結斗の葬儀

「向こうに行ってるから、好きなだけお別れをして下さい。」


そう言って、もらえた。


俺は、結斗の髪を撫でる。


「結斗、愛してるよ」


葬儀屋さんが、痣をけしてくれた。


「酷い事されなかったか?ニュースを聞いたよ。最後は、俺がよかっただろ?結斗」


俺は、結斗に抱きついた。


「結斗、ごめんね。助けられなくて」


俺は、この日医者になる事を決めた。


「結斗、俺がいつかそっちに行ったら、また付き合ってよ」


泣きながら、キスをした。


「すみませんでした。」


「ありがとうね、上條君」


「これ、塗ってあげて」


妹さんに、口紅を渡された。


「はい」


俺は、泣きながら結斗に口紅を塗ってあげた。


「結斗、綺麗ね」


「はい、とても綺麗です」


「結斗は、幸せだったと思います。ありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとうございました」


結斗の葬儀は、大雨の中執り行われた。


結斗は、俺の天使だった。


結斗と付き合えたのは、夢のような出来事だった。


だけど、俺は、最後まで結斗に、ごめんねを言えなかった。


ホモと言われるのが嫌で、保健室に通わなかった俺を、今でも呪ってやりたいと思ってる。


もっと、もっと、俺は、結斗の傍に居たかった。


結斗をもっと感じていたかった。


.

.

.

.


「何で、医者だったの?警察とかあったんじゃないの?」


「何でかな?あの日、結斗の姿を見た日に、絶対に医者になろうって決めたんだよ。」


「強姦暴行殺人事件、犯人は、大海力おおうみちから。同じ中学で、上條をずっといじめていた犯人」


「もう、出てきてるよな」


「そうだろうね」


「凌平さんにも、話してるんでしょ?五木君以上に好きになれる人はいないって」


「まあね、向こうもそうだし」


俺は、ビールを飲む。


ジュゥ、ジュゥと伊納は、肉を焼いてる。


「あの日、何で五木君は、大海に会いに行ったの?」


「日記にちゃんと書いていたよ。8月31日の誕生日には、まっさらな自分になりたいからってな」


「って事は、上條としてる間も繋がってたって事?」


「抵抗すれば、殴られるからやらされていたみたいだよ。でも、最後に俺としてからはしてなかった。事件の5日前。俺は、結斗の愛を一生分ちゃんと受け取ったよ」


「それは、凄いね。羨ましいね」


「伊納だって、あの日々は、そうだったんだろ?」


俺は、肉を食べる。


「でもさ、親には、怒られたよ。」


「わかってるよ。でも、俺は、今でも純愛だなーって思ってるよ」


「なわけないじゃん。やる事はやってたつぅーの」


「美鶴さんは、知ってるんだろ?あの日の事も全部」


伊納は、ビールを飲んだ。


「知ってるよ。それに、あの人にとって、私は代わりだったんじゃないかな?」


「伊納、まだ、あのおまじないのせいだって信じてんの?看護婦長までなってるくせに…。」


「だって、本当にあの日、私は…。」


「わかってるよ。でも、そんだけ、あの人が好きだったんだろ?誰にも、とられたくないぐらい。」


「上條、私、酷い人間だったよね」


伊納は、泣いていた。


あの人の名前は、二度と口に出してはいけない。


そう家族に、言われた。


俺も、そうだった。


だけど、今日だけはあの人の名前を呼んであげれるんだ。



「俺は、あんなの迷信だって思ってるよ。何かが、最悪な形でハマっただけだよ。だろ?じゃなきゃさ。」


菅野すがのが、あの人の事願ったって言ってたじゃん」


「そんなの迷信だって」


「上條だって見たでしょ?あの人の時に」


「そんなの信じてたら、医者なんかできねーよ。看護士だって、出来ないだろ?」


「わかってるよ。わかってるけど…。」


「もう許してやりなよ。伊納、自分の事。ほら、今日はたくさん名前、呼んでやれよ」


俺は、伊納に笑いかけた。


「わかった。話すよ。上條」


「ああ、何度だって聞いてやるよ」


俺は、ビールを飲んだ。



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