第130話 後輩に聞かせる惚気話

「真人先輩、ありがとうございました」

「本当。助かったよお兄ちゃん」

「そう言ってくれるのはありがたいけど、教え方下手でごめんな」

 綾奈や健太郎、そして雛先輩ならもっと上手く教えられたんだろうな。もう少し努力しないといけないな。

「でも真人先輩、本当に変わりましたよね」

「え?」

 心の中で反省していると、マコちゃんがそんな事を言ってきた。

「だって、去年までの先輩はもっとふくよかで、勉強もあまりしていなかったから……や、やっぱり、先輩が変わったのって彼女さん……西蓮寺先輩の為、ですよね?」

 マコちゃんも俺と綾奈の事は知っていたのか。

 まぁ、高崎の文化祭に美奈と一緒に来ていたし、その時の大告白祭のスピーチを聞かれていたとしても何も不思議じゃないな。

 その後どうなったかは、美奈に聞けばわかる事だし。

「そうだね。綾奈と少しでも仲良くなりたくて、がむしゃらにダイエットも勉強も頑張った。そして高崎の文化祭の日に、俺たちが両想いと知って付き合いだして……あの時は本当にびっくりしたし、凄く嬉しかった」

「……先輩方は、とても仲が良いんですね」

「うん。綾奈の方も俺の事を凄く大切に想ってくれてるのがわかってるから、それが凄く嬉しいんだ」

 俺は綾奈の笑顔を思い浮かべて、自然と目を細めて口角も上がる。

 マコちゃんは俺の話を真面目な顔で聞いている。

「……本当にこの二人はラブラブだよ。この前も偶然だけど、二人がキスしてるの見ちゃったし、一昨日お兄ちゃんの帰りが遅くて、理由を聞いたらお義姉ちゃん……綾奈さんとイチャイチャしてたからって言うし」

 美奈が付け加えるかのように言ってきた。途中から呆れたような口調で言ってるし、まだ一昨日の事でイジってくるのか。

「一昨日は仕方なかったんだよ。気がついたら綾奈の家の前にいたんだから。お互いテスト勉強頑張るために会わないようにしていたけど、それが限界に来てそうなったんだから」

「はいはい。お兄ちゃんもお義姉ちゃんのこと大好きだもんね~ごちそうさま」

「お前だって綾奈のこと大好きだろ!?」

「そうだけどお兄ちゃん程重症じゃないもーん」

「ぐっ……言い返せない」

 そんな俺たち兄妹のやり取りをマコちゃんはクスクスと笑いながら見ていた。

「……みぃちゃん、真人先輩。そろそろ帰りますね」

 時計を見たら夕方の四時半だった。

 もう少ししたら暗くなるので、いい頃合いだろう。

「わかった。マコちゃん、またいつでも来ていいからね」

「ありがとうございます先輩。今度は西蓮寺先輩との仲のいいところ、見せてくださいね」

 つまり、綾奈がうちに来ている時にマコちゃんも来るということか。

「いやぁ、マジで胸焼けするから見ない方がいいと思うけど……」

 妹よ、俺たちは別に人目も気にせずイチャイチャするようなバカップルでは……あるな。阿島がこっちに来た時とか、ゲーセンで中村と一悶着あった時とか、割と人前でイチャついてたわ。

「まぁ、それはさておき、もしそうなった時は四人でゲームでもしようよ」

 さすがにゲームしてたらイチャついたりは出来ないから安心だろ。

「はい。その時は是非ご一緒させてください」

 そうしてマコちゃんはうちを後にし、美奈もマコちゃんを送っていくと言って家を出た。

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