第40話 狙われたお嬢様 その㊵
結からの答えに、鳥山は気まずそうに黙ったままだ。
「昼休み、華さんが話していました。鳥山さんのお父さんは上司のパワハラが原因で去年の冬に退職してしまったのです。それから再就職できなくて、家でずっとふさぎ込んでしまっている、と」
そんな父親を支えるために、鳥山はアルバイトを始めた。そのバイト先で華から多額のお礼を貰った時、ふと思い浮かんでしまったのだ。
「華さんが危ない時に助ければ、そのお礼として父親の再就職先を紹介してもらえる、と」
バイトでのお礼を見て、華は過剰に礼をしたがると思ったのだろう。それで危ないところを助ければ、父親の再就職先を紹介してくれるかもしれない、と。
「あのような方法を思いついたのは、華さんを傷つける気はいっさいなかったからです。『華さんが危ないところを助けた』という事実を作ればいいのですから」
確かに華は精神的にダメージを負ったが、体は怪我していない。『上から辞書を落とされたところを助けた』という事実ができればそれでよかったのだ。
「それは成功しましたが、そのトリックに使った下敷きが見つかってしまったら怪しまれます。そのため、鳥山さんは早くその下敷きを回収したかったのです」
しかし華が鳥山を『車で送る』と言い出したため、学校ですぐに回収する事ができなくなってしまったのだ。それでバイト先で降ろしてもらった後に、再び回収に向かうしかなかった。
「ですが、中庭に戻っても下敷きは見当たらなかった。もしかしたら、私が見つけて持っていたのかもしれない、と思い、鳥山さんはさらなる計画をたてました」
「計画?」
まだ反論できない鳥山の代わりに、満がそう聞いてきた。
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