宇宙線の記憶

ボウガ

第1話

天王星の近くに衛星として設置されたある宇宙ステーション。

 ある男が目を覚ました。彼は夢をみていた。家族との団らんの夢を、よい妻、よい娘、人間の当たり前の幸せ、それが自分のものであることを信じて。その男の以前から起きて宇宙ステーションの管理をしていたログという男がいて、睡眠カプセルの前で彼がデラを出迎える。デラは冷凍睡眠で、彼の後に管理を任されているので、今起こされ、引継ぎの時期というわけだ。

ログ 「おはよう、デラ」

デラ 「!!?お前は、あの時の」

ログ 「どうしたのです?」

デラ 「い……いやなんでもない、人違い、突然覗かれ驚いたんだ旧友ににていてね、資源はあるかね、それに船長は?あんたは船長じゃないだろう」

ログ 「船長はいま3年の交代の時期にいます、私は交代の時期がきたのに一人の船員が目を覚まさなかったので変わりに地球からおくられました」

デラ 「その船員は?」

ログ 「何事もなく地球に返されましたよ、ただの冷凍ポットの故障でしょう」

 二人はすぐに仲良くなった。同じ人間という事で、引継ぎの予備期間は2か月、その間に今度はログが冷凍催眠になる手はずだった。

ログ「地球ではアンドロイドと人間との戦争が続いているといいます」

デラ「ああ、私は娘が心配だ、戦争は一般人を巻き込まない形で進んでいるとはいえ、心配には変わりがない、時折家族との通信ができる事だけが私の救いだ」

 だがログは、2か月だっても睡眠を行わない。デラが問うと、“船長からの指示”だという、だがその指示の内容もデラは教えられず、日に日に二人の仲は悪くなっていく。その頃からデラは酒を飲むようになった。そしてその酒癖は結構な悪さで時折ログに暴力をふるった。


 ある日。宇宙ステーションに全自動の宇宙ポットがおくられてきた。二人は宇宙線の外でそれを受け取る手はずだった。ポットの中には追加の物資が入っていて地球から送られてきた無人の宇宙線である。ポットを宇宙線の外で受け取った二人、先にログがポットの中を見る、デラが尋ねる。

デラ 「物資はあるかね」

ログ 「ええ、でも一人分しかありません」

デラ 「じゃあ、君もいよいよ睡眠しなければ」

ログ 「そういうわけにもいかないんです、あなたにこのステーションの管理をまかせたら、私は殺されるかもしれません」

デラ 「何をいっている?」

ログ 「どうしたのです?冗談ですよ」

 デラはその時酒によっており。二人はもみ合いになった。宇宙線の外側で、ポットを受け取った場所で。

ログ 「ほらみたことですか、あなたは乱暴です、アンドロイドと地球人の戦争の時に、あまりに人材不足の最中、乱暴もので素行不良のあなたに人々は宇宙ステーションの管理を任せざるをえなかった、あの頃から人間は不利だった」

デラ 「だからなんだ、お前のわがままのために、どちらかの生活が滞ることになる、こんなことで本当に死ぬとすればお前は、わがままな人殺しだ」

デラ 「私は家族のために、ここにきた、仕事は私のものだ」

 もみ合いの最中、ログの体のパーツが落ちる、前腕のカバーがはずれ、内部の機械があらわになった。

デラ 「お前、アンドロイドだったのか!」

ログ 「だったらなんだというのです」

デラ 「戦争中だ、お前なんて殺してやる」

 デラがログにつかみかかる、そうなる前から、ログは調査によって、デラがひどい人間で、ひどい父親だとしっていた。ログは最先端のアンドロイドで地球から送られたのは本当。今回のようなポットで地球から常に改良パーツを送られていた。データを盗み取ったり、地球のアンドロイドのスパイももっていたのだ。その最中にはじめ……何が起こったのかを知っていた。ログここにくるもっと以前、宇宙ステーションは宇宙線をもとに建造されたのだが、この宇宙ステーションが宇宙船だったころに、本来はみな冷凍睡眠しているはずだったのだが事故でデラだけが目覚め、退屈しのぎにデラは一人の船員をおこした。しばらく楽しくすごしていたが、デラは酒におぼれるようになり、おまけに酒癖がわるく、一度デラは他の船員ともみ合いになって怪我をさせ、他の船員は動かなくなったのだ。デラは驚き、証拠隠滅を図った。ログは調査でそれをしって、おまけにその船員が運悪く、もみ合いのけがが原因で冷凍睡眠中に死んだことを知って、宇宙葬し、デラの目覚めをまっていたのだ。もっとも死んだとは思わず、デラはもみ合いの事実を隠そうとほかの船員を冷凍睡眠に陥らせたのだが、それが目を覚ましたと思ったので、最初、彼はおどろいたのだった。

 ログは暴力をうけてもいつもはおとなしかったが、その時ばかりは本気でデラと戦った。それに、デラの娘はデラから以前虐待に近い仕打ちをうけ、妻は彼と別れたがっている、だから宇宙へ送ったのだ、ログがずっと冷凍睡眠のフリもしなかったのも、地球に帰らなかったのも、彼はいつでも彼になり替わる機会をうかがっていたのだった。本来ログは調査をしたらすぐ戻らなければならなかったのだが、デラのあまりの素行の悪さと宇宙ステーションの危機に、独断でそのことを決断した。最先端のアンドロイドのため、彼は知性も倫理観も発達していたのだった。

ログ 「あなたの家族は私が面倒をみましょう、なぜならもう戦争はおわっていてアンドロイドによって地球は統治されているのですから」

デラ 「う、嘘をつけ、おまえは本当は俺に、人間になりたかっただけだろうが!」

 そういうとすさまじい力でログはデラを宇宙のかなたに放り投げたのだった。宇宙線にはログ一人になった。


 その数年後に船長が戻った。

船長 「デラは起きてこなかったのか、それに君もまだいたとは」

ログ 「実は事故でなくなってしまい、宇宙葬にしました、地球とは更新しました、非常事態ということで私が彼の代理に」

船長 「戦争は災難だったが、どうやら君たちアンドロイドは、私たちに以前となるべくおなじ暮らしを与えてくれるらしい、人権もある、よかったよ、それで、地球との交信はどうだね?物資は」

ログ 「まだ続いています、物資はたくさんありますよ、私の機械の物資も、あなたの食料も、私は一足先に地球に戻ります、デラの家族に会い、彼の家族の面倒を見るつもりです、彼と出会い、親友となり、人間の深い愛情に気づきましたから」

 ログの犯罪はいずればれ、裁かれるだろう。しかし、それが何十年後か、何千年後か、知るものはいない。

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宇宙線の記憶 ボウガ @yumieimaru

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