はボケてるのか?」
「大事なのはそんな事じゃないよ。今国会で議論されるべきなのはみーちゃんの乳首をどうやって開発するのかなんだよ」
「お願いだから会話しよう。もう頭バグりそうなんだわ。あと無理やり揉ませないで。理性ゴリゴリ持ってかれるんだけど」
零が俺の手の上から手を重ねて揉ませようとしてくる。どうにか手のひらをぐっと開いて耐えているのだが。その柔らかさの中で固くなっている部分が嫌でも伝わってくる。
そして……俺の言葉を聞いた零が。俺の手を左右に動かした。
「……んっ」
「なにしてくれやがるんですか!?」
手のひらがその硬くなったそれに擦り付けられ、零が甘い吐息を漏らした。
「ムラっときちゃって」
「あのね? 人間ってさ。理性があるから人間なんだよ」
「まだ私が人間だと思ってたの?」
「正直ちょっと思ってないよ」
「ふふ。安心して、人間だから。……今世は」
「突っ込まない……突っ込まないぞ……」
「突っ込んでよ! 今ならいつでも突っ込めるんだよ! ほら!」
「やめろ! 入口を当てるな! くしゃみとかしたら勢いで入るだろうが!」
「いいこと聞いた。事故ならノーカンだもんね」
「くそ、薮蛇だった」
体勢をずらし、どうにか事故が起こせないようにする。ついでに手の方も抵抗を試みたのだが、俺の手が微かに震えただけで零を悦ばせる結果となった。
「というか、あれって零の性欲の具現化じゃないのか?」
「……? そうだよ?」
「それなら零の性欲が落ち着いたりしないのか?」
「するよ。五分くらい」
「短くないか!?」
「でももう一体出そうって思ったら三日くらいかかるけどね」
「しかも増やせるんだ……」
零がその気になれば一年で百体――なんか『体』で言うのは嫌だな。百人は出来るのか。恐ろしいな。
「やってみる? 百体チャレンジ」
「一人で俺の寿命が一年縮まるからやめとこうな。その後は比例的に縮まる年数が上がってくから」
「じゃあ子供百人チャレンジしよっか」
「凄いな。ここまで文脈が読み取れないことってあるのか。国語教師でも不可能だぞ」
「じゃあ(みーちゃんの遺伝子を残すために)百人チャレンジしよっかって意味だよ」
「やっぱり不可能なんだよ。あと俺の寿命が縮めるのを諦めろよ。やめろ! 擦るな! 表現してはいけない
「ふふ。ほら、もうぐちょぐちょだよ?
「俺の気遣い返してくれない? 消されても知らないよ?」
「大丈夫。その時は別媒体でみーちゃんのハーレム性活が始まるから」
「やめて! 逃げ場がなくなっちゃう!」
どうにか零の股間から逃げつつ隙を伺う。……なんだこの言葉は。初めて使ったぞ。
「ね、みーちゃん」
「なんだ?」
改めて名前を呼ばれたので返事をする。つい身構えてしまったが……。
零は優しく。それこそ、聖母のような微笑みで俺を見ていた。
「最近みーちゃんの周りに人がいっぱいになってるけど。楽しい?」
「……お前な。ここ一ヶ月の俺の大変さを知らないのか? 男共から唇やケツを狙われるわ、殺意の目を向けられるわ。いきなりハーレム対決とかいうのを仕掛けられるわ、睡眠薬を飲まされて逆レされそうになるわ」
……しかし。
「だが、推しのアイドルとも会えたし……中学生の時の友達にも会えた。……あのハーレム対決とか言うのも楽しくなかった訳では無いし、前よりは……学校での立場も良くなった」
少なくとも、あの時のぼっち陰キャではなくなった。
「楽しいぞ、最近。すぐに毎日が終わってしまうぐらいには」
「ん、良かった」
俺の言葉に零がニコリと笑った。……見る人全てを魅了するような、そんな笑みを。
「零のお陰だぞ」
「ううん。みーちゃんが楽しく過ごせてるのは星ちゃんとか彩夏ちゃんが居るからだよ」
「それもあるが……一番は零だ」
やっと……やっと分かった。
どうして零が星と彩夏の存在を許しているのか。
「俺が楽しく学校生活を過ごすため。それと、自己肯定感が高められるから。だろ? ……零が二人を俺の傍に居させてもいいと考えた理由は」
