見習いドラゴン使いナギと異世界の探検家JK
さあめ4号🦈
第1話 王の頂と異世界のJK
〈クラウン島〉
文字通り王冠の形をした2000m級の独立峰〈クラウン山〉が島のど真ん中に聳え立つ広大な有人島。
山頂には〈王の頂〉と呼ばれるドラゴン達が暮らす常に穏やかな美しい湖があり、川となって風光明媚な自然が広がる大地へ恵の水をもたらす。
気候は年中温暖で非常に緑豊かな生物の宝庫とも呼べる美しい島だ。
生息する生き物たちも、小鳥や野うさぎから海を支配する巨体の魚獣や異形の幻獣まで多種多様である。
科学技術はほぼ発達しておらず中世レベルだが、その分人々は自然と共存しながら生き生きと暮らしている。
島には王の頂を中心として
〈クラウン〉・〈ブリンクルス〉・〈ベローニャ〉・〈バビルス〉
という初代王の名を冠した4つの王国が存在し、島の建立から600年以上領土を掛けて時に争い時に協力し合ってきた。
そんな島を取り囲む大海には一切他の陸地が存在していないため、島内の人間たちにとってはこの4王国が世界の全てとなっている。
ただし、島南東部に位置するクラウン王国の港町〈エクレア〉に住む青年ナギだけは違った。
彼は今日も父親の漁の手伝いをしながら、まだ見ぬ空の向こう、海の向こうに別の世界があると信じて希望を寄せていた。
「きたぞナギ。いまだ!」
「わかった父さん!」
穏やかなエクレア港沖合に浮かぶ一隻の小さな漁船から力強い2人の男の声が響く。
丁度網に獲物が引っかかったようで、父の合図でナギは青髪を揺らしながらタンクトップからはみ出る筋肉質な両腕で網を引き上げた。
甲板に撒き散らされた網には色とりどりな小魚をはじめ甲殻類、果ては異様に巨体な魚獣まで様々な魚類が踊り狂う。
「いっぱいだ。父さん、これなら母さんも喜ぶんじゃねーか」
「だな……おぉエンジュラも獲れたか!珍しい。今日はいい日だな」
「なんだっけそれ」
腰に手を当て満足そうに呟く父とは対照的に首を傾げるナギ。
そんな彼にため息をつく父は頭に角の生えたひときわ大きい怪物のような魚を指差す。
「エンジュラ。この辺の海の主だよ。デカいだろう?魚獣の一種さ。こんな見た目だが絶品だぞ。子供の頃に1度食わせてやったじゃないか」
「そうだっけか?」
「まあ10年ぐらい前か。とにかく高級品だ。残りの魚はママに渡して、こいつは後で市場に売りにいこう。かなりの金貨になるはずだ」
「悪ぃ父さん。この後はちょっと用事があってさ……」
罰が悪そうに目を逸らすナギに、父は両腕を組んで鼻を鳴らす。
「……また例の修行か?」
「あぁ」
「〈ドラゴン使い〉は魔法使いや国王護衛隊並みに尊敬される職業の1つではあるが、茨の道だぞ?要らぬ危険を呼び込むリスクも追うことになる。すぐ死ぬかもしれない」
「ごめん、わかってるよ」
父は頭を振った。
「謝る必要はない。ただ心配なだけだ。確かにお前は立派に成長した。明るく人当たりもいいし身体つきも男らしくなった。腕っ節もこの街じゃ1番だしな。……だが、もう20歳になったんだ。道は慎重に選ぶんだぞ」
息子想いの優しくも厳しい一言が彼の心に刺さる。
「わかった。でも俺、決めたから」
「……そうか、ならいい。だが立ち戻りたい時はいつでも相談しろよ。夢が人生の全てじゃないんだからな。それに漁も上手くなったんだし」
「おう、ありがとう」
だがナギの心に迷いはなかった。
彼は船首に立ち、太陽が2つに輝く海原の向こうを眺める。
島から飛んで、この先にあるはずの別世界を見てみたい。
幼い頃、今の師匠と出会って芽生えたその夢を叶えるために絶対にドラゴン使いになると強く決意した。
