第43話 理知と鮮やかさを結い加える⑪
今回の一件に関してはオレの予想、もとい推理が優れていたというよりは、要約すると単純に扇動するだけで役目が終わっていた二人が手こずり、適当にでっち上げた理由の回収が出来ず、代弁してくれた閑谷の追求で墓穴を掘り続けたせいだ。結果としてたった三十分程度の成り行きで幾つもの齟齬を生み出してしまい、第一発見者として、被害者としての立場を自ら崩壊させたと言っていい。
特に往来していた地元民を懐疑的にさせ、静観しながらも閑谷の味方をする雰囲気になっていたのも、二人を焦らせた原因かもしれない。そして大衆が閑谷の味方になること即ち、消去法でほとんど声を発していないオレの信憑性も高くなる。本来なら沈黙は肯定と受け取られがちで悪手になりかねないけど、対抗相手が勝手に首を絞めているときに限り、皮肉にだが逆に作用する。
ついにはどちらの主張も滅茶苦茶だ。途中で閑谷による、オレへの容疑から退く提案に乗っておけばまだ良かったんだろうが……なかなか一度定めたターゲットから変更は出来ないものなのかもしれない。
でももう流石に老婆も男性も詰んでいるだろう。仮に推理通り親子じゃなかったとしても、本物の探偵の正式な調査があれば、なんらかの関係性は必ず浮上する。もしかしたら高校生の戯言だと全く取り合わない人物かもしれないが、この衆目に晒された諍いが調査を後押しすると思う。
あと余談だけど、閑谷の親戚の探偵でお粗末な対応を行うとは考え難い。それに閑谷がここに居る理由でもある、人気アイドルがこの地元のショッピングモールに出没する情報を掴んでいたのも、
周囲の人通りを見るに、誰もそんな詳細を握った様子はないし、インターネットやSNSで開示されていたなら今頃、他方からもっと人が流れても良さげだ。となるとデマを掴まされた場合も考え得るけど、それならオレに対し内緒にして欲しいと前置きするのはおかしく映る。ガセネタかもしれないけど、と謙遜の前置きを挟むはずだ。つまり余程の確信がないと内緒にするように頼むことはないんじゃないかと考える。しかもどこにも出回っていないかもしれない情報網からとなると、親戚の探偵から伝え聴いた確率は十分にある。
ただそんなことよりも。今は糾弾した老婆と男性が予定通り劣勢に立たせた最中、もうオレからの指示も大体使い果たした閑谷がどう最後の締めを振る舞うか……いや、これまでの対応から涼やかで和やかな想像は付く。
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