第28話 昨日あの後、江戸川乱歩の人間椅子読んじゃって……

「え? こういうの普通、次のシーンになったら本番まで飛ぶんじゃないの?」

「逃がすと思ったの? みーちゃん。忘れたとは言わせないよ? 私とあーちゃんに十ピストンずつするって約束したじゃない」

「くそ、やっぱり逃げられ……っておい。約束の中身変わってんぞ」

「てへっ。バレた?」

「どうしてバレないと思った?」

「いけるかなって……」

「無理だよ。不可能だよ」

「じゃあ交互に五ピストンなら……」

「じゃあで言う言葉じゃ無いんだよ。ダメだ」

「じゃあ遺伝子交換しよ! お兄ちゃん!」

「俺のIQが5なら引っかかっただろうな。やらねえよ」

「……! って事はあーちゃん! みーちゃん汁を出す時はIQが2とかになるよ! 押さえてて、あーちゃん!」

「分かった!」

「やるな! やめろ! 腕を掴むな!」


 とりあえず後ろにまわってきた新をどうにか離れさせる。


「それじゃあ、前座はこれぐらいにして。おっぱい揉も? みーちゃん」

「逃げるという選択は……?」

「……? 犯されたいの? みーちゃん」

「ア、スイマセン」


 零の目がガチだった。断れば犯される。確実に。それこそ男としての尊厳が全て破壊されるようなやり方で犯されるだろう。


「という事でみーちゃん、早速やろ」

「お兄ちゃん! 気分が乗ったら十揉みじゃなくて百揉みでも百擦りでも千擦「新。それは良くない。語感が。別の意味に聞こえる」」


 どうにか良い考えが浮かばないかと頭をフル回転させるも、零と新に腕を取られてしまう。



 ……なるほど。これが死刑場へと向かう囚人の気持ちか。


「ふふ。みーちゃんドキドキしてるよ? 初夜ってこんな感じなんだろうね」

「やめて……俺の中の男子高校生が出てきてるから……」

「お兄ちゃんのお兄ちゃんが反応してきてる……」

「やめて! 気づかないで! お兄ちゃんのメンタルもうボロボロなの!」

「大丈夫だよ。私がいつも襲いかかってる時みーちゃんいつもおっきくなってるし。そこにあーちゃんが加わってるんだから。おっきくならない訳が無いんだよ?」

「やめろ! 慰めるな!」

「みーちゃんを慰める……これって実質セッ〇スなのでは?」

「ずるい! お兄ちゃんの精神童貞奪うなんて!」

「新しい言葉を生み出さないでくれ……なんだよ。精神童貞って」

「……? そのまんまだよ? お兄ちゃん」

「やべえ。頭おかしくなる」

「いつも通りだから大丈夫だよ」

「俺の頭がおかしくなるのが日常っていう事がおかしいんだよ」


 何か……何か策はないか!?


「まあ、みーちゃんの時間稼ぎはこれぐらいにして。しよっか」

「……バレていたのか……!?」

「? バレてないと思ったの? お兄ちゃん」

「これが敵の参謀に作戦を全て悟られていた噛ませ犬の気持ちか……」

「はいはい、御託はこれぐらいにして……」


 俺は流れるようにベッドに押し倒され――


「――てない?」

「押し倒したらおっぱい揉むので腕疲れるじゃん。だから」


 零が俺を座らせ、俺の腕をくぐる形で俺に抱きついてきた。……新も同じように。


 そして、手首を掴んで誘導される。


「な、なあ。まだ間に合う。こんな不健全な事やめないか?」

「……? 私が健全だと思ってるの?」

「あ、自覚あったんすね」

「という訳で諦めて楽しんで」


 その言葉と同時に……手に柔らかい感触が。

 指が沈み込む。ただの脂肪の塊のはずなのに。意識の全てを持っていかれる。


「あ、私のも触って! お兄ちゃん!」


 もう片方の手にも柔らかい感触が。……これは妹のなんだぞ! 喜ぶな! 俺!


