09話.[内側は違かった]
四月になった。
とはいえ、まだ春休みだから登校日とはならない。
でも、三年になるわけだから去年や一昨年とはまた内側は違かった。
「お母さんは明るくていいわね」
「昴君のお母さんは中学のときからずっとそうなんですよ」
中学のときだけではない、母はずっと昔からあんな感じだ。
だからこそ不安定にならずに父もいられていると思う。
息子相手についつい惚気けてしまうのもそういう変わらないところからきているのではないだろうか。
「伊吹さんは知っているのね」
「毎回応援に行っていましたからね、もちろん一番は俊樹君の応援でしたけど」
「塗木君は面白いことをする子ね、けれどあなたは不安ではないの?」
「学校に行ったらいないというのは気になりますけど、私の俊樹君への気持ちは本物ですから」
もう少しで野郎組も揃うから全く問題ない。
乗っ取られているとかそういうことでもないため、堂々と存在していればいい。
だがまあ、菓子を買いに行ったりするのは俺に任せてほしかった。
このふたりの相手をひとりですることになるぐらいならその方がマシだ。
あと地味にこうして仲良くされているのが気になる。
いや、違う場所なら好きにしてくれればいいが、ここを集会場所にするのはやめてほしいというところだ。
「待たせたな」
「それはいいですけどなんで三人で行ったんです?」
「壮士君と話したいことがあった」
「そうですか」
それなら女子の相手は壮士と力先輩に、塗木の相手でもさせてもらうかと行動しようとしたら駄目になった。
指示待ち人間の方がいいな、大体は逆の結果になるからそういうことになる。
で、結果的に俺、先輩、力先輩と壮士、恋人組になったという……。
「変わらないままでいてちょうだい」
「俺か? 俺ならずっとこのままだ」
「でも、無理はしないこと、それだけは守って」
「動かなければならないとき以外はそうするよ」
ふたりでいるところをあれからあまり見られていなかったからあんなことを言っておいてあれだが今日のこれはよかったのかもしれない。
「初絵こそ無理はしないでくれ」
「大丈夫よ、友達も同じ大学に通うことになっているから」
「そうか、それなら安心だ」
友達がいてくれるというのは確かに心強いな。
残念だがこちらの場合はひとりで頑張っていかなければならないわけだが、まあ、わがままは言っていられない。
「昴君もよ?」
「はい」
「昴君なら大丈夫だ、無理をしてしまっても止めてくれる友がいる」
「ふふ、そうね」
ちなみにその友は積極的に恋人達の邪魔をしているが。
まあ、今回も楽しそうならそれでいいかと終わらせておいた。
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