断章忘却の世界

目覚めた世界

――――――。



――――。



――。



ここは何処だ? 暗くて周りが見えない。



光が遮断したようなこの暗き世界、見えてるのは己の手先。

深い深海に落ちたかのように、気泡―――泡が無数に散り落ちていく演出を奏でる。




確か、あの戦いで俺は―――――。いや、

あれ? そもそも僕は誰だ? 分からない。






吸い込まれていくように、意識も飛んでいく―――――。まるで安らぎの様に、視界はやがて気泡で埋め尽くされた。





――――――。



誰かが遠くで呼んでる。



―――――――ろ



声が少しずつ鮮明に聞こえる。



お―――き――――。



起きろ? それは僕に言ってるのかい?



起きろ!!



「ぶっ!?」



顔にバケツの水を浴びた、周りを見渡すと何処と無く穏やかな街並み。



「目覚めたか兄ちゃん?」

「あ、あぁ」



ここは"リザヴィテール"暗い野にある小さな町。僕が目覚めたのはつい最近の事で、なにか大事なことを忘れてる気がするんだ。



けど、

さっき水をかけたおじさんは、俺が路上で寝ていたかららしい。



身体を起こして腰に剣を備えた、これから何をするのかと。

また薪割りしかないのか、けどあの人達に恩を返したいしね。



あの人達とは、僕を拾ってくれた老人。

息子が戦死したらしいけど、その人と容姿がにてるんだとか。



露店街を、歩き進むがその先には道がない。

暗い野の意味はそのまんまで、夜道を歩くと思えばわかりやすい。かなり暗い。

常に日が当たらない、そんな場所なんだ。



だから、街明かりは魔法。

今は街から東側だけど、こう仕切られた感じ。"環状"みたいに切り抜かれてる。

まるでその先には何もありませんよ的な。因みにここ以外の場所はさほど暗くはない。薄明るい感じだ。



――――っと、そろそろ帰らなきゃ。



僕が住む場所は街から離れて山岳地帯。

足場は悪く斜面で、砂利や岩などが続く。

年寄りが歩くには苦痛である道筋を僕が歩いて行くんだ。



「おばちゃん、これとこれください」

「あいよ、あの爺さんの所の子かい?」

「はい、そうです」

「大変だねぇ、はいこれおまけ」

「ありがとうございます」



おつかいを頼まれていたの思い出したから、露店に売られてる果物を購入した。

片手に皮の袋に買った品を入れて、ゆっくりと西側へと歩いた。




ザッザッザッ――――。




街から離れてから数分歩いた、街の夜景が一望出来る見晴らしがいい場所。

そんな所を横切って、坂道を登り、静けさだけがある山肌にある三合目付近。



もの家の空の民家が、多数あり元は小さな村だったと聞く。ここの村で僕は暮らしている、住民は皆居ない。



老人は、この街の村長だった。

ただ、今は――――怪我をして寝込んでいる。



ベッドの上で、老人は一人寝ていた。



か?」

「うん、さっき帰ったよ」

「すまんな、何から何まで」

「いいんだよ、身分も分からない僕を助けてくれたんだしね」



隣にある木の椅子に僕は座り、テーブルに買った品を置いた。レリックってのは僕の名前。




「レリック。魔法はどうだ?」

「うん、やっぱりダメだった」

「魔力は感じるかのう。なにか抑え込まれてるじゃろうか」

「それってどうゆう事ですか?」

「なぁに稀に、魔力が使えぬ何らかの理由があるのじゃ。レリックは、封じられておるはずじゃ」



こう見えて村長さんは、魔法に関しては顧問するほど得意分野だ。

僕が魔力あっても魔法使えない理由を、ずーっと考えてくれてる。

結果的に、なにかの力が干渉して封じられているって結論になった。



ただ、それを解く場所が場所―――。




「レリック、わしのことはいい。巫女様にあって来なさい」



巫女―――時読みの巫女の事だ。


未来、過去を視る事が出来る巫女で僕の記憶に関する事も分かるだろう。

ここに住んで一ヶ月、知りたいのに知りたくない。―――――ただ、虚しさが襲うんだ。




「場所は山頂、僕だけじゃとても無理だよ」

「じゃろうな、のじゃ」

「え?」

「街で見つけなさい。少なくても、良い話に耳を貸すんじゃない。レリックならすぐ見つかるはつじゃ」

「ですが!」

「わしのことはよい、レリック君にはさ先の未来があるのじゃ。お老いぼれを世話してるだけじゃ――――切り開けんぞ?」

「――――分かりました」




こうして僕の旅が始まろうとしていた。



翌朝、村長に置き手紙を残して街へ降りた。








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