★ティーブレイク その3 個人的に好きなマイナーゲームの紹介 『影の塔』
もはや気分転換をするためだけにねじ込んだ、楽しいマイナーゲーム紹介の時間だ!
もちろんスルーしていいよ! 今回は無駄話が多くあるので、かなり長いよ!
突然だが、僕はTDSのアラビアンコーストにあるアトラクション『シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ(以下、シンドバッド)』が好きだ。
これは、ディズニー作品ではお馴染みの巨匠、作曲家アラン・メンケン氏(美女と野獣、塔の上のラプンツェルなど。ポカホンタスのカラー・オブ・ザ・ウィンドウ超好き)の音楽と共に、シンドバッドの冒険を体験するライドスルー型アトラクションだ。
なお1回につき24人動員できるので回転率が高く、コロナ前は混雑状況を計る基準にもなった。今はどうなんだろ。
日頃のスタンバイは5~10分を維持しているので、もし20分を超えた場合はある意味祭りである。
そうなったら人気アトラクションは諦めろ。閉園2時間前に再アタックするんだ。
このアトラクションの何が好きかというと、BGMの『コンパス・オブ・ユア・ハート』はもう言わずもがなだが、舞台美術が大好きなのだ。クジラのシーンの波のうねりのギミックがたまらん。
とりあえず、冒頭の流れを説明しよう。
ゲストはライドに乗り込むと、まず最初にシンドバッドと子虎チャンドゥを目にする。彼は挨拶と「やあ、みんな! 一緒に航海ができて嬉しいよ!」という情報を与える(そして流れる『コンパス・オブ・ユア・ハート』の歌…ッ!)。
一緒に、とシンドバッドがセリフを話している通り、この先で体験するアトラクションの物語の主人公とその相棒が誰なのか一目で分かるつくりになっている。
ゲストはシンドバッドが住む街を進んでいく。
このとき、この世界における文明の説明を舞台美術だけでしているのがたまらない。
例えば最初のシーンに出る建築物(電気がない、泥塗系の壁で近代ではない=昔の時代の異国)、衣装(肌を隠す=日射を避ける=熱い地域)、移動または運搬手段(船、ラクダ、ロバ=インフラの程度)、娯楽(影絵によるお話会、踊り子や楽器演奏=文明の程度)とか。
その後、三人の賢者っぽいおじいさんに「気をつけろ、シンドバッド」「この先は危険じゃ」「忘れるな、いかなる時も心のコンパスに従うのだ!」と航海に送り出される。
そして、歌詞にてシンドバッドが旅立つ目的は「夢のように光り煌めく宝物が君を待つ=宝探し」であると説明があるのだが、シンドバッドの求める“宝物”とは何かは示しておらず、この正体が物語の縦軸となるのだ。
およそ2分ほどの時間で、この最初の場面だけで、世界観説明と物語の大筋と起承転結の起を済ませていることになる。マジやべぇ。
ぼーっと観てるだけで世界観の大体を説明出来ているのが本当に凄い。耳と目を全力で破壊しにきてる。もはや暴力だよ!
そしてリニューアル前を知っていると二度おいしい。ホラーをポップに変えるアレンジ凄い。ちなみに後半のシーンに隠れアラジンがいるので探してみてね。
舞台美術でいうと同じくTDSの『タワーオブテラー』は色んな意味で大好き。ハイタワーさん、映画化の噂はどうなったんすか。ずっと待ってます。
TDLにある同系統のアトラクション『カリブの海賊』『スプラッシュマウンテン』『ホーンテッドマンション』ももちろん好きです。
この『シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ』は恐らく「雰囲気」をいかに楽しめるかによって、印象が変わると思われる。
なので刺さる人は刺さりまくる魔性のアトラクションだ。
さて、前置きが長くなったが、お察しの通り、僕は材料があれば勝手に妄想するタイプの人間だ。そのため、巷で言われる「雰囲気ゲー」も大好きだ。
今回紹介するWiiソフト『影の塔』も雰囲気ゲーにあたると個人的に思っている。
この作品はとても独特で素敵だった。タイトル通り「影」がテーマの作品である。
内容は「とある儀式により実体を奪われ影のみの存在となった主人公の少年が、体を取り戻すために、道を阻むギミックを解いたり、敵を倒したりしながら、塔を登っていく」ゲームだ。
系統で言えば、『ICO(PS2/PS3)』や『LIMBO(Xbox/他)』のようなアドベンチャーに該当する。
「そもそも挙げている作品が分からん」という方向けに、ひとまず先に、この2作を簡単に説明しよう。
