第48話 みーちゃんのドキドキ♡生着替え〜〜ポロリもあるよ〜〜
「待て待て。落ち着け」
痛む頭を押さえながら、俺は二人を止める。
「このまま戦わせると本格的にジャンル変わりそうだから……じゃなくて。平和的に行かないか? ほら、話し合いとかさ」
「みーちゃん」
零はじっと俺を見てきた。……今までに見た事がないぐらい、その瞳は冷えきっていた。
「私ね。実は結構怒ってるんだ。……みーちゃんを眠らせてえっちな事をしようとしてるのは百歩譲って分かるよ」
「いやそこ分かっちゃいかんやろが」
「でもね。……みーちゃんを傷つけるような子は許せないんだ」
その言葉に……俺は思わず言葉を詰まらせた。
「……」
「だから、ちょっとお仕置きしないと、ね?」
そう言って零がクスリと笑う。嗜虐的な、しかし妖艶な笑み。
「新。どうにか出来ないか?」
「んー……零ちゃん! お兄ちゃんがやめてくれたらもう一回お風呂入ってくれるってよ!」
「やめます!」
「現金にも程があるな!?」
「お風呂場でみーちゃんといちゃらぶ泡々ソーププレイする!」
「そこまで言ってねえよ!」
「え!? 湯船にみーちゃん汁いっぱいにして浸かれないの!?」
「死ぬわ。俺の体積より多いんだよ」
「未来君の子種でいっぱいのお風呂……私、気になります!」
「最低最悪な名言の使い方やめろ! 怒られるから! それと当たり前のように入ってくるんじゃない!」
ああもう、すぐ話が逸れる。……すると。零が笑った。
「ふふ。でも、みーちゃんがそんなに言うんだったら。物理的なお仕置きはしないよ。……静ちゃん。別室でお話、しよっか」
気がつけば、零が静の手首を掴み、そう言っていた。
「……零って時々理解不能な事するよな。俺も気がついたら数メートル先まで瞬間移動してたし」
「行き過ぎた身体能力は魔法と変わらないんだよ、お兄ちゃん」
「え? あの生霊的なあれもそうなの?」
「あれはよく分かんないかな。どうなの? 零ちゃん」
「だからあれは私の性欲の具現化だよ。さっき久しぶりに賢者タイムになっちゃった」
「分かんないよ! 零の言ってることは一つも分かんないよ!」
「今日はパロディ多めだね。消されない?」
「俺も思った」
こんな所にしておこう。そろそろ本当に怒られそうだ。
「もっと簡単に言うと幽波「言わせねえよ!? 話聞いてた!?」」
「お兄ちゃん! 私もあれ出したい!」
「そんなぽんぽん出せるものじゃありません! ……あれ? でも確か」
「前も一回出せたし、多分頑張れば出せるからやってみるね」
「お兄ちゃんの一生のお願い。やらないで。プライベートぷりーず」
とかなんだかんだやりつつも、俺は全裸なのである。早く服が着たい。どうしても視界にちらちら静が映ってしまうので俺の息子が静まらないのだ。それとムッツリ三人組からの視線が固定化されているのだ。
「それじゃ、隣の部屋行こっか」
「……ふん。レスバなんかで負けないからね」
零が静を連れて部屋を出た。
「……さて。とりあえず服着けていい?」
「ダメだよお兄ちゃん。お兄ちゃんのお兄ちゃんが見えなくなっちゃう」
「欲望を隠す事を覚えよっか。三人に頼んでもいいか? 多分下の階に……どうしたんだ?」
「……ひゃっ! べ、べべべ別に気を取られて話を聞いてなかった訳じゃないよ?」
「そそそそうですよ? み、未来さんのそのおち……その、見てた訳じゃないです!」
「は、初めて見たからって別に驚いてた訳じゃ無いんだからね! さっさと仕舞いなさい! その粗末なもの!」
「おぉ……初めて言われたぞ、粗末なものとか。仕舞うための服を探すのを手伝って欲しいんだが。……そういえば、なんで春山がここに居るんだ?」
先程からずっと疑問に思っていたが、聞く機会が無かった。
「……ふん。別になんででも良いでしょ」
あれ。なんか冷たい気がする。いや、そりゃ目の前に全裸の同級生が居ればそうなるか。
「あはは……その事は後で話しますね。未来さんの服探してきますよ、私達。新ちゃん、未来さんの事お願いします」
