「ネコさん、幸せだったかな？」

　少女が、ネコを見ながら、呟くように発したその言葉に、男性は全く自信がありません。

「…どう、…だろうな…。」

　普段と違う歯切れの悪さから、男性の動揺は激しいものだったのでしょう。そんな男性に、少女は、

「きっと、最期がおじさんの傍で、幸せだったよね。」と、声に出しました。

　少女と違い、遠くを見つめている男性は、まるで、ネコに何がしてやれたのだろう？…と、考え込んでいるようです。

　そんな男性をよそに、少女は、ネコを撫でながら、続けます。

「最初に会った時、ネコさん…、とても幸せそうに見えた。……きっと、おじさんに会う前は、とても、とても…、つらかったんだろうなって…。……私には、そう見えていたんだ。」

　まっすぐネコを見て言う姿に、男性は、ハッとしました。そして、男性は、少女を見つめます。相変わらず、少女の視線はネコに注がれています。

　少女は、ネコを見ながら、呟くように男性に聞きます。

「…ネコさんは、私が居て、幸せだったかな…？」

「きっと、幸せだったさ。」

　間髪入れずに、応える男性の言葉に、ポロポロポロポロと、再び、少女の目から涙がこぼれました。

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