どちらも名作なので遊んだことがなければプレイをおすすめ。
『ICO』は、主人公イコがヨルダという少女と手を繋ぎ、生贄として連れて来られた霧の城から脱出する謎解きゲームだ。
(※なお、作品のディレクターさんは7章で出した『ワンダと巨像』と同じ方です。『人喰いの大鷲トリコ』もいいよ)。
ヨルダは不思議な力を宿しており、例えば道を塞ぐ石像に彼女が近づくと石造が反応してどいたり、石造と同じ模様のついた構造物(セーブポイントの石造のソファーや、球体のスイッチ等)を作動させたりすることが出来る。逆にいうと、ヨルダがいなければセーブは出来ないのだ。
ヨルダは不思議な力こそあれど、それ以外は普通の少女だ。垂れ下がる鎖をよじ登ったり、自分の身長以上の壁を乗り越えることは出来ない。脱出には彼女の存在が重要なので、イコ(プレイヤー)はときには彼女が進めるように道を整え、障害を乗り越えるサポートしつつ、互いが離れないように手を取り合って進む。
一見すると普通のアドベンチャーに見えるかもしれないが、イコとヨルダは互いの境遇を知る術がない。二人が使用する言語が異なるためだ。いうなれば日本人とギリシャ人が二人旅をしている状態である。ゲームの字幕もイコ側のセリフは和訳されるが、ヨルダ側は造語の文字が表示される(なお2週目に和訳が出る)。
ヨルダはイコと同じく生贄なのか、城の関係者なのか、敵か味方も分からないが、二人は手を繋ぐ。
この関係性を強調するように、石造りの無機質な城の中を二人の足音だけが響く様は、欧州の映画を思い起こさせ哀愁を誘う。
そしてプレイしていくうちに、いつしかNPCのヨルダに慈しみ深い感情を持つことだろう。終盤の彼女の姿を見て心を痛めた人もいるのではないだろうか。
宮部みゆき先生による小説『ICO 霧の城』もあるので、作品の雰囲気を味わってみたい人はおすすめ。
『LIMBO』はモノトーンのシンプルなデザインと裏腹に物理演算によるギミックの謎解きとダークな世界観がマッチした作品だ。
横スクロール型の2Dフィールドを左から右へと進む構成となっており、いうなれば、グロい『スーパーマリオ』である。
主人公は普通の少年なので、基本動作は「歩く」「走る」「飛ぶ」「掴む」の4つしかない。『スーパーマリオ』と同じく、障害となるものをこの動作だけで突破していく。
障害はネタバレになるので詳しく書けないが、『ゼルダの伝説』並みに知恵を絞る必要があるし、シンプル故に意地悪な罠が多く設置してあり、『クラッシュバンディグー2』のニトロや爆弾の配置が好きな人には、たまらない構成だろう。
作品紹介では「森で行方不明になった妹を探しに少年が煉獄(リンボ)へと赴く」とあるが、ゲーム中は一切のセリフがない。そのため背景や登場する敵から考察する形となる。
最初に冒険する森は印象的なシーンが多い。首吊り死体や人が入った籠が随所につるされていたり、巨大なクモや寄生虫に遭遇したり、ナチュラルにカニばさみが置いてあったり、主人公と同じように生きている子供が登場したり…(一応展開は伏せます)。とくにクモの足がね…もう最高なんだ…後にも先にも…。
どの場面のスクショをとっても絵画的になるのはすごい。ゾッとするEDは必見。
『ICO』と同じくプレイヤーが考察できる素材が散りばめられており、そういった妄想が得意な人は非常に楽しめるだろう。
同じ制作元の『INSIDE』もおすすめ。海外ドラマ『ストレンジャー・シングス』好きなら超楽しいよ。
これは個人の定義になるが、雰囲気ゲーとは「説明で提示されている以上の物語を多く語らない代わりに、背景美術や登場するキャラの言動から考察出来るようにしたもの」という認識だ。
前述した『シンドバッド』的なテンションで挑むと楽しいという感じ。
そのため雰囲気ゲーはプレイする人の相性によるところが多いと思われる。俳句や純文学に近い。
映画で言うと、つくりが芸術寄りの静かな作品が該当するかと思う。例として『バンカー・パレス・ホテル』『サヴァイヴィングライフ -夢は第二の人生-』『トト・ザ・ヒーロー』『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』『キカ』あたり。
個人的には名作パズルゲーム『I.Q Intelligent Qube(PS1)』も雰囲気ゲーに近いと思っている。
I.Qはいいぞ。難しくて面白くてBGMがめちゃくちゃいいという最高な作品。2作目『I.Q FINAL』の『第2の潮流』超好き!
