純白は汚せない

朝乃倉ジュウ

プロローグ

東京都世田谷区には、特殊なイモムシが存在する。

 それは何の前触れもなく突然に、そして自然に現れた。人間がまったく気づかないところで。


 あなたは今、イモムシが手のひらに収まるサイズだと思っていますね?


 芋虫と一緒にしてはいけません。イモムシは、私たち人間と外見は全く同じなのですから。

 油断してはいけません。イモムシは人間のこころを喰らって成長するのですから。

 決してこころを喰われてはいけません。こころを喰われると、記憶と寿命を奪われるのですから。

 諦めてはいけません。こころを喰われた人間を守る黒服が、イモムシを、サナギを、チョウを駆除するのですから。


 余命半年と言われても、希望と異常と異能を持って、絶望に堪えよ。

 失いたくなければ己の日常を捨て、憎しみと異能を持って、修羅の道を走れ。


 これは、人のこころを喰らいチョウになろうとするイモムシと、こころを喰われ異常と異能を与えられ、更には命も削られた花嫁。そして異能者となり、イモムシを駆除し花嫁を救おうとする黒服の生存競争である。

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