宇宙人の先輩
本田そこ
0.告白、喫茶店にて
「実は、私は宇宙人なんだ」
放課後、天文同好会の溜まり場である町外れの喫茶店。
向かいのソファに座った会長が仰々しい語り口調でそう告げた。
背筋を伸ばし、こちらをじっと見据えて、僕に届くかどうかの小さな声で。
西日の差し込む窓際の席、会長のコントラストが強められている。
いつもと違う場所に陣取ったのはこの演出のためのようだ。
「いや、宇宙人という言葉では君も含めこの地球に住む人間も該当してしまうし、正確性に欠ける表現だな。もっとふさわしい言い方にしよう」
いつもの猫背に戻り、会長は顎に手を当て考える仕草をしている。
数秒後、先ほどと同じ姿勢に戻してから会長は口を開く。
「実は、私は地球の外からやってきたんだ」
メロンソーダの氷が溶けて、コップにぶつかる軽い音。
会長の右手がピクリと動いたが、押し止めたようだ。視線がちらりとメロンソーダに向けられている。
僕が返事をするまでそのままのつもりか?
「衝撃で言葉も出ない、ということか」
「また変なこと言い出したなぁと思って」
「また?普段からおかしなことを言っているとでも?」
僕の返事が気に食わなかったのか、それとも日差しが眩しいのか、会長は眉間に皺を寄せてこちらを睨みつけている。
「ははっ」
僕は答えずにコーヒーを一口啜った。
会長もメロンソーダをゴクリと一杯。
ただの戯言だと聞き流したいところだが、戯言だとしてもそれだけで終わらないのがこの人である。
なるべく何もせず、穏やかにやり過ごしたい。叶わぬ願いだろうけれど。
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