第112話 傷つける友人、助ける他人 その㊿

 竹町の顔は、焦りと不安で青くなっていた。

「さらにもっと前の時間の防犯カメラの映像も見せてもらいました。今日の朝早くに竹町さんが、杉村さんの下駄箱へ手を入れていた場面も映っていました」

「―!!」

 そこまで映っていたと知り、竹町はよろめいた。

「そして今、竹町さんはその袋を回収していました。その様子も申し訳ありませんが、こちら側で録画させていただきました」

 結のスマホの画面が切り替わると、竹町が下駄箱からその袋を取り外していた場面が映っていたのだ。

「…霧島さんは、部活じゃなかったの…?」

「私は、料理部なんです。今日は部活動の日ではないんです」

 結にとって、本当に幸運なことだった。それで、こうして決定的な証拠を手に入れられたのだから。

「その袋をもっとよく調べれば、他にも証拠は出てきます。さらに、あの剥がしたテープもあれば、今言ったトリックが成立できる証拠になります」

 結の推理では、そのテープはまだ竹島が持っているはずだった。ゴミ箱に捨てれば、他の人に見つかってしまい、それがきっかけでバレてしまう危険があったから。

「………」

 竹島は、その場で崩れ落ちた。開いた手には、証拠となる白い紙に包んだ袋があったのだ。


 竹島は、絶望していた。

 きっと、この後杉村へあんな酷い事をした事について責められるから。

 中学三年生の時もそうだった。根も葉もない噂が流れた時に否定しなかったら、悪いことをしたのに反省していない、と周りから非難されたのだ。 

 親にも本当の事が言えず、不登校を選ぶしかなかった。その後、噂は否定されたが、それでも学校へ通えなかったのだ。

 この望ヶ丘高校は、不登校の子でも受け入れてくれる。特別室があったから、もしまた不登校になっても通える。だから、この高校を選んだのだ。

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