「任せて! 責任持ってお兄ちゃんとえっちな事しておくから!」
「おーい人選ミスってんぞー」
俺の声も虚しく、既に三人は居なくなっていた。
「ふふ。お兄ちゃん。これで二人っきりだね」
「あれ、おかしいな。静に縛られて犯されそうになっていた時より俺の悪寒が悲鳴をあげているんだが」
「うるさいよ! お兄ちゃん! お前がオカンになるんだよ!」
「やかましいわ!」
……と、やっていると。扉が開いた。
「ああ、もう見つかった――」
そこに居たのは。
「ふふ。“お話”終わったよ、みーちゃん」
得意げにしている零と、ムスッとしている静(全裸)であった。
「……お前達だったか。早かったな」
「伸ばしたからね」
「え? 時間を? やっぱ世界観違うんじゃない?」
「冗談だよ。……」
「その間が冗談ではない事を伝えているんですが。やっぱり世界観間違えてない?」
「まあまあ。それと、痛み止めは飲んで大丈夫みたい」
それなら後で春山から痛み止めを貰おう。
「むすっ」
静は私不機嫌ですよアピールをしている。今は放置で良いだろう。すると、足音が聞こえてきた。
「未来くーん、制服あったよ……って二人とも戻ってきてたんだ」
星が服を持ってきてくれた。……そして、静を睨みながらそう言った。
「ああ、ありがとう」
そんな星から服を受け取る。
「それじゃあこれからみーちゃんのドキドキ♡生着替え〜〜ポロリもあるよ〜〜が始まるんだね」
「モロなんだわ。俺が言うのもなんだけどモロ出しなんだわ」
とりあえず服を着けよう。まずはトランクスを……。
「やけに視線が集まっているんだが」
「男の子の着替えなんて見る機会そうそうないから仕方ないね、みーちゃん」
「仕方あるわ。男だけどそんなに見られるとさすがに恥ずかしいんだわ」
「ご、ごめんなさい。未来さん」
「だめだよ彩夏ちゃん。見れる時に見とかないと。大丈夫。みーちゃんはそんな事で嫌ったりしないから」
「やめろ! 零! 彩夏を汚すな!」
「……いや。そんなの見せてる時点であんたのが汚してるでしょ」
「う゛っ……ごもっともです」
春山の言葉が急所に突き刺さって動けなくなる。
「咲ちゃん、あんまり未来さんをいじめないでください」
「……でも」
「ああ、いや。悪いのは俺だから。いくらなんでも目の前で男が裸になってたら気にするよな。すぐ着るから」
そうだよ。零達で感覚バグっていたが。普通は気になるだろう。俺だって立場が逆なら同じ事を言っているはずだ。
「……ふーん」
春山の気に食わなさそうな視線を無視しながら服を着けていく。
「「ご馳走様です」」
「言わんでいい」
零と新にチョップをする。二人は嬉しそうにニヤニヤしていた。
「この二人どうすればいいんだろう……神様! へるぷ!」
「もう人類の叡智じゃ救えないからって神頼みになっちゃったよ。そんな神様なんて出てくるわけ――」
『諦めなさい。私にもどうにも出来ません』
「出てきた!?」
「ぐっ……やはり神でも無理なのか……」
「待って待って。今零ちゃんじゃ比にならないくらい不思議な現象起きてるんだけど」
「まあそれは置いておくか」
「置かないで! 人類の大発見だよ!? 神様だよ!?」
俺は星をスルーしながら静(全裸)を見た。
「……とりあえず服着ない?」
「みーちゃん。静ちゃんには罰として服着せてないから。みーちゃんの目の保養になるかなって」
「要らぬ気遣い! 俺の俺が暴れん棒のままだから服着て!」
「嫌だよ。未来君のが……ふふ。浮き出てるのが見えるもん」
「やめて! これ授業中とかにバレた時が一番恥ずかしいんだから!」
「えっ……未来君、授業中に……その、えっちな事考えてるの?」
「違うよ、星ちゃん。世の中には暇勃ちって言葉があってね?」
割愛
静には服を着けて貰った。それと春山から痛み止めを貰って飲んだ。
「そ、それで。零。静と何を話したんだ?」
「ん。その前にね、みーちゃん」
零が俺を見た。
「静ちゃん、どうしたい? 通報したいならしても良いんだよ?」