港に戻ったナギは、市場へ向かう父と別れると船着場近くのレストランへと入る。
中では母親が開店準備に勤しんでいた。
父と同い年のはずだが、いつまでも若々しい彼女を目当てに、ファンである巷のおじ様方が笑顔で外から見物している。
「ただいま母さん。今日も大人気だな」
「あらおかえりナギ。えぇ、お昼には市長さんも連れてきてくれるらしいから助かるわ」
「いい宣伝じゃん。市長グルメらしいし絶対母さんの料理気に入るよ。そうだ、はいこれ収穫!」
「……こんなにたくさん。あなたたちすごいじゃない!」
カゴいっぱいの魚介類を見た母は感極まって彼を抱きしめる。
「これだけ色々あればしばらくはレパートリー増やせるわ。とりあえず今日の市長さんには豪華なメニューが出せそうね。引き上げはあなたが?」
「あと仕掛けも。最近は任せてくれるようになってさ」
「すごいじゃない!パパがヨボヨボになっても大丈夫そうね……そういえばパパは?」
彼は気まずそうに頭をポリポリと掻く。
「あー父さんなら高級魚が獲れたから市場に売りにいったよ」
「一緒に行かなかったってことは、あなたこれからまた出かけるのね?修行に」
「そう」
「まあパパに色々言われただろうからあまり言うことはないけど、私は応援してるわ。人生一度きりだしやりたいことに挑戦するのは素敵なことよ」
「ありがとう母さん」
「でもパパも口では言わないだけで寂しがり屋なのよ。本当は自分の稼業を継いでほしいの。あなたが才能あるって昨日もワイン飲みながらしつこかったんだから」
「そうだったんだ」
「その気持ちは受け取っときなさい。あと何日か帰らないんでしょ?ちゃんと準備して。ほら、パンとかチーズは持ってっていいから」
「助かるよ」
「……あまり深く聞いたことはないけれど、ドラゴン使いの修行ってことはやっぱりあの危険な王の頂に行ったりしてるの?ドラゴンの巣だし」
不安げな母の言葉にナギは笑いながら首を振る。
「いいや。師匠に修行つけてもらってまだ1年だし、地上で子供のドラゴンを相手にしてるぐらいかな」
「そう、ならいいけど」
すぐにでも王の頂に行きたいけど、という言葉を彼は飲み込む。心配性な母を安心させたいという思いもあったからだ。
「ところで郊外へ出るんでしょ?ついでに〈セントロ〉へ寄ってパイナーちゃんに会ってきなさいよ」
「パイナー?母さん、あいつとはあいつが街を出てから全然話してないよ」
「昔はあんなに仲良く遊んでたのに。あの子もナギのお嫁さんになる!って意気込んで可愛かったわよね〜。とにかく今は宮殿の給仕でこっちに帰れてないだろうし、お母さんにも報告してあげたいのよ」
長らく会ってもいない幼馴染との昔話を掘り下げられ呆れるナギは、嘆息しながらも頷く。
「そんなの全部昔話でただの幼馴染。……ま、覚えとく。じゃあいってくるよ」
「ちゃんと食べなさいよ。気をつけてね」
荷物を纏めた彼は母に見送られると足速に郊外へと向かった。
エクレアは可愛いらしい花々に彩られ赤屋根が青空に映える国内でも一段と美しい街だが、とても小さいため彼が走って15分やそこらで牧場だらけの田舎道にたどり着く。
「よぉゼッド元気だったか。今回も頼むぞ」
彼は大樹の下でウロウロしている白馬を慣れた手つきで撫でる。この辺りに住む野良馬で名前は彼が勝手につけたものだ。
嬉しそうに鳴くゼッドの背中に乗り込むと、北へ北へと駆け抜ける。
途中遠く東に見える王国の都セントロの整然とした街並みと王宮の尖塔を横目に、彼は更に北へ黙々と進む。
時は日が西に傾きはじめる頃。
ついに島の独立峰クラウン山の麓までやってきた。
