第18話 決意の月夜

 そこからはお祭り騒ぎだった。酒を飲んで肉を食い、今日の武勇伝を語る。


「紅花さん!飲んでますか?」


 鏡花の父親はお酒が入っていてだいぶ酔っぱらっていた。


「お父さん!お姉ちゃんが嫌がってるよ!」


 鏡花が父親をたしなめる。その光景はとても微笑ましく、平和だった。


 翌日、村の人たちは戦闘の疲労と酒の飲み過ぎでぐっすり眠っていた。


 私が起きると飛影が村の外へ歩いていくのが見えた。私は急いで追いかけた。


「飛影、どこ行くの?」


 飛影は立ち止まって振り向いた。


「紅花か、ちょっと森の空気を吸いにな。お前も行くか?」


 飛影は森を指さしながら言った。私は飛影と一緒に森へ向かった。


 少し歩いて村が見えなくなると飛影は口を開いた。


「紅花……お前これからどうするんだ」


 真面目な顔をして飛影は言った。私は少し考えて言った。


「黒の月を壊滅させる。蒼月と紅月のために。二人の死を……仲間の死を絶対に無駄にはしない」


 そう言い切った私の目を飛影はまっすぐに見つめる。


「よかったぜ……その言葉が聞けて」


 飛影はほっとしたような顔を見せた。


「俺も蒼月と紅月、他にも死んでいった仲間たちは大切な家族だったんだ。お前がやつらを本気で止める気なら俺はお前と一緒に戦う」


 言葉を続ける飛影は覚悟を決めていた。


「だから紅花……お前は鳳仙花の隊長として俺たちを導いてくれ」


 飛影にそう言われて私は覚悟を決めた。


 蒼月が託した想いと紅月が私に示してくれた進むべき道を胸にして、青々と葉が生い茂る森の中で私は静かに宣言した。


「えぇ……分かったわ。私が鳳仙花の隊長としてやつらを……黒の月を止める」

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