第54話

 「ヒッ・・・ック。流石にちょっと酔ってきちゃった」

 

 「そうですか。じゃあそろそろ、お開きにしましょうか」

 

 結局、男はジョッキでビールを二桁まで飲んでいた。

 その間、私はというと、ソフトドリンクを頼んで、男が満足するまで待つしかできなかった。

 

 「・・・そう言えば、なんで、名前を聞いたり、教えてくれないの?」

 

 「一度だけの、関係。名前を聞く必要ありますか?」

 

 気持ちよさそうに喋りかけてくる男に嫌気がする。


 「そっか。・・・お酒って、飲んだことある?」


 「ありません。未成年ですよ。私」

 

 「この機会にどう?練習しない。大人になってからじゃ遅いと思うんだよ」


 「絶対に飲みません」


 酒に酔ってうざい絡み方をしてくる男。

 すると、近くに座っていた人が喋りかけてきた。

 

 「未成年者飲酒禁止法第1条2項。未成年者に対して親権を行う者もしくは親権者に代わりてこれを監督する者未成年者の飲酒を知りたるときはこれを制止すべし。難しい言葉で、頭が痛くなりそうだけど、要するに、子供に酒を飲まそうとする行為は犯罪なんですよ」

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