「……気づいたんだ」
「ずっと不思議に思ってたんだよ。……お前は独占欲が強いからな。中学生の頃だって、俺に女子が話しかけてきてもすぐに追い返していた」
まるで自分の物だと言わんばかりに俺に抱きついていたものだ。
「あれだけの美少女に好かれれば、必然的に自分の自己肯定感も上がる。そういう事だろ?」
「……ん、最初はそうだったよ」
零は……少し寂しそうに微笑んだ。
「私はみーちゃんのためなら何でもするよ。そのためなら法も倫理も関係ない。たとえそれが人の気持ちを弄ぶ行為だったとしても」
「……」
「でも、今はそう考えてないよ」
零は、俺の頬に手を添えた。それは酷く冷たいものだった。
「星ちゃんも彩夏ちゃんも。すっごい良い子で。……皆と楽しくえっちに暮らしたいなって思ってるよ」
「お前な……」
「ふふ。……幻滅した?」
その瞳からは不安の色が伺えた。俺は一つため息を吐く。
「する訳が無いだろ」
零は俺のためにやってくれたのだ。いつまでも自分を変えられない俺のために。……それが、どれだけ歪な形であろうと。俺から言えるのは一言だけだ。
「ありがとな、零」
「……ッ」
一瞬。……ほんの一瞬だけ、零の瞳が潤んだ。
いつぶりだろうか。多分、中学生の頃以来だな。……俺と同じ高校に行かないで欲しいと言った時ぶりだ。
そして、俺は抱きしめられた。
「大好きだよ、みーちゃん」
「……俺もだよ」
少しだけ震えていた零を抱きしめ返す。
「……おい」
「ん?」
「感動的だったねで終わっていいだろうが。どこ触ってんだ?」
「みーちゃんのばんっぱん♡に詰まった子種袋だけど」
「表現の仕方がエロラノベなんだよ」
「今のうちに予行演習しとこうかなって……」
「消される前提なのやめろ」
どうにか手を払い除けようとするも、零がそれを阻止してくる。
「あ、そうだ。みーちゃん。あと一つ言わないといけない事があったんだ」
「……嫌な予感がする。なんだ?」
「星ちゃんと彩夏ちゃんはハーレムでも問題ないって」
「……は?」
「『未来君の負担にはなりたくない。未来君と一緒に居られるならそれでも良い。……零ちゃん達とも仲悪くなりたくないし』って星ちゃんが言ってて、『他の人には渡したくありません。……ですが、未来さんと離れ離れになるのはもっと嫌です。……お二人にも良くしてもらいましたから』って彩夏ちゃんが言ってた。あと当たり前だけどあーちゃんはハーレム推奨派だったよ」
「……頭が痛くなってきた」
「これで私達の間に立ちはだかる壁は法律と倫理だけだね」
「日本で生きていく中で一番必要な二つだな」
「なんなら私が総理大臣になって法律変える?一夫多妻制入れる?」
「謀反が起きるだろ。というか当たり前のように総理大臣になろうとするんじゃねえ」
しかも零の事だから不可能に聞こえないのが恐ろしい。
「……本当に。なんで俺の事なんか好きになったんだか」
「みーちゃんだから、だよ」
零が流れるように……俺の額へとキスをしてきた。
「ありがとな、零。色々と」
「ん。どういたしまして。今すぐ答えは出さなくて良いからね。……卒業する時にでも決めて。ハーレムを作るか、皆にみーちゃんの種を仕込むか」
「二択になってるようで一択だな」
「ちなみに
「これ零と新だけの能力じゃなかったのか……」
「愛があれば何でも出来るんだよ」
「原動力が性欲なんだよ」
しかし……まあ。その辺はゆっくり考えていこう。
「もしかしたらハーレムメンバーも増えるかもしれないしね」
「増えないから。やめて」
「私の見立てでは十人以上にはなるね」
「本格的に刺される未来が見えてきたな」
「私には
「人の名前で遊ぶな。読み方が違うんだわ」
そう言いながら俺は今日何度目かのため息を吐いた。
何にせよ、自分磨きは続けないとな。
そんな事を思いながら、艶めかしく足を絡ませてくる零のほっぺたを抓ったのだった。
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