日菜の誤算

「……ちゃん…こうちゃん!!」


「えっ?日菜姉…?」


「大丈夫?ぼーとして、

 何度よんでも返事しないから」


「あっ大丈夫ごめん」


孝介は、日菜姉の言葉で

ぼーとしていた事に気づく。


「謝る必要は、ないよ何かわからない事が

 あったら聞いてね?」


「うん」


現在孝介は、生徒会の仕事の為

生徒会室におり、

他の生徒会役員は、別件で席を離れている為

生徒会室の中は、現在日菜姉と二人っきりの

状態だ。


(ふぅ今は、しっかり仕事しないとな)


孝介は、気持ちを入れ替え

仕事に取り掛かる。


「……はぁ…」


「………」


だが気づけばまた考え始め、

孝介は、ため息をついてしまうそれは、

秀助に言われた。

と言うアドバイスを自分なりに考えてしまう為だ。


俺は、姉さんの事どう思ってるんだろう…

そんな事を考えていると


ギュッと

突然孝介は、後ろから抱きしめられる。

孝介は、驚き抱きしめた相手を見ると

「えっ…日菜姉!?」


日菜姉が抱きしめて来てるのがわかった。


「こうちゃん…

 鈴の事で悩んでるんでしょ?」


孝介は、図星で言葉が出ない。


「…告白したんだよね?

 それで…何で悩んでいるの?」


日菜姉は、優しく声を問いかけてくる。

それに対して何で告白したの知ってるの?

と聞くと


「何年、こうちゃんのそばにいると

 思ってるの?

 態度でわかるよそれぐらい…」


と日菜姉は、答える。

(そっか…そんなに態度に出てたのか…

 確かに秀助にも、バレてたしな…)


孝介は、日菜に話していいのか考えたが

秀助との会話で有益なアドバイスを

貰ったことを思い出しポツポツと話し始めた。


「…うん確かに鈴姉さんに、

 告白した…よ」


「ッ…そう……それで…その」


「…もう少し待ってって言われてる」


「え…?それって、今の今まで返事を

 …そのもらってないって事?」


「うん」


日菜姉は、離れると考えこんでしまった。

その顔は、困惑でいっぱいだった。


「……そんな…予想外だわ」


「え?」

日菜姉が何か呟いた

だけど孝介には、上手く聞き取れなかった。

日菜姉は、ポツポツと孝介に聞こえるように

話し出した。


「…つまり、

 鈴から返事が来なくて悩んでいたのね」


そう日菜姉は、聞いてくる。

確かに、それが最大の悩みであるが

今、悩んでいるのは…


「確かにそれを最近は、

 ずっと悩んでいたけど今は、

 別の事を悩んでたんだ」


「別の事?」


「うん、実は友達に相談したんだよ

 遠回しにだけど、それで言われたんだ

 自分の本当の気持ちを見つけろって、

 だから…」


「だめ!!!」


急に日菜姉が大声を出した。


「…だめだよこうちゃん、

 それはだめ…だめなんだから!!」

 

日菜姉は、悲しそうな顔でこちらを見る。


何でそんな顔でこちらを見るのか孝介には

わからない。


「何でだめなの?」


「…だって、今更考えたって無駄というか

 答えが出てるじゃない、

 こうちゃんは、何で告白したの?」


「それは…」


「鈴を…姉と離れたくなかったからでしょ

 それ以上でもそれ以下でもない」


確かにそう言う考えで告白した

…でも今は、本当にそうなのか

他に何かあるんじゃないかと考える。


そんな様子を見た日菜姉は、

より一層強い言葉で、


「それに、そんなに呑気にしてていいの?

 もたもたしてると鈴がこうちゃんから、

 離れちゃうよ」


その言葉は、孝介の心に重くのしかかった。


「こうちゃんも知ってると思うけど

 鈴は、人気者だよ?

 つい先日もイケメンの先輩に

 告白されてたもの」


「そっそうなんだ」

孝介は、胸が苦しくなる。


「まぁ鈴は、断ったらしいけど

 こんな事は、これからも続くし

 告白を待たせてるってことは…」


日菜姉は、一呼吸入れて、

「鈴も決めかねてるって事でしょ

 このまま、こうちゃんのそばに居るのかを

 だって、居るつもりなら

 告白を受けるなり拒否するはずだから」


日菜姉の言葉を聞き孝介は、考えこんで

しまった。


(そうか、確かに側に居るつもりなら、

 受け入れるなり断るなりするのか…)


「だからね、こうちゃん

 ちゃんと返事を聞かないとわかった?」


「あ…うん」


孝介の返事を聞いた日菜は、

これから用事があるからと

生徒会室を出て行こうとする。


その背中に孝介は、

日菜姉と呼びかけるが

日菜の顔を見て、

何も言えなくなってしまった。


何故なら日菜の顔は、

余りにも悲しげで儚げだったから…



 

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