第184話 今日は色々とあり過ぎる。のんびりする予定だったのだが……。
強力な魔物『キリング・シャーク』は俺の放った強烈な電撃魔法によって動きを停止した、……ように見える。
念のためだ。
上空からゆっくりと様子を伺いながら近づいてみる。
うん、これは死んでいると判断して良さそうだ。
あまりの電撃の衝撃で目玉が吹き飛んでしまっている。
ああ、そうだ。
せっかくだから、鑑定をしてみるか。
『鑑定!』
--
品目・種別:キリング・シャークの新鮮な死骸
総合等級:C
素材レベル:B
特記事項:異常種。
--
あー。
そうだった。
最近は平和だったし楽しいイベントが多かったこともあって、この事をすっかり忘れかけていた。
前に俺が倒した『インペラトール・トータス』という強大な亀の魔物が最後だったが、この世界に来てから異常種の存在に振り回されてきたのだ。
おそらく魔族の企みと思われる異常種や病気の発生などいった事件の数々は『インペラトール・トータス』が倒されたことによって失敗に終わったはず。
しかし実はまだ生き残りがいたということか、それとも『インペラトール・トータス』討伐の後に仕組まれていたのか?
まぁ、どちらでもよい。
とりあえず文字通り天誅を下したのだからな。
等級が低いのがやや気になるものの、おそらく電撃魔法で素材を痛めてしまったということか。
「ノエル、ユエ、魔物は倒したことだし、すぐに集落に戻るぞ」
「うん」
「そうしましょう」
さて、いそいそと集落に戻った我々を待ち受けていたのは大騒動だった。もちろん我々はこそこそ隠れてリトの家に帰れたのでその点は問題ない。
「キミたち、一体どこへ行っていたのさ! でも無事でよかった」
リトはちょっとばかしご機嫌斜めのようだ。
まだ、湖の主が倒されたことを知らないらしい。
「あ、いや、近くを散歩していたらものすごい音がして雷が落ちたからな。こうして慌てて戻ってきたという訳さ。大丈夫。心配せずとも湖の近くには行っていないぞ」
「そうなの。せっかくのお散歩が台無しになっちゃったの……」
「それはよかった。ちょうど今、集落の男衆が湖に出るところだヨ」
「『湖に出る』って、もしかすると例の魔物の調査か!」
「もちろん!」
「雷は大丈夫なのか?」
「それがあの一撃がブイに直撃したのさ。それでブイが砕けてしまってバラバラなんだ。こうなると湖に雷が落ちる可能性はほとんど無いという判断なんだ。ボクもそう思うよ」
「そっか、それなら安心ね」
「……で、そうだった、そうだった。ボクは君たちを寄合所まで案内しないとだった」
「寄合所?」
「そう、寄合所。みんなが共同で使う建物でこの集落で一番立派なんだ。ひとまずそこに集まって調査の続報を待たないと。それじゃ、すぐ行くよ」
こうして我々はあれよあれよという間にリトに言われるがまま、近くの寄合所へと向かった。
寄合所の中には二十人ほどが集まっている。
予想はしていたが、なかなかにこじんまりとした集落だ。
そこでしばらく待っていると、調査に出かけていた男数人が戻ってきた。
開口一番、大声で先頭にいた男が叫ぶ。
「やったぞ! 例の魔物は死んだ。これがその証拠だ」
男はそう言うと懐から何やらウチワのようなものを取り出した。
あれって、もしかしてウロコか!
「「「うぉおおおおおーーーー!!!!」」」
「やった。ついにやったぞ」
「あの忌々しい魔物がついに死んだか」
受け止め方は人それぞれだが、皆、喜びを分かち合っている。
少し落ち着いたところで、男が追加情報を出してきた。
「……で、『キリング・シャーク』の死骸なんだが、あまりにも大きすぎる。今、残りの男共で引き揚げ作業をやっている。俺もそろそろ戻らないと」
そう言って男は寄合所を出て行ってしまった。
なるほど。
確かにあの魚を岸へと引き揚げるのは一人では不可能だろう。
「う、うぅ」
バタッ
ん? なんだ?
「ちょっとアナタ、大丈夫――!?」
あろうことかリトの親父さんが胸を押さえたと思ったら、そのまま倒れてしまった。
これはもしや、あまりにも興奮し過ぎて心臓発作を起こしてしまったのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます