猫背のうた

@ryumei

第1話 統治者

統治者が最近めっぽう怖い

統治者の統治者たる所以は

その明晰な頭脳と 凍える冷酷さと

リアリズムと その内奥のロマンチズムである

統治に纏わる合理性に

人としての非合理的情念もブレンドされていて

その情念に触れる時が怖いのだ

それはほとんど 動物的恐怖心である

反射としての恐怖心である


わたしは統治される側

統治者とて より大きな何かに統治されるのだが

存亡のかかるこの局面での 張り詰めた統制に

わたしは大変萎縮する

統治の合理と 社会の合理が コンフリクトしていることを

明晰なる統治者が知らないはずがない

知っているからこそ より張り詰めるのだろう


そして恐ろしいことに

本当に恐ろしいことに

わたしは統制に従順でない

足がすくむ

見透かされているのでは という猜疑


恐ろしさはあれど

感謝に絶えないのは

わたしを社会人としてくれたことである

コンフリクトなるものが 社会の最大公約であり

今わたしは 濃厚なコンフリクトを味わっている

味わいすぎて 脳が疼くくらいだ


わたしは既に まっとうでなくなり

まっとうでないが故に まっとうな社会人である

ありがたいことに


社会は成熟なるもので成立するのでなく

未成熟性を合理性に転換できたもので成立する

なるほど

ひとつだけ 仕組みを知ることができた

知りたくもなかったけれども

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