サカナノココロ

魚の目

第1話

6月だというのに、外はカンカン照りで

新宿の通りを歩く人々はいつもと変わらず早足だった。


あまり日が差し込まない室内で作業をしているからか、外に出てあまりの眩しさに目がくらむ。というか、本当に少しフラフラする。


ドスッ


誰かのバックが肩に当たった。

振り返っても、その誰かはすでに人ごみの中に消えていた。


業務用スマホが震えた。

風間部長からだ。

ディスプレイに名前が表示されるだけで、体に力が入るのがわかる。


「高梨くんへ 


来週の報告資料、今日中にお願いします。


風間」


たった三文。それだけで一気に食欲が失せた。


今日は何時に帰れるだろう。

とりあえず、夜用にウィダーとモンスターだけ買って行こう。


言葉って恐ろしいものだ。

部長の顔を見たわけでもないのに、こんなにも気分が悪くなる。

あぁ、職場に隕石でも落ちないかなぁ。

なんて空想をする。

最近そんなSFまがいの夢をよく見る。

大抵は悪夢なんだけれど。

短い睡眠時間なんだから、せめて良い夢を見させてくれよ。と思うけれど

今の会社に勤めている以上、いや、

風間部長がいる以上は無理だろうなぁ。

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