第19話 調査

Q.親友が自分よりもハイスペックだったらどうしますか?


A.ぶち殺したくなります♪



 巨乳。


 それだけで、男を魅了する存在。


 それでいてかつ、顔も美人とくれば放って置かれない。


 しかもその上、成績も優秀と来ている。


 まあ、お勉強は出来るけど、ちょっとイカれたお嬢ちゃんだけど。


 それもまた、そそるかもしれない。


 最近、流行のヤンデレチックで。


優奈ゆうな、さっきからどうしたの? そんな風に小難しい顔をして」


 我が親友、道長杏子みちながきょうこが言う。


「ううん、何でもないよ」


 あたしはニコッと笑顔で返す。


 ちなみに、2人で昼休みに、中庭のベンチでお弁当を食べている。


 学年を代表する美少女2人が並んでいるから、それなりに注目されてしまう。


 まあどうせ、おサルくんたちは、このドスホルちゃんのドスホルたるゆえん、巨乳にばかり目が行っているでしょうけど。


 少しくらい、あたしの美脚を見てくれても良いのよ?


「あっ……」


「んっ?」


 きょうこりんがふと声を漏らすので、あたしもそちらに目を向ける。


「こんにちは」


 そこには、色気のある女教師がいた。


「えみりん、やっほ~」


「白川さん、言葉を慎みなさい」


保科ほしな先生、こんにちは」


「よろしい」


 えみりんこと、保科江美里ほしなえみり先生は、コホンと咳払いをする。


「少しばかり、お話よろしいかしら?」


「え~? でも、えみりんって、美人だけど年増だから、ピチギャルのあたしらと話が合わないっしょ?」


「黙りなさい、小娘ちゃん。生活指導として、教育的指導をされたいの?」


「うわ、横暴だよ、この教師」


「優奈、その辺にしておきなさい」


「さすがね、道長さん。あなたは、入学当初から変わらず、凛としているわ」


「ありがとうございます」


「いやいや、この子はただのドスホルですから」


「ドスホル?」


「ドスケベホルスタインの略。てか、えみりんもドスホルじゃね? きょうこりんとどっちが乳デカいの?」


「あれ、私が空手の黒帯だって、知らないの?」


「ボーリョク反対!」


「全く、うるさい子ね。ぜんぜん話が進まないじゃない」


「先生、どうしたんですか?」


 きょうこりんが問いかけると、えみりんは気を取り直すように、メガネを持ち上げる。


「児玉くんのことなんだけど……」


「こ、児玉くん!?」


 その名を聞いた途端、きょうこりんは浮き足立つ。


 ていうか、また白く飛びかけた。


「えみりん、児玉きゅんがどうしたの?」


「いえ、その……最近、時々、彼の様子がおかしい時があって」


「どんな風に?」


「何ていうか、ひどく落ち込んでいる時があって」


「えー、嘘ぉ! あたしも児玉きゅんのブルーな姿を見たい~!」


「いちいち騒がないで」


「てか、どうして、えみりんがそんなに児玉きゅんを気にかけるの? 好きなの?」


「違います」


「否定はやっ」


「私は生活指導として、たるんだ生徒を見過ごせないだけよ。彼、そうやって落ち込んだ時は、平気で授業をサボるし。風紀が乱れるのよ」


「てか、えみりんこそ、いつもそのエロさで風紀を乱しているっしょ?」


「服装検査、強制的に再検査地獄にするわよ?」


「職権乱用!」


「とにかく、児玉くんは良くも悪くも、注目される存在。そんな彼の動向はとても重要なの。だから、彼と繋がりが深そうな人に聞いて回ろうと思って……」


「え~、そんな~、あたしはまだそこまで~、児玉きゅんと繋がってないんていないよ~♡」


「いえ、最初はなからあなたには期待していなくて、道長さんに用があるのだけど」


「はっ?」


「ところで、さっきから道長さん、どうしたの? 何か白いけど……」


「ああ、良いの、良いの。普段から、ヤンデレ思考でブラック入っているから、たまには浄化しないと」


「よく分からないけど……あなた達、児玉くんに何もしてないないわよね?」


「してないよ~。むしろ、されたいっていうか」


「まさかとは思うけど、告白されて、フッたりとか……していないわよね?」


「はぁ~? 児玉きゅんに告白されて断る女とか、存在するの?」


「いえ、それは……ちなみに、道長さんは……」


「あー、ないない。もしそんなことされた瞬間、きょうこりんはこの世にいないから」


「そう、分かったわ。お昼休み中、お邪魔したわね」


「ううん、ちょうど良い暇つぶしになったよ」


「教師を何だと思っているのよ」


 ため息をこぼし、えみりんは去って行く。


 本当にエロい尻してんなぁ、とオヤジみたいなことを思ってしまう。


「てか、きょうこりん。いつまで飛んでるの~?」


 あたしがその巨乳に水平チョップを食らわせると、


「ひぐッ!?……ご、ごめんなさい」


「いや、別に良いけど」


「それで、保科先生は何て?」


「まあ、何か児玉きゅんのこと、ちょっと調べているっぽいよ~」


「まさか、先生も児玉くんのこと……好きなのかしら?」


「だとしたら、どうする? やっちゃう? あたしも加勢するよ~?」


「……いえ、やめておくわ。保科先生には、いつもお世話になっているから」


「ちぇっ、あの澄ました女に一泡吹かせてやりたかったのに」


「優奈、相手は先生なんだから、もっと敬いなさい」


「うるせー、巨乳はみんな敵なんだよ」


「そんな……優奈だって、そこそこ大きいじゃない」


「誰がそこそこだよ!」


 ビシッ、とまた巨乳を叩く。


「はうッ!?」


「あ、ごめん、やりすぎた。大丈夫?」


 あたしが気遣って言うと、


「……死んじゃうかも」


「えっ? ちょっ、きょうこりん? そんな……」


「……もし、児玉くんに同じことされたら、興奮しすぎて死ぬわ、確実に」


「うるせーよ、ドスホル」




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