●あるある話 その4 せんすはむずかしい

 業界あるある話。テーマはセンス。センスって難しいよね。

こういうとき、どういう顔をすればいいか、分からないの。

以下、プランナーをPL、ディレクターをDとして進みます。

光あれで光が出来ました。その一文が欲しいだけなの。


/*--------------------*/


D「第一稿のシナリオをもらった。先方のディレクターから感想と意見が欲しいとの依頼だから全員見るように」

PL「承知しました。ちなみに、どこまで突っ込んでいいんです?」

D「変だと思ったらとりあえず出す感じでいいよ」

PL「了解でっせ。とりあえず、あったらまとめときますわ」


PL「プロのライターのシナリオとか初めて見るのう! わくわく!」

PL「へえ、こうやって書くんじゃな。勉強になるわぁ。ライターもディレクターの指示でやるんやねぇ」

PL「…ん? なんや、この違和感は…」

PL「…主人公に全く共感できねぇ…行動も理解できねぇ…。まぁほら、そもそも影でサイコパス呼ばわりされとる俺が、人間のことなんて分かるわけないやんけ! きっと最後まで読めば理解できる系やろ。偏見はよくないお」

PL「ひぇ…、最後まであかんかったわ! ノットフォーミーや!」

PL「主人公、お前何なん? 旅立つ目的が『強くなりたい』だけって…。強くなってどうしたいねん。街にいても達成できるやん。俺より強い奴に会いに行くって言えるのは、“外に強い奴がいる”のを知ってるからやで? お前一切知らんじゃん」

PL「百歩譲って“探しに行く”なら分かる。でもこうなると悪側の思想や。戦闘狂じゃん…。引くわぁ…」

PL「強くなる動機がモンスターに殺された両親の仇打ちですらないって、マジで何しに行くのよ? 両親のくだりいる? 行動が意味不明…つまりロイコクロリディウム系主人公…。いや、むしろ新しいな…」

PL「ヒロインは、頭お花畑すぎや。そもそも街が滅んだのはお前の両親の謎行動のせいやんけ。モンスターの巣を独断でせん滅したら街が襲撃されました、だからモンスターは分かりあえないし、諸悪の根源ですって…。ちょっかい出されたモンスターの気持ち考えろよ…。根源は両親じゃい…」

PL「なんで飛躍した思考すんのよ…。このヒロイン過激過ぎるでしょ…。君に花は似合わないぜ。初期装備を散弾銃と迷彩服に変えた方がいいと思うよ。ナチュラルボーンサイコギャルでギリいける…か…?」

PL「ラスボスもよぉ、何ノコノコ現れて見学してお気持ち表明して去ってくねん。何しに来たの? スマブラXのロボは言葉がなくても行動の理由が分かったよ? あと作戦ちゃんと建てろ。なんで夜襲一択しかないねん。誰か止めてやれよ」

PL「目の前で部下を殺されて悲しいとかいう前に、戦闘に加勢しない冷徹ムーブ見直せや。苦労すんのは部下のライオン丸さんやぞ…。あ、もしかしてラスボスはライオン丸さんにツンデレなん? ひゃだ…ちょっと萌える…!」

PL「相関図を簡単に書いてみたが…。分からん。なんで仲間Aの恋愛線が主人公に延びるねん…? 主人公何もしてねぇじゃん…。いただけやぞ。主人公をカカシにすり替えても成立すんで」

PL「仲間Aのメインイベントでずっと助けてた仲間Bの方がフラグ立つのに納得するわぁ…。主人公にトゥンクした瞬間どこやねん、マジで…。ソドムの市のが分かりやすいと思う」

PL「伝説の剣もさぁ、なんでこの洞窟にあるんや。裏付けが一切ない状態で伝説は本当だから伝説だったんだ…これで納得しろってのが無理じゃろがい。せめて他の伝説の遺物を出すとか、洞窟に伝説が作られた古代文明を裏づけるような遺跡感出すとか…」

