第163話 成績を上げる意外な方法 その⑭

「霧島、学校はどうだ?」

 教壇に立っていた、ベテランの五十代の男性の先生が テストを返しながら結へそう聞いてきた。

「はい、図書室にはたくさんの本がありますので、よく読んでいます」

 テスト用紙を受け取りながら、結はそう答えた。

「そうか、望ヶ丘高校は、県一の図書室があるからな。いろんな本がいっぱいあって、楽しいだろ?」

 先生からの言葉に、結は嬉しそうな顔で「はい」と頷く。

 結のテスト用紙には『百点』と赤いペンで書かれていた。ここでも、結のテストは常に百点だ。

 結の後も、先生は他の生徒達へ必ず声をかける。こうして生徒達と交流しながら、一人ひとりと向き合っていくのが、この塾でのやり方だ。

 いちいち順位を読み上げないのは、このクラスは全員がいつも満点を取るのが当たり前だからだ。もっとも、他のクラスでも、点数や順位が低いからとはいえ、それ

で生徒を貶めることは決してしなかった。

  

 塾が終り、結は一階のロビーの横を歩いていた。

 右手にはこの塾で使う教材が入っている鞄を持っている。今日は月に一度の実力テストが返ってくる日なので、そのテスト用紙も入っていたが。

 塾から支給されたクリアファイルに挟んでおいたので、曲がる心配はない。大き目な手提げ鞄を右手に持ちながら、結は帰ってからのことを考えていた。

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