「あ、みーちゃんのみーちゃんが喜んでる」

「わ、わぁ……お兄ちゃんの心がえっちな漫画みたいになってる」

「解説するな! 心を読むな!」


 そう叫びながらも……俺の頭の中はおっぱいで埋め尽くされていくおっぱい。


「ふふふ……どうしたの? 揉まないの? …………もしかして。ずっと感触を楽しんでいたいの?」

「う……ちが……う」


 そうだ。揉まないと終わらないんだ……ぐ。


 意を決して。俺は両手に力を込めた。




「……んっ」

「あっ……」



 そんな耳が蕩けるような声を無視する。


 というか柔らかすぎるだろうが……同じ人間なのかよ……これが。


「ど、どう? みーちゃ……んっ」

「……………………柔らかい」

「ふふ……お兄ちゃんのお兄ちゃんもぴくぴく喜んでるよ?」

「やめて! お兄ちゃん恥ずか死んじゃう!」


 くそ……柔らかい。零のは手で包み込んでも溢れ出るほど大きいし……新のはめちゃくちゃ柔らかい。



 下着越しでもこれだけ柔らかさが伝わってくるのかよ。


 とりあえず早く終わらせなければならない。


 二度、三度と。柔らかいおっぱいを揉む。


「ん……ぅゃあ」

「お兄ちゃんの手が……あっ、そこっ、」

「やめろ! 股間に手を伸ばすな! こんな所でナニをする気だ!」

「うぅ……ダメ?」

「ダメ! 俺の理性が死ぬ!」


 と……どうにか。五回を終えた時だ。


「……みーちゃん」

 そう呼ばれ、同時に手が離された。良かった。慈悲を掛けてくれたのか。


「残りは直で、ね?」

「は?」


 零がおもむろに服を捲り……その中に俺の手を突っ込んだ。



 すべすべとしたお腹の感触の上に……ふよん、と。当たった。



「あ、じゃあ私も!」

「新!?」

 もう片方の手も……新の服の中に入れられた。



「い、いや。待て。生で? 直で?」

「うん。その方がもっときもちいいかなって」

「欲望に忠実かよ。やめろ。下着をずらすな」

「でも……みーちゃんのみーちゃん、すっごい喜んでるよ?」

「くそ! 縮め!」


 などとやっていると、両手がすぐにすべすべもちもちとした感触に包まれた。



「ん、んぅ……」


 その手が少しでも動く度に……硬い突起に擦れ、甘い声が漏れた。


「お、お兄ちゃん……あっ……こういうプレイ……なの?」

「ち、ちがっ」


 くそ……やるか。やるしかないのか!?


