第5節 お砂糖全開!? 決意のお家デート
第82話 綾奈の看病から一夜明け……
綾奈さんが俺の家に来た翌日の午前六時に俺は目が覚めた。
あれから俺は一度も目が覚めることなくずっと眠っていた。半日ほど眠ったのなんて、物心ついてからはなかったんじゃないか?
俺は上体を起こして背伸びをする。
身体は少々のだるさは感じるけど昨日に比べると驚く程軽い。
熱は下がったのか確認するために、俺はローテーブルに置いてある体温計を取ろうとして、そのローテーブルに置いてあるものが目にはいった。
「これ……」
そこには俺の好きなライトノベルのヒロインのアクリルスタンドが置いてあり、その下には何やら紙が敷かれていた。
紙を手に取ると、綾奈さんの字が書かれていた。丸みを帯びていて可愛らしい字だ。
『秋葉原で買ってきたお土産です。早く良くなってね。愛してるよ。 綾奈』
紙にはそう書かれていた。
それを見た俺の口角は上がり、何とも言えない高揚感が胸を包み込んだ。
綾奈さんの書き置きが書かれた紙をそっとテーブルに置き、改めて体温計を手に取り脇に指した。
体温を測定している間、俺は昨日、綾奈さんに看病された時の事を思い出していた。
目が覚めると、今にも泣きそうな綾奈さんの顔があって、俺の左手は綾奈さんの両手で優しく包み込まれていたっけ。
俺が「おかえり」って言うと、綾奈さんは涙をボロボロ流しながら「ただいま」と言ってくれた。
熱と寝起きで頭が回ってなかったけど、あの時の綾奈さんの顔はしっかりと目に焼き付いていた。
あの泣きながら微笑んでいた綾奈さんの顔は、とても美しかった。それ以外で形容する言葉が見つからない。
それから綾奈さん手作りの卵粥を「あーん」で食べさせてくれたり、俺の背中を丁寧に拭いてくれて、改めて思い返しても、とても幸せな時間だった。
綾奈さんの笑った顔も、照れた顔も、泣いた顔さえ全て愛おしい。
本当……俺はどうしようもなく西蓮寺綾奈という女の子が大好きだ。
ピピッ、ピピッという音が体温計から聞こえてきた。
脇から抜いて表示された数値を見ると、三十六度八分。
綾奈さんの手厚い看病と、半日近く眠ったおかげでほとんど良くなっていた。
俺はあとで六人のグループチャットに送ろうと思い、今の体温が表示された体温計を写真におさめてからリビングに降りた。
リビングに降りると、母さんが朝食を用意している最中だった。
「おはよう真人。だいぶ良くなったみたいね」
「おはよう母さん。うん、もうほとんど熱はないよ」
「綾奈ちゃんの看病のおかげね」
「俺もそう思う」
「今日綾奈ちゃんが来たらちゃんとお礼言うのよ」
「わかってるよ」
言われるまでもない。本当は起きた時に電話しようと思ったのだが、流石に朝早かったのでやめた。
「今日学校はどうするの?まだ熱があるならお休みする?」
「そうだね。念の為休むよ」
この分なら大丈夫だと思うけど、万が一熱がまた上がったら元も子もないし、看病してくれた綾奈さんに申し訳が立たないので、大事をとって休む選択をした。
「わかったわ。朝ごはん食べて、薬飲んで、綾奈ちゃん来るまで安静にしてなさいね」
「うん。ありがとう」
俺はそう言うと、朝食が出来るまでリビングで待つことにした。
待っている間に父さんが起きてきて、さっきの母さんと同じようなやり取りをした。
朝食は白米に半熟の目玉焼き、千切りにしたキャベツとコーンスープとシンプルなものだ。うちではこれがデフォルトだ。ちなみに美奈は白米よりパン派なので食パンを食べた。
朝食を食べ終え、薬を服用して部屋に戻ると時刻は七時十分。
みんなももう起きたと思い、グループチャットにさっきの体温計の写真と心配かけた事への謝罪とお礼、そして大事をとって今日は学校を休むことをメッセージで送信した。
それとは別に、綾奈さんには昨日の看病とお土産へのお礼のメッセージを個別で飛ばした。大好きだよと言う一言を添えて。
すると次々と既読がついて、みんなからメッセージがグループチャットに送られてきた。
一哉【了解。治ってきているようで何よりだ】
茜【本当心配したよ。綾奈ちゃんのおかげかな?】
千佳さん【回復して良かったね真人。愛の力だね】
健太郎【安心したよ。明日学校で待ってるよ】
みんなからのメッセージを読んで、本当に心配してくれたんだなと思って胸が温かくなった。
それから少しして綾奈さんのメッセージがグループチャット内に表示された。
綾奈さん【愛の力かはわからないけど、真人君が早く良くなるように心を込めて看病したから……。】
それから少しして、綾奈さんからまたメッセージが来た。今度は俺に直接だ。
【本当に良くなって安心したよ。……私も大好き♡】
「綾奈さん……」
自分の彼女の名前をつぶやき、彼女への想いで胸がいっぱいになる。
綾奈さんに一目会いたい。
そう思った時、綾奈さんから着信が入った。何ともタイムリーなタイミングだ。
俺はすぐに通話ボタンをタップした。
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