麓の森にポツンと構える小屋の煙突から煙が上がっていないことに気づいたナギは、徐にゼッドから降りた。
「おーいメロル!いるのかー?」
小屋の中に入るも薄暗く人の気配はない。
暖炉の傍のテーブルには魔法陣が描かれた手帳や薬草に薬瓶などが無造作に置かれたままで、壁には日々のクラウン山の状態が描かれた絵が何枚も飾られている。
奥の部屋には飼い慣らされた幼いドラゴンたちが数頭鉄カゴの中で眠っていた。
「……あれ、今日はいないのか」
2階へ上がるも、寝床に最近まで人がいた形跡もなく彼は再び外へ出た。
「まいったな。とりあえず戻るまでここで待つか……ん?」
頭をぽりぽりと掻いていたその時、クラウン山の頂上付近が一瞬光を放つのが視界に入った。
「もしかして」
師匠メロルが1人で王の頂にいるのでは、という考えがよぎる。自然と小屋から1本の剣を取り出していた。
メロルからは絶対に王の頂へ行ってはいけないと普段から強く念押しされていたが、居ても立っても居られなくなった彼は、ゼッドを待たせるとそそくさと山を登りはじめた。
木々が生い茂り怪しげな獣が行き交う薄暗い山中を、ナギはドラゴンの牙で作られた対幻獣用の剣片手に突き進む。
クラウン山の低層〜中層エリアは天敵のドラゴンがいないため中個体の幻獣たち行き交う危険なエリアで、滅多に訪れない人間を見つけ格好の獲物として次々と襲い掛かってくる。
だが普段師匠から戦い方を教わっている彼は慣れた手つきで剣を振るい討伐していく。
「オラッ!よし最後の1頭終わりだッ!」
周りを仕留めきったところで静けさと共にふと空腹に気づいた彼は、幻獣の1体を捌くと火を起こして丸焼きにする。
「……ちょうど腹が減ってたとこだ。昼飯といこう」
こんがり焼き上がった肉に野生児のごとくかぶり付く。歯ごたえのある食感が更に食欲を刺激し、いくらでも溢れる肉汁が彼の脳内に快感を与え続ける。
併せて食べる母特性の硬いパンとチーズが相性抜群だ。
「この組み合わせ最高だな。残りは持って帰ってレストランのレシピに入れられるか母さんとテストするか」
最後の1カケラのパンを食べ終えた途端、またしても頂上が光を発した。しかも今度は近いため轟音も聞こえて来る。
「一体何だ。頂上で雷なんて今まで鳴ったことすらないのに」
ただならぬ雰囲気に身構える彼は急いで火を消すと、残りの肉を布袋にまとめて頂上を目指した。
段々と背が低くなる木々を抜けると、いよいよ王冠型の頂上こと王の頂へたどり着いた。
「……ここが、王の頂」
ナギは思わず目の前に広がる美しい景色に唾を飲み込む。
空は青紫に色塗られる夕暮れの刻。
夕日が差し込み湖の水面に反射して幻想的な風景を作り出しており、山頂にも関わらず不思議と風はない。
道中と違いまるで危険とは無縁のような空間に気が抜けるのを感じた。
目を瞑り大きく息を吸っては吐く。
そして次に目を開けた時には視界は成体のドラゴンの顔で埋め尽くされていた。
「うおっ!!」
「グルルッ……」
反射的に剣を抜いて後退りする。
「……こんな近くで大人のドラゴンを見たのは初めてだが、思ってたよりデカいなおい。幻獣なんか目じゃないぞ」
リラックスから一転。全身に緊張が走る。
馬より4回りも5回りも大きい星形の瞳を持つドラゴンは鼻息を荒げながらじっと彼を見つめる。お互いじりじりと左右に動きながら距離感を伺っている状態だ。
「グガッ!グルル……」
「待てビビるな。そうだビビったら獲物になる。俺は獲物じゃない。そして敵でもないぞ」
師匠の教えを呟きながら剣を仕舞うと思い切り深呼吸。目線はドラゴンの瞳から離さず少しずつ近づく。
