第769話 寝る前のイチャイチャタイム

 美奈が出ていき、扉が閉まると、綾奈はゆっくりと俺の正面に立ち、上目遣いで俺を見てくる。何かをおねだりするような目だ。

 それだけで綾奈が何をしてほしいのかを察したし、俺も多分綾奈と同じことを考えていたので、俺は両手を広げた。

 すると、綾奈の顔がパッと明るくなり、たたたっと一直線に俺に向かってきて、俺の胸に顔を埋めた。そんな綾奈を俺は優しく、だけど逃がさないようにしっかりと抱きしめる。

「ましゃと~」

 そんな甘えるような声を出して、頬を俺の胸に擦り付けてくる綾奈。猫だな。

 というかいつの間に甘えモードに入ったんだろう?

 でもまぁいいや。いつ入ったのかなんて些細なことだ。今は久しぶりのガッツリイチャつけるこの時間を目一杯堪能しよう。綾奈もきっとそれを望んでいるはずだから。

「ましゃと。頭撫でて」

「いいよ」

 俺は綾奈の要望通り、右手を綾奈の頭に移動させ、上から下へ優しく撫でていく。

「ん~……気持ちいい~」

 ご満悦そうな声が俺の胸の辺りから聞こえてきて、からに頬を擦りつけてくる綾奈。

 というか……甘えモードマックスになってる!? え、マジで早くない?

 甘えモードマックス状態だと、さっきみたいに自分から『あれして』、『これして』とねだってくる。自分の願望を強く俺にぶつけてくるから、さらに猫みたいになる。

 そしていつもの綾奈よりも大胆になり、予想外な行動に出ることもしばしばあるけど……今回はどうなんだろう?

 俺は色んな意味でドキドキしながら、髪を乾かしたばかりの手触りがさらに最高になった髪に触れながら頭を撫でる。

 少しすると、綾奈が一歩、また一歩と前進してきたので、俺は必然的に後ろに下がる。転ばないように注意しないと、去年の大晦日の二の舞になってしまう。

 後ろを確認しながらゆっくりと綾奈に押され後退していると、俺のかかとがベッドにコツンと当たった。

 これ以上は後ろに下がれない。だけど綾奈は前進してこない。どうやら俺のかかとがベッドにぶつかった音が綾奈の耳にも届いたようだ。意識的にか無意識かはわからないが、おそらくは後者だろう。

 次は顔を上げるかなと思ったけど、綾奈は顔を上げずにまだ俺の胸に埋めている。

 このままここで頭を撫で続けたり、それより上のイチャイチャをしてもいいけど、綾奈とベッドに挟まれているから、もし俺がバランスを崩してもしたら綾奈も怪我をしかねない。

 だから俺は、綾奈を離してゆっくりとベッドに腰を下ろした。

 俺がベッドに座るのを見て、綾奈もすぐにベッドに座り、そしてまた俺に抱きついてきた。本気で俺を離したくないと……思ってもいいよな? すごく嬉しい。

 俺もちょっと気分が高揚してきて、そろそろハグ以外のことをしたいと思った俺は、抱きついてくれている綾奈の顎に触れた。

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