3 小国の危機に駆けつける
「さて、これから何をしようか――」
もはや老い先短い人生と思っていたら、いきなり十歳の少年に転生してしまった。
しかも前世の能力を全盛期状態で保持している。
「もう一度、武の道で最強を目指すのも悪くないな」
十歳でこの強さなのだ。
いずれ体が大きくなり、成長していけば――前世の全盛期すら超えられるかもしれない。
「ふむ。私、ワクワクしてきたぞ」
胸が湧き立つ。
新たな人生の目標ができた。
ギルドを追放されたときは、自分の半生とはなんだったのか……と絶望を覚えたものだが。
今は希望しか感じない。
よし、新たな人生を堪能しよう――。
私は意気揚々と歩きだした。
「ここがガドレーザ王国か」
竜王国とも呼ばれる国だ。
ちょうど一番近かったので訪れてみた。
決して大国ではないが、歴史のある古き国――。
景色も風光明媚で観光地としても人気がある国だった。
おおおおおおお……っ。
そのとき、遠くから声が聞こえてきた。
「あの声――」
私はハッと表情を引き締める。
兵士たちの声。
悲鳴と苦鳴。
そして、モンスターの咆哮。
――討伐戦の、声だ。
私は声がする方向に向かって走った。
かつての私は、短時間なら音速に近いスピードで走ることもできた。
だが、今の十歳の体で全盛期のスピードを再現したら、体の方が壊れてしまうだろう。
「まずは20%……」
私は両足に力を込め、駆ける。
20%とはいえ、他の者にはとてもついていけない速度だろう。
まさしく風のように町中を駆け抜けていく。
そして、現場に到着した。
その名の通り、竜の牙から生み出されるモンスターである。
主に竜族が己の兵として使うものだ。
私からすれば雑魚なのだが、兵士たちには圧倒的な強敵らしかった。
完全に押されている。
いや、それ以前に――士気がついていっていない。
闘志を持って立ち向かう者がほとんどいなさそうだ。
そんな中で、一人気を吐く者がいた。
「退くな! ここで我らが竜の兵を止めなければ、誰が民を守る!」
見目麗しい少女騎士である。
彼女がこの一隊を指揮しているらしい。
「そ、そんなこと言われたって――」
「に、逃げるぞ!」
兵たちはなんと逃げてしまった。
「なんという腑抜けどもだ……」
私は憤慨した。
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