片思いし続けていた幼馴染に告白してみると......
あいくま
序章 告白、そして進展
「すきだ!」
この言葉、半ば勢いで言っちゃった感がある。それなのに、緊張で足ががくがくする。もし断られたらどうしよう。こんなバカみたいだけど楽しい日常が明日から崩れ落ちる。
それでも、もう言っちゃったんだ。後悔しても仕方がない。あとはもう、うまくいくように祈るしかない。
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雲一つない快晴。太陽を隠すものなんて何もない。ほかの人から見たら気持ちのいい朝。俺、透にとっては最悪の朝。朝ご飯を食べてもあかない目をしょぼしょぼさせながら玄関のドアを開ける。
「おはよっ! とおる!」
すぐ向こうから今日の天気に負けないくらい明るい声が聞こえた。目の前には、小学生のころからの親友、桜がいる。たまたま高校が一緒になったこともあり、共に登校している。
「おはよう、桜。今日も朝から元気だね。俺はもう眠くて眠くて......」
「何言ってんの。元気は一日の源だよ? ほら。いくよ!」
「ふぁ~い」
何気ない登校だが、この時間が幸せだった。
はたから見れば女の子と2人っきりでの登校。しかもかわいい。めちゃくちゃ羨ましく見えるのだろう。
だが、桜は俺の彼女ではない。幼なじみで昔からの付き合いだが、そこ止まりだ。進展させたくても、関係が壊れるのが怖くて前に進めない。
そもそもあんなに整ったスタイルの女子と俺が釣り合うわけがない。一生このままなんだ。きっと。こうして別の誰かと付き合うのだと。そんなことを考えながら歩いていると、
「桜。そういえば、英語の課題終わった?」
「もちろん! 終わってるに決まってるじゃない! 透ももちろ......ちょっと待って。こんなこと聞いてくるなんておかしい。あ、もしかして!」
「もちろん何にも手を付けていないさ。あとで桜に借りればいいかって思って......てへっ」
「なんですって! このっ......」
あ、やば。そんなに怒る?困った。すごく困ったぞぉ。どうやって収束させよう......何とか切り返そうとしたが幸いなことに学校が見えてきた。桜と俺は別のクラスなので逃げることができる。
「おっと。学校についたようだぜ。一時停戦しなくちゃな。あとで行くから貸してねー」
「あ!にげた! ずるい! 絶対貸さない! 帰りおぼえてろよー!」
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こうして放課後。桜の姿は見えない。さすがに怒っちゃったかなーとか考えていると
「みつけた! 課題ドロボー!」
桜が走ってこちらに向かってくる。まるで子犬の様だ。とりあえず借りたことは本気では怒ってないようなので一安心。だが、その課題のこともあってかいつもより突進のスピードが速い。ぶつかるギリギリで止まると、
「帰ろ!」
「あ、みつかっちった。かえるか。しょうがない。」
「ねぇ最後なんて言った!?」
ぎくっ。聞こえてたのかよ。言い訳探さないと。
「かわいいさくらさんと帰れてうれしいです(棒)」
棒読みになっちった。でも本心......
「絶対思ってない! どうしたらそんな心のこもってない声が出せるの!」
いやぁ。思ってないことはないんだけどな。でも気づかれないように誤魔化さなくちゃ。
「どうやってって言われても。本心がつい漏れ出ただけですが.....」
「ひどい! ほんとにひどい! 世界ひどい人ランキングトップ100に入りそうなほどひどい!」
なんだそれは。初めて聞いたランキングだぞ。
「それは光栄だ。国語の井森先生よりひどくなければ俺はもうなんでもいい」
「もうっ。むかつく! あれ? 井森先生ってそんなに嫌な先生だっけ? なんか、優しいイメージだけど......」
「なんかな.....女子と男子で態度変えるのむかつくんだよな。無駄にスタイルいいのも......」
急にニマニマしながらこちらを見てくる。なにをする気だ。
「あ、とおる。もしかして、やきもちぃ? めっずらし!」
図星とまでは行かないが、的は射ていてすぐ否定できない。顔が熱くなる。悟られないよう必死に否定する。
「ち、違うし! 羨ましくなんか......そ、それに! ついこないだ結婚したってのに生徒に声かけるなんておかしいだろ!」
「顔赤くなってる! 困ってるとおるかわいいー」
「かわいいとか言うな!」
「それでぇ~? とおるは女の子ともっと話したいのかぁ。女子の友達少ないもんね。いや、もっと踏み込んだところかぁ。彼女欲しいのか!」
欲しいさ! でもその気持ちは伝えられないんだよ!
「いやっちがっ......」
「図星だ!」
「違うってば!」
「とおるって今、気になる子いないの? 隣のクラスの愛梨さんとかは? きれいだし人気あるから無理かぁ。内気で奥手だもんね。コミ障発動しちゃうもんね!」
「うるせぇ、余計なお世話だ。話したこともない人にいきなり好きですなんて言えるわけないだろ!」
「そこが内気って言われる原因でしょ! とおるの知り合いの女の子だったら......」
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「ほんとに誰もいないの~。気になってる人すらも?」
「そんなのいないっていってるだろ。そもそも何でこんな話に......」
そろそろこんな話も終わらせたい。何より俺のメンタルがもう持たない。誰かいないかじゃなくて、目の前にいるんですけど。それ言えたら苦労しないしヤキモチなんて焼かないんですけど。体のほてりが取れない。どうしてくれるのこの気持ち。なんてことを考えていると、思いもしない言葉で心を刺される。
「あ、わたしでもいいよ! かわいいかわいいわたしがとおるの彼女になってあげようか?」
この関係。前々から望んでいた事ではあった。だが、こんな展開で付き合うなんて嫌だった。なぜかは分からないがプライドが許さなかった。好きなんだから自分から告白したかった。
「......やだ」
「え?」
「こんなの、いやだ」
「や、やだって。そんなこと言われるとさすがにわたしも傷つくんだけど......」
「そういう意味のやだじゃない!」
違う。そうじゃないんだ。別の言葉に言い換えようとする。
「それじゃあ、どういう......」
「こんな形で桜と付き合うのは嫌なんだ!」
「えっ」
「いや、その。なんというか、その......」
向こうも何かを察したようだ。もう後には戻れない。身を桜の方に向け、かしこまったような姿勢になる。少し驚いた表情をしている。ちびりそうだがここで引いてはダメだ。今まで伝えることのできなかった思いとともに声に乗せる。
「だからその、俺と付き合ってほしいっていうか。なんというか。あぁ、もう上手く言えない! 好きだ! 付き合ってほしい!」
「......」
つかの間の静寂。この時間がとても怖い。顔から感情を読み取ろうにもよくわからない。吸おうとした空気が喉に引っかかる。
「......っ」
静寂を破るように、桜が口を開く。
「変わった告白だねぇ。とおるらしいけど。」
それはそれはどっち? OK? NO? どっちなんだよぉぉ!
「それで......返事は......」
顔を赤らめながら、いつもの明るい顔で、
「はい。お願いします!」
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