第三話 彼女と本と日常と
ガヤガヤ
「それで?」
「…何が?」
昼休みの事一緒に昼飯を食べていた
賢治が突然話題を振ってきた。
「何がって図書室の天使ちゃんのことだよ」
「何だそれ?」
「えっと花園さんだっけ
お前にとっては、天使だろ」
「は?神だろ」
「斜め上を行きやがった…」
賢治が頭を抱える。
何かおかしなこと言っただろうか?
クスクスと隣では、いつものごとく
一色姉妹がこちらの様子を見てくすくすと笑っている。
「ハァ…まぁいいそれより
何か進展あったか?」
「進展って言ってもな…」
「連絡先交換とか?」
「そっそんなこと出来るわけないだろ!!」
「いやしろよ…そこは…」
「幸紀っちにそんな勇気ある訳ないじゃん」
「そうそう、クスクス」
「うっ…でも会話してるし」
「当番の時だけな
それで当番はどんぐらいあるんだ?」
「……週……」
「えっ何だって」
「…週一」
「……ハァ…」
賢治が呆れた様子でため息を吐く。
「うっ…だってしょうがないじゃないか」
「じゃ諦めるか?」
「諦めたくない」
「…だよな」
「ああだから…」
ガタッと席をたつ。
「おっおい?」
「…だから…今から会いに行く!!」
そう言って扉に向かう。
「ちょい待て!!」
ガシッと賢治が捕まえてくる。
「邪魔するな賢治」
「いやいやいや待て!落ち着けって、
お前会いに行くのは、良いとして
彼女になんて言うんだよ」
「君に会いたくて来たって」
「やめろ!!そんな事言って許されるのは、
イケメンだけだぞ」
幸紀と賢治が押し問答をしているのを見て
一色姉妹がクスクス笑う。
賢治は、笑っている姉妹に向かって、
「いや笑ってないで止めてくれ」
「えっでも面白そうじゃん」
「ね〜」
「いやお前らな!!」
「あっ怒った」
「もう仕方ないな〜幸紀くんちょっと待って」
一色姉妹に呼ばれ幸紀振り向く。
「いや何であいつらの言う事は聞くんだよ」
「人徳よ…それより幸紀っち
もしかして普通科の教室に行こうとしてる?」
「それだったら花園ちゃんは、そこには居ないよ〜」
「えっじゃ何処に?」
「図書室〜」
「いつもご飯食べたら本読みに行くらしいよ」
「図書室…か」
「うんうん、放課後もいるらしいよ」
「だから図書室の天使…じゃなかった神も
あながち間違えじゃないかも」
「あれ確か花園さんは」
「部活は、名前だけ貸してるらしいよ」
「幽霊部員〜♪」
「なっなるほど」
(何で一色姉妹は、花園さんの事そんなにも
詳しく知ってるんだろう…?)
「それはね、幸紀ッチを応援してるから」
「女子の情報網を使えばこんなもんよ」
(あれ!?今口に出したっけ?)
幸紀は、慌てて口を塞ぐ。
「大丈夫口に出してないよただ幸紀ッチが
分かりやすいだけ」
「それより幸紀くんは、ここであぶらをうってて良いの?」
「えっ?…あっ!!じゃ行って来ます
ありがとう!!」
「うん行ってらっしゃい〜」
「お礼は、今日の当番手伝って〜」
「わかった!!」
そう言って幸紀は、教室を出ていった。
「やった労働力ゲット」
「今日は、当番大変らしいからよかったね」
キャキャと一色姉妹が笑う。
その光景を見て賢治は、
「……すごいな女子」と呟いた。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
ガラガラ
「あら幸紀くんいらっしゃい」
「こんにちは」
幸紀が図書室に入ると受付に司書さんが座っており挨拶をする。
図書室は、昼休みと言うのもあるのか比較的
人が多く活気があった。
「えっと」
図書室をキョロキョロと見渡していると
隣から話しかけられる。
「…何か探し物?」
「いえ…花園さんを」
「…私?」
「えぇ……え!?」
いつの間にか隣にいる花園さんは、
不思議そうにこちらを見る。
「…私を探してたんですよね?」
「ええええい」
「えい?…とりあえず座らない?」
「はっはい」
花園さんの言われるまま空いている席に座る。
「…それで私に何の様ですか?」
花園さんは、本を抱きながら首を傾げる。
「かわっ……ごほん
……あれ?」
「…ん?」
幸紀は、会いに来た理由を今更になって考えてない事を思い出す。
「えっと…その…」
「何ですか?」
「…本」
「本?」
「そっそう本です。
俺本を読みたいと思ったんですが
どれを読もうか悩んでしまって
それで花園さんに相談してみようと思いまして」
「それで私に…」
「はっはい」
やっぱり無理があったか…
「……それで?」
「…え?」
「ジャンルは、どんなのが?」
「えっと…歴史物とか」
「日本史?世界史?」
花園さんが立ち上がり
本棚の方に向かう。
「えっとじゃ日本史で」
幸紀も後ろをついていく。
「時代はどれくらいがいい?」
「戦国…または、平安とか?」
「うーんじゃこれ」
花園さんが一つの本を差し出してくる。
「これは…」
「九州の戦国武将のお話なんだけど…」
幸紀は、渡された本に見覚えがある。
「……ダメかな」
「えっ!?いやそうじゃなくて
…これ読んだことがあって」
「あっそうなの?…面白かった?」
「うん面白くて好き」
そう言うと花園さんは、
嬉しそうに小さく笑う。
「そう…フフ、
この本私も好きなの…一緒ね」
「…一緒」
同じ物を好きになれた嬉しさに心が躍る。
その後も花園さんは、
色々な本を紹介してくれ
その中の一つを選ぶ。
「ありがとう良い本を見つけてくれて」
「…ううん」
そう言って首を振った
花園さんの頬が少し赤かった。
その日から
図書室で彼女と会うのが日課になっていく。
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