 ……やるか。


「ぁんっっ……」

「んっっ……」

「やめて! 声が、危ない声が出てるから!」


 と、二人にそう言えば。ぱくっと。俺の服を食んできた。



 ……う。やばい。こっちの方がエロい。やめろ。上目遣いで見てくるんじゃない。ああ、もう。腫れて痛いんだぞ。こっちは。


「ん……わっ……すごい」

「やめて! 唐突に俺の分身を外気に露出させないで!」

「お兄ちゃんの……今まで見た中で一番おっきい」

「絵面やばいから! 周りから見たらもう言い訳が聞かなくなってる~~~!」


 片手ずつ胸を揉み――しかも片方は妹の――そして、下半身を露出させている。


 魔王かな? 俺。エロラノベの。


「ふふ……みーちゃんの顔がえっちに……ぅ、ふぅぅん」

「……これ、自分でするのと全然ちが……ぁ」



 自主規制


「はぁ……は、ぁ……」


 目の前には乳を丸出しにした二人が。息を荒くして、ベッドに寝転がっている。



 ……シーツを後で替えなければ。だが、今はそれよりも。


「と、とりあえず俺は風呂に入ってくるからな」


 コレを落ち着かせなければ。時間稼ぎをするために、俺は服を持って風呂場へと向かったのだった。



 ◆◆◆


「こういうの普通次のシーンになったら本番まで飛ぶんじゃないの? パート2」

「まあまあ。未来君。流されちゃお? 雰囲気に」

「流されん!」



 朝、起きると。星が全裸で俺に覆い被さって寝ていた。それを起こして今に至る。


「ねえ? 前回の最後確認してみて? もう明らかに時間軸飛ぶヤツだったよね?」

「え、何。前回って。怖いんだけど」

「怖いって何……が…………待て。俺は今何を……?」

「怖い怖い怖い怖い。大丈夫? おっぱい揉む?」

「揉まん。その下りはさっきやった。というかなんでここに居るんだよ」


 そう聞けば……星は笑って答えた。


「彩夏ちゃんもやったらしいじゃん? 零ちゃんと新ちゃんもやってるだろうし……私もやらなきゃって」

「なんの使命感持ってるの!?」

「まあまあ……ほら、未来君のここも硬くなってるし」

「世界観変わった? もしかして俺が気づかないうちに別サイトになってる? 今回消されるよ? ガチで」

「あはは。何言ってんのさ。そんな事より……」


 星が頬を赤く染めながらも……俺へと近寄ってきた。


「……な、なんだよ」

「なーんか私だけ出番回少ないなって」

「き、気のせいじゃないか?」

「でも零ちゃんと新ちゃんはいつも通り毎回居るし。彩夏ちゃんは……未来君にちゅーしてたし」


 その言葉に……思い出してしまった。


 思わず頬に手をやってしまった。


「という事で未来君」

「は、はい?」


 星が更に近寄ってきた。……その豊満な胸が俺の体で押し潰される。



「また、付けるからね」

「……? な、何を――」


 星はそのまま体をずり下げ……俺の、鎖骨がある位置に。口をつけた。


 そして……鋭い痛みを感じた。しかし、前回と違って……どこか甘さを感じるのは何故だろうか。


 そして……星が口を離せば。唇が触れた場所との間に、銀色の橋が架かった。


「ふふ。綺麗に付いた」

「お前……なぁ。これ、結構痛いんだぞ」

「ふぅん……でも、ならどうしておっきくしてるのかな?」

「ぐっ……」

「前はそんな事無かったのに。どうしてなのかなあ?」

「……確かに前より意識するようになった事は認めよう」

「……嬉しい」

「だがそれはそれ、これはこれだ! どうせ居るんだろ! 零!」

「呼んだ?」

「うわあああああああ!」


 ベッドのマットの部分が起き上がった。

「え? お前嘘だよな? え? いつから? え?」

「あれ……零ちゃん、さっきドアの前で話してなかった?」

「まあそれはいいとして。出れなくなっちゃった。みーちゃんか星ちゃん、開けて欲しい」

「何してんの? 本当に」

「いや……昨日あの後、江戸川乱歩の人間椅子読んじゃって……」

「行動力の鬼かよ」


 マットの入っている部分のファスナーを開くと、下着姿の零が出てきた。


「先脱いでおいて良かった。中結構暑かったんだよね」

「そりゃそうだろうな。てかどうやって閉めたんだよ。これ」

「気合い」

「えぇ……?」


 その事に困惑していると、背中に柔らかい感触が。


「ねーえ。未来君? 私にもキスマーク付けてよ」

「付けんわ」

「ちぇー」

「ふふん。私には付けてくれたけどね!」

「あ、そうじゃん! なんで零ちゃんには付けたのに私には付けてくれないのさ!」

「いや、あれは罰というかなんというか……」



 そんな抵抗も虚しく。俺は二人にキスマークを付ける事になり……当然新や彩夏にもバレ、結局全員の首筋にキスマークを付ける事になったのだった。

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