続・保のグルメ乱文乱筆
保
第1話 とろろ万能説
テレビやSNS、グルメ雑誌などをきっかけとし、明太子・松前漬・焼鮭など、いわゆる「ご飯のおトモ」こと「飯(めし)トモ」と呼ばれる輩の存在が広く一般に浸透しつつあり、もうそろそろ広辞苑に載ってもいいっしょ、というぐらいにまで認知度が高まっていることは、賢明な読者諸君にあっては既に常識と呼べる状況かもしれないが、如何お過ごしだろうか(ご無沙汰しておりました)。
そんな飯トモのひとつに「とろろ」がある。山芋をこう、あの、すりこぎ棒みたいなのですりこいた(こんな表現があるかどうかは知らない)のち、それをだし汁で延ばしたり延ばさなかったりし、あとはまぁよろしくやって完成するタイプのアレである。
そんな「とろろ」だが、味のものとして醤油などのほか、わさびを溶いたり、ゆず胡椒を溶いたりしてもうまく、しかもそれを山かけなどの一品料理にアレンジとして施しても、普通にうまい。
そこでおれはふと思った。
もしかすると「とろろ」というのは、他の飯トモと相乗効果を狙えるのではなかろうか、と。
まぐろ・オクラ・たくあん・納豆・キムチなどの食材をそれぞれ統一したサイズに刻み、卵黄・とろろでワーッと混ぜて食べる「ばくだん丼」というレシピがあるが、あれもつなぎとしての「とろろ」が良い仕事をしている一例ではないかと思う。
卵黄だけだとあんまり「まとまる」感じがないが、とろろがあると一気にまとまり具合がよくなる。レシピによってはとろろを省いたものもあるが、おれとしてはやはり「とろろ」をつなぎに使っていきたい。
そんな感じなので、いわゆるアグレッシヴ系の飯トモとして代表的なオイキムチ・カクテキ・わさび漬け・辛子明太子・烏賊の塩辛などを「とろろ」とコラボしてみたのだが、これらは普通にうまく、本来の塩味や辛味が若干だが「とろろ」によって抑えられ、なおかつ「とろろ」のとろみによって飯がドンドン進み、結果としては食べ進めやすすぎて危険極まりないということになった。
おれがもともと「とろろ」を愛好してやまない人間であることを省いても、とろろと「他の飯トモ」の相性はかなり良いといえる。一部の好事家の間では「とろろは麦飯の飯トモであってこそ最強」といった言説もあり、おれも麦飯好きなので全く賛同することしきりだが、それにしても「他の飯トモ」との相性がこれだけいいというのも、なかなか珍しいのではないかと思う。
納豆、とろろ、焼海苔といえば「朝食小鉢御三家」などと表現しても差し支えない程度には高い認知度を誇る「飯トモ」であるが、納豆と焼海苔を混ぜてみると・・・味は悪くないが「まとまり」が微妙である。ところが「納豆+とろろ」は合うし「とろろ+焼海苔(小さく千切る)」も普通に合う。なんなら「納豆ととろろと焼海苔」にしたって違和感がない。どうだろうか。
単体でも味をつけてもうまく、粘り気がよく、滋養強壮にもよい「とろろ」。おれはこの夏、改めて「とろろ万能説」を推していきたい。
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