第85話

 ゴンドラに乗り込むと、スタッフが外から扉に鍵をかけた。

 もう、これで逃げる事は出来なくなった。

 

 「卓也さん。本当に大丈夫ですか?」


 「あ、あぁ。まだ、大丈夫」

 

 徐々に高い景色へとなっていく。

 

 「卓也さん。汗かいてませんか?」

 

 ゴンドラ内が暑いわけではない。

 

 「ごめんなさい。そんなに苦手なだったとは知らずに。やっぱり、観覧車に乗らない方が良かったですよね」

 

 謝りながら、緩奈はハンカチを取り出して、額の汗を拭いてくれた。

 よく、こんなおっさんの汗に自分のハンカチを使えるなと思う。

 

 「いや。こっちの方が悪かった。のデートだっていうのに、あんまり楽しませるように出来なくて」

 

 「・・・最後のデート。だから、無理をしてまで観覧車に乗ってくれたんですか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る