とても長くなったが(自分の思う)雰囲気ゲーの説明が大体できた(?)ところで、『影の塔』の話に入る。
再度記載するが、この作品のテーマは「影」だ。
そのため、フィールド自体は3Dで立体的となっているのだが、主人公が影なので2D視点で考える必要があるという点が非常に特徴的だった。
主人公は影なので、影の上しか歩けない。そのため、3Dの見た目的には道があっても、道となるえる影がなければ、そこは進めないのだ。
影絵やシルエットクイズを見たことがある人ならばご存知の通り、組み合わせや光の当て方によって形が千差万別に変わる。
ただの街灯が壁になったり、屋根が坂道になったり、少しの溝が落とし穴になったり…。
だまし絵的な世界を、進めるのか進めないのかをじっくりと考えることが面白い。
終盤になると、3D的に考える場面が登場するのだが、このときに2D的な考えが根付いてしまった故に「道になる影がなくて進めない!」と小一時間悩んだのが印象深い。いわゆる「鎖に繋がれた象」のようで、気づいた後は騙された快感で笑った。
Wiiリモコンを使った感覚的な操作も健在だ。道中で「光源の位置をずらす」という、このゲームならではのギミックが登場する。
プレイヤーはWiiリモコンを使って光源を左右または上下に調整し、道を切り開く。光源が遠ければ影は延び、近ければ小さくなる。そのため、塞がっていた道が拓けたり、逆に足場がなくなり進めなくなったりと、進み方を閑考えながら試行錯誤を繰り返すことになる。
この「見方を変える」という体験が非常に新鮮で面白い。
さて一方で「雰囲気」の話だ。
『影の塔』はOPで鎧の騎士のような人に剣を振り下ろされ、肉体から影を切り離されて捨てられるシーンから始まる。
その恰好や石造りな建築物から中世的な世界観なのかな、と思っていると、風景には電ノコや壁にパイプ、自転車といった近代的なものが目に入るので覆される(なお主人公はパーカーに7分丈のカーゴパンツを着ているので少なくとも太古ではないと分かる)。
道中光る玉のようなもの(メモリー)を調べると、主人公と同じく影となったらしき者の最期の声を聴くことが出来る。
道中にはクモといった影の敵が存在する。それらには実体がない。
そして突如襲ってくる、足や手がうじゃうじゃ生えた『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくるバックベアードみたいな巨大な何か…。
匂うぜ…、過去から脈々と受け継がれてきた禁忌的な風習の感じがなァ…!
クモやバックベアードさんの成り立ちの想像が楽しいぜ!
『影の塔』は『ICO』や『LIMBO』と同じく多くを語らないゲームになるので、自分の拾った情報から導き出した考察がそのまま物語となる。
そのため、進行方向が分かっていても、ついつい寄り道をしたくなってしまうのだ。
そして謎解き的な意味でプレイが楽しいが、背景を考えると主人公の行く末が心配、という2つの情緒が常に背中合わせになった状態で進む不思議な感覚は、非常に面白い。
なお2週目以降は条件を満たすと隠し武器が登場するので周回プレイも楽しめる。
映画『バンカー・パレス・ホテル』や『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』や、ゲームだと『ICO』、『LIMBO』『I.Q Intelligent Qube』が好きなら十分楽しめると思われる。
注釈として、それらの内容を理解しているかは問題ではなく、作品の雰囲気が楽しめるかになる。
実際、挙げた作品を僕自分ちゃんと理解できてない。でも、わからないが面白い。そのノリを持っていれば、きっと楽しめると思う。
考察の深さに関係なく自分なりに考えて楽しむ遊びが出来るなら、『影の塔』は楽しい体験になること間違いなしだ。
謎解きゲーとしても面白いので『ゼルダの伝説』好きも是非。
逆に『クラッシュバンディクー』や『スーパーマリオ』を求めてプレイすると合わないかもしれないが、画面スクショやパッケージを見てビビッときたなら、きっと合うからやろうぜ!
WiiソフトはWii Uでも遊べるぞ!
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