「……大きさは関係ない。とにかく呼吸を自然と一体化させるんだ」
そうっと手を伸ばす。
ピタッと一瞬、ドラゴンの鼻に触れてザラザラとした感触が指先に伝わった。
「や、やった!触れたぞ」
「フンッ」
しかしドラゴンは急に興味をなくしたように不意にそっぽを向くと、湖の向こう側へ視線を移した。
「クソ惜しかったな。というかコイツは一体何を見ているんだ……ッ!?」
まるで彼にも見るのを促すかのようなドラゴンの振る舞いにナギも湖を見ると、中心に何かが浮かんでいるのが見えた。何やら人型のように見えるが白い粉のようなもので覆われている。
「あれは……人だ!」
彼の脳裏に子供のころ海で師匠メロルを助けた記憶がフラッシュバックして、気づいた時には水の中へ飛び込んでいた。
やっとこさ泳いでそれに近づく。彼が思った通り人間が仰向けで浮かんでいた。それも自分よりも幾分か歳下と思われる少女が。
彼女を見ると同時に、ふいに冷気が彼の頬を撫でる。
「この子の周りだけなんでこんなに冷たいんだ。湖はこんなに暖かいのに。それにこの白い粉みたいなのは何だ、これが凄く冷たいぞ」
わからないことだらけだが、とにかく安全なところに運ばねばと彼女を両腕に抱いて湖畔を出ると、柔らかい草の上に寝かせた。
「ドラゴンはこの子を守ろうとしたのか。よく襲わなかったな。……それにしても、この子は一体どこから来たんだ」
まじまじと仰向けで眠る少女を見てみる。
この辺りでは馴染みのない綺麗な黒髪ボブに白磁のような真っ白の肌が際立っており、小さいながらも整った鼻と唇はまるで人形のようである。
「もの凄く綺麗な子だ」
そこから視線を首から下へ移す。
細い身体には頑丈な甲冑のような仰々しい服に包まれている。材質は布でも鉄でもなく、見たことがないツヤツヤとした生地。
左胸の辺りには大きな赤文字のロゴが彫られている。
「SRE……ブリンクルスの部隊か何かか?それにしても変な格好だな」
「きゃっ!」
「うぉ!」
服に触れようとした途端、突然ガバッと少女が身体を起こした。
「はぁ……はぁ……ここは」
「触れてない!触れてないぞ。……まだ」
息を切らしながら混乱した様子の彼女は、距離を取るとナギの顔を見て怪訝そうに首を傾げる。
「あなた誰」
「俺はナギ。エクレアの出身だ。……お前は?」
「アリサ。それよりここはどこ。なんか空気があったかい」
「ここは王の頂っていう簡単に言うと山の山頂だ。ドラゴンの巣だけど、お前好かれてるみたいだから心配なさそうだ」
「……んん?」
理解が追いつかず固まる彼女を余所にナギは続ける。
「それより体調は大丈夫か?変な白い粉みたいなのが掛かってて随分冷えてたみたいだが」
「白い粉?あぁ雪ね」
「ユキ?って何だ」
「え?」
アリサは眉を顰める。
ナギは青目をパチクリさせて口をあんぐりと開けたままだ。
「雪は雪。その、大気中の水蒸気が氷になって落下する時に水にならずに落下する現象。実は南極で調査してた時にクレバスに落ちて気づいたらここに……ってもしかして見たことないの?」
彼は即座に頷く。
「あぁ全く。だってそんなものこの島じゃ降らないからな。それにナンキョクって?」
彼女は周りを見渡した後、考え込むように顎に手をあてて口を開いた。
「見渡す限りのおとぎ話に出てきそうな森と湖。聞きなれない変な地名。変な怪物。南極も知らない中世感満載の変なローブの男……もしかして」
「?」
ぶつぶつ独り言を話すアリサに対してもげそうなぐらい首を傾けるナギだが、彼女は徐に分厚い上着を脱ぐと膝丈のスカートとブレザーに白シャツという涼しげな格好に変わる。
「ちょまっなに急に脱ぎ出してるんだ?というか何だよその修道士みたいな格好は」
