第47話

 待ち合わせ場所に男は、数分十分遅刻してきた。


 「ごめん。待った?」


 「待ちました」


 卓也さんなら、デートの待ち合わせに遅れてくる事なんてなかったのに。

 

 「怒らないでよ。ちょっと、電車が混んでてさ。・・・あれ、この前、買ってた服じゃないんだ。あの服に似合っていたら、今日、着てるのを見れると思って期待してたのに」

 

 「・・・あなたに見せる為に買ったんじゃないんです」

 

 「へぇ。そうなんだ。・・・じゃあ、そろそろ行こうか」

 

 男が歩き出して、私は男の少し後ろを続くように歩いた。

 ・・・先に、どこに行くのかを教えて欲しかった。

 

 「今からどこに行くんですか?」


 「それは着いてからの、お楽しみ」

 

 全然、楽しみにならない。

 どこに私は連れていかれようとしているのか不安になる。

 卓也さんとデートした時はそんな事など、一切考えなかったのに。

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