魔法のランプの精は転生して人間になった
レイノール斉藤
第1話
ある金持ちの老人が宝物庫のランプを磨くと、中からランプの精が出てきた。
ランプの精「願いを一つだけ叶えてやろう」
老人「叶えてもらったらお前はどうなる?」
ランプの精「どうもしない。消えるだけだ。私はそういう存在だからな」
老人「じゃあ願いを言わなかったらどうなる?」
ランプの精「貴様が願いを言うまで貴様の側で待つ」
老人「そうか……」
1ヶ月後
ランプの精「おい、早く願いを言え」
老人「まあ、そう焦るな。今一つコレと言った願いが浮かばないんだ。それより新作だ、味見してみてくれ」
ランプの精「どれ、もぐもぐ…うま!!」
老人「食わなくても生きていけるのに味覚があるんだな」
ランプの精「どんな願いでも叶えられる存在なんだ。味覚を後から身につけるくらい訳無い」
3ヶ月後
ランプの精「おい、まだ願いは決まらないのか?」
老人「うーん、幾つか候補はあるんだが一つに絞れなくてな。はい、チェックメイト」
ランプの精「なにぃ!?くそっ、もう一回だ!」
6ヶ月後
ランプの精「どうだ?そろそろ願いは決まったか?」
老人「よくよく考えてみたんだが金で解決できたんでな。いやー、技術の進歩ってのは凄いもんだ」
ランプの精「確かに……人間如きが魔法を使わず空を飛ぶとは驚きだ。数百年後には宇宙まで行けるかもしれんな」
9ヶ月後
ランプの精「苦しそうだな。なんなら願いで不老不死にしてやろうか?」
老人「ゴホッゴホッ……いや、辞めておくよ」
ランプの精「人間というのは皆死を恐れるものだと思っていたがな」
老人「怖いのは死じゃない。本当に怖いのは、死ぬ時傍に誰も居ない事さ」
ランプの精「?……周りには誰も居ないじゃないか。そもそもお前に会いに来る人間を見たことが無いぞ」
老人「はは、そうかもな……」
12ヶ月後
ランプの精「おい、貴様もうすぐ死ぬぞ。いい加減願いを言え」
老人「願いは……もう叶った……よ」
ランプの精「そんな筈はない!俺は一度も魔法を使っていないじゃないか!説明しろ!」
老人「わからな…いか?」
ランプの精「ああ、分からない!お前は一体何なんだ?こんなのは初めてだ!最期まで願いを言わない奴なんて!」
老人「知りた…いか?」
ランプの精「ああ、知りたい!お前のことを知りたい!俺は人間を知りたい!教えてくれ!」
老人「じゃあ…願いを…言お……う」
40年後
子供「じゃあ、おじいちゃんは昔ランプの精だったの?」
老人「ああ、そうだよ」
子供「そっかー。じゃあ僕が今おじいちゃんにお願い言っても駄目なんだ」
老人「ははは、まあ、今のおじいちゃんにできることと言ったら遊園地に連れていくぐらいかなぁ」
子供「遊園地!行きたい!連れてって!」
老人「おお、そうか、じゃあ来週行こうか?」
子供「わーい!!」
終わり
魔法のランプの精は転生して人間になった レイノール斉藤 @raynord_saitou
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