PL「パズーの父さんみたいに龍の巣内部の写真とるとかさ…飛行石の光によってラピュタの位置を示すとかさ…やっぱりラピュタって最高や!」

PL「分かった、時系列に伴う行動原理と問題の解消が”ラスボスを倒すだけ”だから読後感が変なんや。”なんで倒すと解決するのか”の因果の説明がほぼない。なのにラスボス倒せばモンスターは滅びて万事OKって、何それ…。つうか、ラスボスにいつ無惨さま的な設定がでたの? 俺が見落としてるだけなのか…?」

PL「そして仲間Cの国の水問題どうすんねん。砂漠化の原因はモンスターじゃねぇぞ…。ラスボスに責任転嫁すんなや。滅ぶべきは人間やないか。モンスターじゃねぇ!」

PL「…天空の城ラピュタの偉大さを知るいい機会やった。これがテーマだとしたなら最高に合っとるシナリオや!」

PL「いや…、所詮はひねくれ者の素人意見。そもそもプロが考えないわけないやん。意図的に決まっとる! それに第一稿やぞ。まだ焦る時間じゃあない…」

PL「一応まとめとこ…」


D「意見みたよ。お前さ、細かすぎだろ。その証拠に他の人は指摘してないぜ?」

PL「そういう性分なんや…許してけろ…」

D「リアリティ云々もさー、別に現実社会がモデルじゃねぇんだから。何も書けなくなるぞ? 時間の制約とかあるし。本当センスねぇな、お前」

PL「失礼な、俺だってファンタジーじゃがいも問題はスルー出来るわい。とんでも科学、こまけぇこたぁいいんだよの生態系、どうみても戦闘向きの服じゃないミニスカえちえち女騎士、全部ばっちこいじゃい。むしろ出せや!」

PL「ボボボーボ・ボーボボにもマジレスしねぇわ。このシナリオはフワフワしすぎて境界線が分かんねぇんだっつの!」

PL「それにボーボボは、作品のリアリティをハッキリ示しとるからスゲェんだぞ。何せ、開始2ページ目あたりで、主人公のボーボボが関東野菜連合にボコられて磔刑にされた状態で登場するんやぞ…。この先一般論と倫理が絶対に通用しねぇと一発で理解できるやろがい」

PL「問題なのはシナリオの世界観における一般論や倫理設定の提示のなさと、登場人物の行動原理の説得力のなさじゃい。いうなれば、このシナリオはビュティさん不在のボーボボやぞ」

PL「あとは舞台設定フワフワしすぎじゃい。資料集めんのこっちだぜ? 巡り巡るんだぜ? 邪悪なサークルオブライフや…!」

D「はいはい、また屁理屈の羅列だろ?もう、こだわるのもいい加減にしろよ」

PL「Excuse me.」


PL「ミーは指輪物語並みにしろって言ってるんじゃないんだよ…。ユーはなんで、分からないんだよ…。シナリオの基礎じゃんよぉ…」

PL「俺がトールキンか、ジョージ・ルーカスだったらなぁ…」

PL「もう何が来てもノットフォーミーの精神で乗り越えるしかない…」

PL「資料探し大変やろな…。先方は神殿の詳細設定がない状況でひとまずパルテノン神殿出したら、なんでアブシンベル神殿じゃないんだってキレる謎思考しとるし…。カウンセリングしても無駄やし…。せめてイメージ写真は探せや」

PL「人型の柱に対して、何故何の疑問も持たねぇんだ…。ドリス式、イオニア式レベルの話じゃねぇよ…。創世記でも”神が作った”の設定あるやんけ…目的もよぉ…。これから長い闘いになりそうで嫌だよぉ…。DSさんマジでファイト…」


~リリース後~


PL「エゴサすっか!」


「結局なんで旅してんのコイツ等?」「仲間A面食いすぎww仲間Bは泣いていいwww」「ラスボスたんドジっ娘はぁはぁ」

「遊牧民なのにレンガ細工の家ww」「強くなるついでに世界を救うRPG」「モンスターかわいそう」「伏線のない伝説www」

「両親の仇打ってやれよぉ!」「仲間Cはその能力で水源探せよ。ラスボスに構ってる暇ないだろ」「人間は滅びた方がいい」

「というか、ラスボスの接点少なすぎぃ!もうほっといてやれやwwwww」


PL「まぁ、そうなるでしょうねェ」


/*--------------------*/

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る