第28話 作戦開始
敵部隊の動きが止まった。全員が銃を構え、奇襲に備えている。
「動きが変わった?まさかバレた?」
私は走りながら敵の異変を感じた。
「紅花、どうした?」
飛影が私の言葉を聞いて言った。
「敵が陣形を変えたの。まだ向こうからは見えないはずだし、私の目でやつらの死角から近づいているから見つかってないはずなのに」
私は視えている状況を飛影に話した。
「敵にも索敵能力に優れたやつがいるのか。向こうから攻めてこないのを見ると、こっちの数的不利は見抜かれてる可能性が高いな。山の中で部隊をばらけさせるより、固まって迎え撃つつもりのようだな」
飛影は冷静に状況を分析する。
「まぁいい。気付かれたのは想定外だがやることは変わらない」
飛影は私たちに視線を移す。
「最初の作戦通り紅花と楓が前線で俺と空は援護だ。このメンツなら小隊一つぐらい問題は無い。ただ幹部は気をつけろ。こっちと同じように特殊な能力を持ってるかもしれない」
「分かった」
「承知」
私と楓はスピードを上げた。
敵部隊が肉眼で見える位置まで来た。
「それじゃ」
私が楓に目線を移した瞬間、楓の背後から男が飛び出してきた。
「食いごたえのありそうな肉だな!!!」
両手の指にナイフを挟んで獣の爪のようにしている。
男は楓の頭の上から手を振り下ろす。
楓が回避行動をとると同時に、私は持っていた銃でその爪を受け止めた。
「女の肉は柔らかくていいんだよなぁ」
男は笑みを浮かべながら右手の振り下ろす力を強める。
「紅花殿!」
楓は私に声をかける。
「行って!こいつとあと一人、白髪の男がこの部隊の指揮官のはず。あなたは白髪の男をお願い!」
私がそう言うと楓は
「承知した」
と言って山を下りて行った。
男は鋭い爪で私を銃ごと切り裂こうとした。
「なぁ……お前も、さっきのやつも……いい匂いしてんなぁ。さっさと食わせろよぉ!!」
男は振り下ろす手に力を籠める。
私は爪を抑えていた銃の力を緩めて、その勢いで前方に一回転して敵の脳天にかかとで蹴りを浴びせた。
「ぐっ……」
男はうめき声をあげて後ろによろけたが倒れなかった。
「ハハハ、いいじゃねぇか!どっちが狩るか勝負だ!」
男は笑みを浮かべながら大声で言った。
私は男を睨みつけ、怒りをあらわにしながら言葉を返す。
「これは狩りじゃない……殺し合いよ」
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