第115話 傷つける友人、助ける他人 その53

「霧島さん!」

 女生徒が、終野からスマホを奪い取った手の主の名前を呼んだ。

「竹町さん!」

 その女生徒―竹町の方へ、結は走っていく。終野から逃れるために。

「ちょ…っ!?返しなさいよ!!」

 取り返そうとする終野の目に、望んでいたものが入ってきた。

「藍ちゃん!!」

 結と竹町が走っていく先に、杉村が立っていたのだ。

「終野さん!そこで止まってください!接近禁止命令が出ています!」

 振り向きながら、結はそう警告する。弁護士から出ているため、さすがに終野も無視できなかった。

「…ひきょうよっ!!」

 悔しい顔で叫びながらも、終野はその場で立ち止まった。

「藍ちゃん!そいつスマホを盗んだよ!!」

 結達が杉村の傍まで走ってきた後、終野は必死に訴えてきた。

「…終野さん、さっきから見ていたよ。さやちゃんを脅していたところを」

「…えっ!?」

 冷たさの中にわずかな怒りを混ぜ込んだ声で言った杉村を見て、終野は驚く。

「そして、もう全部聞いているよ。終野さんが、さやちゃんを脅してあんな事をやらせた、って!」

 はっきりと、そう言い切った杉村のその言葉に、終野は絶句した。

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