「……まあ。本当ならするべきなんだろうが」
強姦未遂? いや、強制わいせつ罪か? その辺はよく分からないが。
少なくとも、この高校にはもう居られないだろう。
「……静。もう同じような事をしないか? 俺ではない他の誰かにも」
「しないよ! する訳ない! 未来君以外の人になんて!」
「それ俺にはやるって言ってるようなもんなんだが……まあいい。零」
零を呼び、目を合わせる。
「通報はしない。俺が同じような過ちを繰り返さなければ良いだけの話だ」
「ん、みーちゃんならそう言うと思ったよ。それでね、みーちゃん。話があるんだけど」
十中八九、静の処遇だろう。俺は視線で話の続きを促した。
「静ちゃん、ハーレムに入れない?」
まるで、チャットのグループにでも入れるようなノリで、そう言ってきた。
「…………そもそもハーレムを作った覚えなど無いとか、言いたいことは色々あるが。どうしてその結論に?」
色々と言いたい事を飲み込み、俺は聞き返した。
「端的に言うとね。この子危険。私とかあーちゃんからブレーキを取り除いた存在、って言えばいいかな」
「……そもそもブレーキなどあったのか、と言いたいが。まあ、なんとなく分かる」
今まで。零や新が本気で俺を襲おうとすれば……いくらでも機会はあった。
だが、二人は一線を超えない。絶対に。
「ん。だからね。ブレーキが必要なんだ」
「それを零がすると?」
「そういう事。このまま通報とかした所で逆恨みでみーちゃんが逆レされかねないし。まあ、私がそんな事はさせないんだけど」
……そこまでやばい奴だったのか。先程と異なり、俺を見てニコニコとしている静を見て戦慄する。
「それとね。みーちゃんの近くに居たら良い影響を受けるんじゃないかなって」
「……そんなに俺の影響力は大きくないぞ」
「大きいよ。私が保証する。……私が目を光らせておくから。どうかな」
……ハーレム云々はともかく。その提案自体は悪くないと思った。
もう危険な目に遭う事はなくなるし……賑やかにもなるだろう。
だが。
「悪いがその提案は受け入れられないな」
俺の言葉に零は微笑んだ。……その代わりに新達が驚いた顔をしていた。
「なんで? お兄ちゃん」
「なんでって……まあ、今日のがあるしな。割とトラウマになってるんだよ」
嘘だ。こんな事でトラウマになっていたら零達でトラウマになっている。
……何があっても零達が助けに来てくれると分かっていたから、でもあるが。
本当の理由は……やめておこう。わざわざ話す事でも――
「私のため、だよね。未来君」
しかし。彼女が俺の言葉を遮ってきた。
「……星」
「分かってるよ。私が零ちゃんの言葉を聞いてから苦い顔をしてたのは。未来君がそれに気づかないわけないもんね」
星の言葉に……俺は迷った。肯定するべきかどうか。
「確かにやだよ。未来君の周りにこいつ……この子が居るのは。……過去の自分が居るなんて」
……確かにそれは嫌だ。俺も厨二病の頃の自分が目の前にいたら殴りたくなるだろう。
「でもね。私もそれなりに自信をつけたつもりなんだよ……それに、この子は昔の私と似ているのは見た目だけ。中身は全然違うから。だから未来君」
星が俺を見て……微笑みかけてきた。昔と同じような、柔らかくて優しげな笑みを。
「良いんだよ。私の事は気にしないで。……ううん。私は逆に燃え上がっちゃうから。受け入れて欲しいな」
強がりかもしれない。……いや、強がりだろう。だが。
星のその覚悟を無駄には出来ない。
「分かった。だがハーレムとかその辺は認めてないからな。友達、だ」
「やった♪よろしくね、未来君♡……いつか、私だけしか見られないようにしてあげるからね♡」
俺の言葉も意に介さず、静はそんな事を言いながら手を差し出してきた。
「……出来るもんならな」
本心混じりにそう言い、俺は静と握手をしたのだった。
……横から攻撃的な視線を受けながら、だが。
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