第250話 成績を上げる意外な方法 その101

「…い、いいんですか!?」

 酒井の母親も知っていたらしく、驚きと戸惑いが混ざった状態で聞いたきた。

「はい。実はお客様の都合で、数件の予約のキャンセルが出たんです。もしよろしければ、その時間帯でご相談ができます」  

「ぜひお願いします!」

 大黒柱である夫が入院してから、家計は苦しかったのだ。もしかしたら、何かいいアドバイスがもらえるかもしれない、と酒井の母親は縋りつく勢いで嘆願した。

「…あ、あの」

「どうしました?」

 酒井の母親へ相談の予約の日を話した後、京川の母親がおずおずと声を出した。

「…うちも、相談できますか?塾代とか、教育のためのお金について…」

 勉強をさせるためにお金をつぎ込んだため、このままだと大学の分を確保できないのでは、と不安になっていたのだ。

 専門家から、お金についてのアドバイスがもらえるなら…、とつい京川の母親も声をあげたのだ。

「もちろん、お受けいたしますよ」

 肩に下げていた小さなバッグから取り出したスマホで、スケジュールの確認をする。

「この日の、この時間帯でよろしいでしょうか?」

「ぜひお願いします!」

 京川の母親も、すぐ申し込んだ。これで、お金の悩みから解放される、と言わんばかりの顔で。


 その後、作高の両親は「明日朝一番に学校へ行きます」と宣言した後、そこでいったん話し合いは終了となり、それぞれの家族は家へ帰り始めたのだった。

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