二食目 シャチは賢いからこそ事故もある
春は出会いと別れの季節
気づけばカレンダーのマスは
サイコロの目が6を出し続けたように過ぎた。
ーーーゴールデンウィークは始まった。
母と父は早速ゴールデンウイークの始まりに
大きなキャリーケースを持って
出かけて行った。
私が出発するのは
今年のゴールデンウイークが
途切れ途切れのため
ゴールデンウイーク最終の三連休だ。
そこまでは友達と遊んだり、映画に行ったり、
時には彼氏をアプリで募集したり大忙しだ。
結局のところ初日は
友達遊んだりはしていたけれど、、、
社会人あるあるトップ1位に
毎年ランクインしているような
ダラダラをすることになった。
そして、今日は待ちに待った北海道だ。
東京から格安航空機関で札幌に行き、
2日間は札幌で観光。
その後知床のシャチツアーに参加する予定だ。
朝早くに飛行機に乗り、
ビーフオアチキンの選択も
する時間もなく到着した。
飛行機から出たときの初呼吸で温度差を感じた私は空港のエントランスで
少し厚着のカーディガンを羽織った。
そこからは空港でラーメンを食べたり、
札幌市内を観光して
あっという間に1日目は過ぎた。
2日目の今日、深夜にバスで
札幌から知床まで向かう予約が
取れたこともあり、
昨日に抑えておいた写真映えしそうな
ポイントをはしごした。
バスでよく寝れることを信じて、
昨日よりも疲れてしまったが
今日は歩き回った。
そして予想通りバスターミナルについて
乗車した瞬間に記憶が飛んだ。
まぶたの奥から誰かが呼んでいる。
そうだ、私のことだ。
目を開けると
少し疲れた顔の運転手のおじさんが
「お客さん、到着しましたよ。」
と声をかけてくれた。
着いたんだと思う反面、
ぼーっと周りを見渡してみると
そこには運転手のおじさんと
私しかいなかった。
少し貞操観念的思想が頭の中を
巡ったが、今はそれどころじゃない。
「起こしてくれたんですか、ありがとうございます。急いで降りますね。」と言いながら、
ゴミや荷物を片付けながら
寝ぼけた頭を動かした。
キャリーケースを受け取りながら、
運転手のおじさんにお礼を言った。
外に出てみると札幌に飛行機から
降りたときと比べ物にならない程の
寒気を感じ、薄いポケットサイズまで
小さくなる便利なジャケットを
寝巻き風な服の上に
少し分厚くなるように着た。
早朝だったこともあり、
スマホの気温を見てみると
画面には1桁の5度という気温に
絶望以外の何物でもない気持ちまでもが
凍てつく程の冷酷に感じた。
キャリーケースをコロコロと転がしながら
近くのホテルに行ってみると
ちらほらと人がいた。
とにかく寒かったのもあり、
なんでもいいので暖をとりたいと思い、
温泉の張り紙とバイキングの張り紙を横目に
綺麗なロビーから
フロントのカウンターに向かった。
寝過ごしたこともあり
ロビーはピークを抜けた後のようだった。
そして、3人横に並んでいたので、
一番左の優しそうな
40代ぐらいの眼鏡のお兄さんに
向かって曲がることの知らない
イノシシのように猪突猛進の勢いで
向かった。
フロントに着くと
「お客様はご予約のお客様ですか?」と
言われたが直前に予約しただけあって
予約が不十分だったこともあり
何も予約していなかった。
そして、私が
「いいえ。
当日でも温泉だけだけでも
はいりたいのですが、大丈夫ですか?」
と好物をねだるうり坊のように聞いた。
すると、微笑ましくなるような笑顔で
「当日でも温泉だけなら大丈夫ですよ。」
と言われ、「ありがとうございます。
本当にダメ元なのですが、
バイキングも当日で大丈夫でしょうか?」と
そこからもう一つのピースを
揃えるように聞いた。
少し申し訳なさそうに、
「バイキングは先に予約されていた方のみと
なられますので、提供は出来ないです。
ご期待に沿えず申し訳ございません。」
と告げられた。
私は少しショックだったが、
温泉だけでもラッキーだなと思い、
「そうですか、残念です。
温泉だけでも楽しんできます!」
と言い、荷物を預ける手続きを済ませ、
ロビーから満足そうにその場を去った。
温泉にその足で向かった温泉は
冷えた体に染み渡った。
「どうして温泉はぬるぬるしているのに
気持ちいいんだろう。」と
どうでもいいことを考える頭も
ぬるぬるになった頃に温泉を出て、
備え付きのいかにもシンプルな時計を見た。
視点があった瞬間に
ドキッとした時計の針がさしたのは
7時半だった。
今回のお目玉のシャチを
見に行く予定のシャチツアーの予約を
9時にしていてあまり時間がなく、
ここからどんなに急いでも
一時間弱もかかるため
いますぐにでもここを出ないと
間に合わないのであった。
そこからホテルの従業員の方から
荷物を受け取りバイキングという五文字に
後ろ髪を引かれながらも
急いでその宿をあとにした。
急いでいるのと間に合いそうな安心感で
座りながらギリギリの滑り込みで
あと数歩のところに到着した。
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