第97話 何はともあれ、どうやってサルキアを脱出しようか?
とにもかくにも一刻でも早くここサルキアを抜け出さなければ。そしてサンローゼに戻らなければならない。そうしなければ、おそらく俺は一生この事を後悔するだろう。
そうは言っても、今いる場所が場所だけに事はそう単純ではない。
何しろ、あれほど厳重な『審査』をくぐり抜けて入国した訳だ。それが、わずか数時間で『出国』というのではあまりにも怪しすぎる。いくらなんでも正攻法の手段は取らない方がいいだろう。
まぁ一応、俺の自信作の空間魔法を使えば何とかなる。つまりドンキル大渓谷に沿った長大な壁を飛翔して飛び越えることは可能だろう。
とはいえ、それをすればほぼ間違いなく監視に捕捉されてしまう。さすがに不用意に見つかってしまう事態は避けたいところだ。
う~む。
そうなると選択肢が残らない。
とても困った。
あぁ。空間魔法で瞬間テレポートが出来たらよかったのに……。だが、残念ながら現実はそう甘くはなかった。空間移動が使えればこんな問題は一瞬で解決するのに悔しいやらもどかしいやら。
時間が無いのに、すぐに行動できない。
これはもどかしいが、手順を間違えると大変な結末になってしまう。
慎重に脱出方法を決めなければ……。
まぁ、この際、その問題はとりあえず保留にしよう。
もう少し色々と手段を考えることにするか。
脱出するにしても暗くなってからだからな。
ひとまず今は旅路の食料の調達と準備だろうか。
こうして、大きな問題を一旦棚上げした俺は、食料を入手し、サルキアを脱出する用意を整えていた。
「そうだ。忘れるところだった!」
うっかりしてポーションを買い損ねるところだった。これがあるかないかではまさしく死活問題に繋がりかねない。
「えっ? ウソでしょ!?」
何とかポーション専門店を見つけた俺は、店内を見渡して驚愕した。
結果から言えば、品揃えがあまりにも貧弱だった。
厳密に言えばそれは違うか。
体力やケガ病気を回復させる系統のポーションはそれなりに置かれている。だが、魔力回復系の効果を含むポーションが全然無いのだ。
これはどうしよう。
また新たな問題が出現してしまった。
完全に俺のミスなのだが、うかつにも魔力回復の機能があるポーションの手持ちの在庫がわずかしかない。こんなことになるのなら、つい先日、一緒になって流行り病の特効薬を作ったセラにお願いすればよかった。
だが、今それを思っても、時すでに遅し。
棚には6本のポーションが並んでいた。
もちろん全て買いたいが、悩んだ末、半分の3本だけ買うことに決めた。
この品揃えの貧弱さを見るに、たまたま在庫が切れたとかそういう問題ではない。はっきりと言えば、最初から取り扱っていないようだ。それはすなわち、魔力回復という用途の需要が少ないことを意味している。
そんなポーションを1人の客がすべて買い占めるとなると、あまりにも怪しい。いきなりの不審者ムーブを決め込むのは得策ではない。
さてと……。
ポーションはひとまず何とかなった。数としては物足りないが、少しでも追加できただけでも良しとしよう。
残る問題は棚上げしていたサルキアからの脱出方法だ。
おそらく正式な手続きをして戻るとなれば、また検問所で厳重なチェックのうえ、出国の審査がなされるはずだ。やはり、ちょっとそれは遠慮したい。
その案が却下となると、やはり『壁越え』か……。
そうだな。とりあえず、大渓谷沿いの壁に行ってみるか。
実際に壁を見てから決めよう。
◇
ここだ。
幸いにも壁まで隠れられるような場所がそれなりにあり、とくに警備に見つからず壁際まで来られた。
なるほど。
壁は分厚く、高さとしても15メートル位はありそうだ。
異常なまでの警備体制と言える。
うーん。これをどうやって超えるかどうか……。
やはり飛び越えるのは夜であったとしても見つかるリスクが高そうだ。
さて、どうしたものか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます