7 ルナリアの戦い1(ルナリア視点)


 王女ルナリアはガドレーザ王国において、抜群の人気を誇っている。


 それに増長することはないが、国民から好かれているのは王族としては立派な長所だ。


 ルナリアはその人気に応え、国民の期待に背かないように、常に自分を律してきた。


 清く、正しく、明るく、優しく――。


 剣の才能にも恵まれた彼女は、みずから軍の戦闘に立って指揮を執り、大勝利を収めたことも一度や二度ではない。


 美貌の軍神――。

 国民からの人気は年を追うごとにうなぎのぼりだった。


 だが――そんな彼女を快く思わない者たちもいた。


 実の兄である第一王子だ。


 ゆくゆくはガドレーザ国王の座を継ぐであろう彼は、いつごろからはルナリアを激しく疎むようになった。


 彼自身は凡庸で、国民人気ではルナリアに遠く及ばない。

 その嫉妬を、隠さなくなっていった。


 お前なんていなくなればいいのに――。

 そんな気持ちは、やがて殺意へと変わったようだ。


 兄から暗殺の手を差し向けられたことは、一度や二度ではない。


 ルナリア自身は幼かったころの仲がいい兄妹に戻りたいと思っている。

 だが、もうそんな日は永久に訪れないだろうことも悟っていた。


 彼女にできるのは、自分を貫くことだけ。

 兄に屈せず、王女として凛として生きる。


 これから先も、彼女はルナリア・ガドレーザとして生き続ける。

 だから、


「あたしは強くあらねばならない――民に勇気を示し、ガドレーザの意志を象徴する存在になる!」


 ルナリアは己を鼓舞するように叫んだ。


「メリル、あたしに力を貸してくれ」

「このメリル、いつでも姫様のために力を振るう所存」

「頼むぞ……我が友よ」

「いえ、別に友だちになった覚えはないのですが」

「えっ、そこ否定するの!?」


 ルナリアは思わず脱力した。


「ま、まあ、いい……奴は巨大化した……さらに身体能力や耐久力が増していると見るべきだろう。それを打ち破るには」


 ルナリアがメリルを見つめる。


「生半可な攻撃を繰り出したところで、大したダメージはないはず。狙うは一点――急所を破壊し、一撃で倒す」

「狙いがシビアになりますね」

「そこはあたしとお前が力を合わせて、成し遂げるだけだ」


 ルナリアが笑う。


「あたしとお前なら――不可能なんてない。子どものころからそうだった」

「あの炎竜王の軍勢との戦いでも、私を連れて行ってくださればよかったのに」

「すまんな。あのときは一軍を率いていた。メイドのお前を戦場に連れて行くことができなかったんだ」


 そのせいで不覚を取り、ガーラに救われることになったのだが――。


「さあ、いくぞメリル。一気にカタをつける!」






***

〇『いじめられっ子の俺が【殺人チート】で気に入らない奴らを次々に殺していく話。』

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