「ごめん豪雪地帯用の服だから暑くて。……格好はダサいよねわかる。でも私の高校が制服来たら宣伝になるって五月蝿いから」
「コウコウ?セイフク?」
聞いたことのない単語ばかりに混乱する彼を尻目に、彼女は不意に人差し指を天に向けた。
「私、異世界から来たの」
「……い、異世界」
「いや逆か。私がこのファンタジーみたいな異世界に迷い込んだみたい。多分あってると思うんだけど、私はこの空の向こう側にある地球って世界からきたの。中世の遺跡を探す調査に派遣された青少年捜索隊の1人。遺跡だけ見つけて帰るはずが、まさかこんなとこに迷い込むなんて思わなかったけど」
「チキュウ……」
彼は驚愕に目を見開く。
ずっと夢見てきた別世界が存在する。
その事実に全身が震えるのを感じた。
「まさか、本当にこの島以外の世界が存在するのか」
「そうだよ。私の住む地球はこの島とは全く別世界なの。……ところで感動しているところ悪いけど私元の世界に帰りたくて。ポータルもさっき閉じちゃったししばらく匿ってくれない?この世界の事も良くわからないし。あなた悪い人じゃなさそうだし」
「あぁもちろんだ!とりあえず暗くなったから早めに下山しよう。さっきも言ったが何故だかドラゴンはお前を守ってるみたいだし今なら大丈夫だろう」
「ドラゴン?……うわっ!マジかすっご。マジで本物のドラゴンだ」
湖から半身を出してこちらを伺う先程のドラゴンを見て、アリサは驚きながらも感動して手を振った。
「凄い順応性だな。俺でも子供のドラゴンに慣れるのに半年かかったぞ。ちなみに俺はドラゴン使いだ。…見習いだけど」
「え、じゃあまさかナギはドラゴンに乗って操れるの?」
「いや見習いだからまだだ……触ったことはある」
「ふーん」
「とりあえずついてこいよ。今から火を起こすから待ってて」
「あ、それならいいのある」
そう言って彼女は上着に備え付けられたポーチから小さな棒状の物体を出した。
「……それで何するんだ」
訝しげに聞く彼に、アリサは笑顔でスイッチおを押すと棒の先端から火よりはるかに明るい光が現れた。
まるで昼間のような明るさにナギは呆然とする。
「文明の差って面白いね。これは懐中電灯。電気の力で光ってるの。サバイバル用の強力なやつだけど。あと熊用のスタンガンとか催涙スプレーにスモークグレネードもあるし、調理にも狩にも使えるスタンナイフもあるよ。防水ポーチのお陰で全部無事だったんだ」
「……なんだかお前が魔女に見えてきた」
「魔女もいるの?」
「あぁまあ、身近だと俺の師匠だけど」
「凄い!ドラゴンだけじゃなく魔女も本当に存在したんだ!!」
キラキラと目を輝かせるアリサに困惑するナギだが、とりあえず彼女が何ともなさそうで安堵する。
「詳しい話は後だ。とにかくまずは下山するぞ。そのカイチュウなんちゃら、しっかり照らしながら後ろについてこいよ」
「わかった。それより山にはさっきのドラゴンみたいなの……出る?」
「あぁ。もっと気持ち悪い見た目のやつがウヨウヨ出るぞ」
「ごくりッ……まあでもナギすごい腕の筋肉だし倒してくれるよね?」
「任せろ。自慢じゃないが街じゃ1番喧嘩が強い」
「自慢じゃないが。で始まるのは大体自慢だよ。確かに強そうだね。任せた!」
打ち解け始めたところでナギは彼女を連れて下山を開始。
「……」
しかし2人は王の頂を離れた後も気づかなかった。
全身ローブに身を包んだ怪しげな人物が、物陰からじっと目を光らせていたことに。
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