花園さんと挨拶
「「おはようございまーす!!」」
「…おはようございます」
「あれ遅いよ幸紀くん」
校門前で登校する生徒達に挨拶している
女先輩がこちらに気づき声をかけてくる。
「すいません朝当番だったので
遅れました。」
「畜産?」
「はい畜産です」
「牛の様子どうだった?
餌ちゃんと食べてた?」
「はい食べてましたよ
あっでも奥の一頭だけちょっと食いつきが悪かったかもしれません」
「奥のね…それ先生に言った?」
「はい一応」
「それで?」
「一応確認してみると言ってました。」
「よし100点よ、幸紀くん」
そう言って先輩が頭を撫でてくる。
「ちょっとやめてください」
幸紀は、頭を振り距離をとる。
「何?照れちゃって」
「照れてませんよ…会長」
会長と呼ばれた先輩は、
ニヤリと笑う。
「そう言うなよ、君は褒められる事をしたんだよ農業クラブ副会長」
そう幸紀は、農業学科を統括する
生徒会の様な組織である農業クラブの
副会長に先日選挙で選ばれる事になった。
まぁクラスで一人は選挙に出ないといけなくてそれで俺が選ばれ受かっちゃった感じだが
「ただ気づいた事を連絡しただけですよ」
「それが偉いんだよ、ほとんどの生徒は、
牛とかの様子を見ずに、
餌だけやってお仕舞いだからね
畜産専攻として助かるのよ君の様な生徒は」
会長は、そう言ってしみじみと頷く。
「やっぱり命を預かってるんだから
…って、こんな所で話す内容じゃないわね
とりあえず報告してくれてありがとう」
「いえ…良い話を聞きました」
「そう?…さっとりあえず挨拶運動に戻りましょ」
会長は、照れながら挨拶運動に戻っていく。
「畜産専攻か…いいな」
「幸紀くん何してるの」
「今行きます!!」
幸紀は、そう言って会長の隣に向かい
挨拶運動に参加する。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「おはようございます…会長」
「おはようございます…何?」
幸紀は、登校する生徒達に挨拶を交わしながら疑問に感じる事を会長にぶつけてみる。
「いや何で農業クラブ役員て
毎朝挨拶運動してるんですか?」
「えっ?今更?」
「はい…すいません」
「いや質問してくれてよかったわ
それで何で毎朝してるのかよね」
「はい」
「それは…わからないわ」
「わからないんですか!?」
「うんこの活動は、代々伝わってきたもので
何で始められたのかわからないの」
「そっそうなんですか…」
「まぁある噂は、伝わってるけどね」
「噂?」
会長がフッと笑った後に言葉を紡ぐ。
「ええ、何故農業クラブが
挨拶運動を始めたのか
それは…好きな人に振り向いて欲しかったから」
「好きな人に振り向いて欲しかった…?」
幸紀の頭に彼女の姿が浮かぶ。
「まぁ噂よ、好きな人と一言でも
言葉を交わしたかったとか…
好きな人と何かを一緒にしたかったとか」
「はぁそんな噂が」
「うん、しかもこれがあながち
馬鹿に出来なくて、実際挨拶運動していた
先輩達みんな彼氏彼女が出来たらしいの」
「それは……嘘でしょ」
「いやほんとよ!」
「だってそれだったら会長もッ」
ガシッギリギリギリ
会長から繰り出された手が俺の頭を掴み
締め付ける。
「何…何が言いたいの?」
「いえ!!ただ会長ほどの美人なら
言いよる男が多すぎて
逆に選べないんだろうな…って」
「そう…つまり私は、決断力がなくて
節操のない人間と言うことね」
「なっ!?ッ痛い痛い痛い
そんなこと言ってませんよ!!」
「ふん…まぁいいわ」
会長が手を俺の頭から手を放す。
しかしどこからあの力が出てるのだろう。
ん?なんだ?
俺から離れた会長が何かを見つけてニヤリと笑う。
「良いタイミング100点よ…ほら挨拶しなさい
片思いの彼女に」
そう言って視線の先にいたのは、
少し眠そうにしながら歩く花園さんだった。
「えっ…なっ何で」
「そんなのは後でいいから
とりあえず挨拶しなさい」
幸紀は、会長の方を見て
何で自分の好きな人を知っているのか
聞きたかったが誤魔化され俺の背中を押される。
(絶対後で問いただす)
「おはようございます。花園さん」
「おはよう…朝からどうしたの?」
「えっと農業クラブで
挨拶運動をしてまして」
「あっそうなんだね…大変だね」
「まぁ副会長ですし」
「えっ?副会長になったの?」
あっそうか花園さんは、
普通科だから知らないのか。
「まぁね色々あって」
「…そうなんだ、
それじゃこれから忙しくなるんだね」
「うーんそうなるかも知れない」
「そう……だったらわかったわ
私一人でも大丈夫だから」
「えっそれは、どう言う」
「だって大変でしょ農業クラブ?の
仕事もあって図書委員の当番をするのは、
…だから大丈夫元々柿崎くんが
来る前は、いつも一人だったから」
えっつまり花園さんは、
俺に図書委員の仕事をしなくていいって言ってるのか?
…好意で言ってるかも知れないが冗談じゃない。
「いえ行きますよ必ず」
「…でも忙しい」
「忙しいとか関係ありません
俺は、あの空間…いえ、花園さんあなたと
いるのが楽しいいんです。
もし農業クラブがそれを邪魔するなら
俺は、…農業クラブを辞めます!!」
「ちょっまてぃ!!」
パシンと今まで話しを聞いていた会長が
俺の頭を叩きながら話に入ってきた。
「何ですか?会長」
「いや何ですかって君ね。
極端すぎ途中までは、へぇカッコよって
思ってたけど」
「…でも」
「でもじゃない、ごめんなさいね
会話に入っちゃって」
「へぅ……いえ」
「あらあらあら」
会長が花園の様子を見て何かに気づき
側に近づき何かを呟く。
「!?、いえ……はい」
「花園さん?」
「ふぇ!?なっなんでもないよ!!」
花園さんは、顔を真っ赤にして何かを誤魔化そうとしていた。
「…会長、花園さんに何を言ったんですか?」
「ちょっとね、でも100点よ花園ちゃん」
そう言って、花園さんの頭をなでる。
…はぁ?何やってんだそこ変われ!!
さっきまで尊敬していた会長を
嫌いになりそうだ。
「ほらそんな怖い顔しないの
彼女が怖がるわよ」
「……まだ……じゃ」
花園さんが何か言っているが聞こえない。
「ふふまぁいいわ、
それより幸紀くん安心していいわよ
農業クラブは、そんなに忙しくなることはないから」
「そうなんですか?」
「えぇ…ってあらいけない
もうこんな時間…さっ挨拶運動は、
おしまい教室に行きましょう」
確かに周りを見てみると登校する人の数も少なくなってきた。
「えっはいって花園さん!?」
「………図書室で」と一言言った後
一人先に花園さんは、走って行ってしまった。
それをただ見送る事しか出来なかった。
「花園さん…」
「ふふ青春ね…100点よ♪」
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