第3話 長い顔の友人へ。

私は殺人が重大なこととは感じない。

君は「そうか」と淡々と返事をするだろう。

その淡々としたものが殺人だ。

君のその長い顔と表情がない顔で淡々とする行為が、

殺人である。


殺人は静かな行為だ。何をそんなに驚くことがあるのだろう。

人々はサワぎすぎだ。うるさくて仕方がない。


子が親を殺そうが、親が子を殺そうが、

年寄、女性、男性、外国人、

その他「人」と呼ばれる物を殺したからと言って

何をサワぐことがあるのか。

私は理解できない。


長い顔の私の友人、私が君を、

君が私を殺すのだってそんな大層なことではない。

連続、快楽殺人というものが、世間を喜ばせているが、

あれは殺人ではない。

相手が苦しんでいるのを見て、興奮するなんて、

クズだ。人間ではない。

殺人に快楽を求めてはいけない。

殺しても何もない。それが殺人だ。


そうだ殺人は無意味だ。しかし人はそれを行う。

これこそ人が生まれた理由なのかと

感動することがある。

無意味なものに意味を見出す。人間の素晴らしさ!


君も私と同じ人間だ。戦争、迫害、死刑、

これらは殺人に「意味」があるから

皆恐れるのだろう。


殺人を恐れるなんて、無意味だ。

ケイサツ、そんなもの必要ない。

これがなければ真の平和が来るのではと、

私は思う。

殺人よ、無意味であれ!


これから殺人をしようと思う者は、

実行しよう。

そしてこれから殺されそうになっている者は、

相手を早く殺そう。

殺人はフェアでなければならない。


「殺そう」と思ったらすぐ殺さなければ。


長い顔の友人、私はとてもさびしい。

君にこうやって手紙を書けなくなるのが。

私は感情が高まると、筆跡がぐちゃぐちゃになる。

私は君の淡々として、きれいな字が好きだ。

面会に来てくれる時の表情のない。君の顔。


君が殺人をすれば、きっと世間も驚くし、私も認める。

その顔で、淡々とナイフを刺す姿、ハンマーで頭を割る姿。


君は私ができなかった、真の殺人ができるのではないか。

私も淡々と殺人をするほうだが、

クセがある顔で生まれたことが残念だ。


殺人は淡々と簡潔にやる私だが、

自分のこととなると長々と書くとは、滑稽だなっとおもってくれ。

長かったが、君と話ができてよかった。

ありがとう。それじゃさようなら。


○○年○○月23日。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る