クレイジー探偵 魔坂
浅川さん
前編
「ヒャッハー!犯人が解ったぜぇ!」
探偵、
事件はオセロが得意で世界チャンピオンと対戦し、ぼこぼこにされた経験のある魔坂が、ボードゲームサークルのイベントに招待されたことから始まる。
イベント会場である山奥の洋館に到着した直後、前日に降り続いた雨の影響で土砂崩れが起きて、陸の孤島となってしまった。救助を呼ぼうにも携帯は圏外。土砂崩れの影響で電線が切れてしまい停電している。もちろん電話も使えない。
そんな状況で一人の参加者が首を吊った状況で発見された。
ショックと恐怖から互いに罵り合う参加者たちを集めた魔坂がはなった第一声が先ほどの「ヒャッハー!犯人が解ったぜぇ!」だった。
「は、犯人?」
眼鏡をかけた男性…マサノリが眼鏡をくいっと上げながら言った。
「何の話だ? マユを自殺に追い込んだ犯人って意味か?」
「いいや、自殺じゃない。見りゃわかるだろぉ?状況を見れば明らかだぜ?」
「いや、状況だけ見たら自殺以外の何物でもないじゃない。首を吊ってるのよ?」
ケバイ服装の女…ミユキが反論した。
「おう、お前は金が落ちてたら神様の贈り物だとか言って拾うタイプか?んなわけねーだろタコが!誰かが落としたか、意図的に置いたかの二択なんだよタコが!」
魔坂は大事なことなので二回言った。
「な、タコですって…!!」
ミユキは怒りで顔が赤くなった。
「首吊り死体があったなら考えられる可能性は自分で吊ったか、他人に吊られたかだ。タコが!」
「待ってください魔坂さん。まさか、ここにいる誰かが彼女を殺し、それを自殺に偽装したというんですか?」
真面目そうな青年…ユッキーはそう尋ねた。
「逆に今ここで彼女が自殺する理由は何だ?ここは彼女が所有しているわけではない。遺書もない。そういう素振もなかった。なぜ今なんだぁ?」
「それは………」
「人間は案外簡単に死ぬぜ?だけど、理由もなく自死を選ぶやつはそうそういねえ」
「じゃあ、もし仮にこの件が殺人だったとして、何故彼女は殺されなければならなかったんだ?」
ケンが訊ねた。
魔坂は鼻で笑う。
「ふん、知らねーよそんなこと。そこの話は俺の管轄外だ。警察か犯人に聞くんだな。どんな理由も人を殺す理由にならない以上、動機なんて俺には無駄な情報だ」
魔坂はポケットから煙草を取り出しライターで火をつけた。
「容疑者がいて、そいつは殺人が可能だった。証拠もある。じゃあ、動機があろうとなかろうと犯人だ。殺す気なんてなくても人間は死ぬからな」
タバコを吸い煙を吐く。そしてこういった。
「犯人はこの場にいる俺以外の全員だ」
その場の雰囲気が変わる。
「は?何を言っているんだ?」
そう言いながらマサユキは立ち上がった。
「お?なんだ?図星突かれて動揺してんのか?座っとけタコが」
「……どうしてそう思ったんですか?」
ユッキーが魔坂に尋ねた。
「おう、教えてやるよ。だが、その前に準備がある」
魔坂はジャケットの内ポケットからスタンガンを取り出し、ユッキーの腹部に押し付けた。直後にバチンという音。
「がはっ!」
突然のことでかわすこともできず、スタンガンの一撃を受けたユッキーはその場に倒れた。
「お、おまえ……!」
ケンが立ち上がる。
「さて、次は誰だ?」
魔坂はスタンガン片手におどけて見せた。
「…ふざけやがって!」
ケンが前に出た。ボクシングのファイティングポーズをとる。彼はアマチュアボクシングの選手だった。
「うおお!」
ケンは一気に距離を詰めてジャブを打ち、魔坂のガードが甘くなったところに渾身の右ストレートを叩き込んだ。
魔坂の左ほほにクリーンヒットしたが、その直後再びバチンと音がした。
「……」
ケンも床に倒れた。魔坂はわざと殴らせてその隙にスタンガンをお見舞いしたのだ。
「流石に効くねぇ。さて?残るは二人か?」
痛かったのか魔坂は殴られたほほをさすりながら、マサノリとミユキに近づいていく。
「く、狂ってる。どうしてこんな……」
「狂ってるのはお互い様よ。こんなことにならなけりゃ俺たち友達だったのになぁ」
魔坂はスタンガンを構える。
「いい夢みろよ」
魔坂が飛び掛かるのと、ミユキがナイフを取り出すのは同時だった。
ナイフは魔坂の右ほほをかすめた。だが、魔坂は止まらない。直後、スタンガンがミユキに電撃を食らわせた。
「きゃあああああ!」
ミユキは倒れた。気絶したようだ。
魔坂はミユキの手からナイフを取り上げると、壁に投げて突き刺した。
「あぶねえあぶねえ。スタンガン持ってきてマジで正解だったぜ」
「あ、あああ……」
「さて、それじゃあ、探偵らしく謎解きを始めようか」
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