第77話 空間魔法を求めにサティアへGO‼


 出入口から姿を現した俺を二人はきちんと待ってくれていた。

 まぁ、とはいえ、たかだか数分くらいだが……。


 「もう終わったのかしら。思いのほか早かったわね」


 「魔法は習得できましたか?」


 「あぁ。問題ない。無事に習得できたようだ。わざわざ待ってくれて、かたじけない」


 こうしてスタナでの仕事というかノルマは達成された。

 放水魔法、ゲットだぜ!


 さてと。

 それはともかく、またもや軽い悩み事だ。

 いつものようにこの二人と別れるかどうかを考える。


 「二人はこれからどうするんだ? 俺は冒険者であるのと同時に旅人だから、このまま先へと進むが……」


 「私たちは一度、カディナに戻ります。大きな牙や魔石を処理したいのです」


 うむ。

 そうだった。


 ジャイアント・ボアの牙は一緒に旅の友として持ち歩くような代物ではけっしてない。あのような重くて大きいものは邪魔だ。ましてやかさばるだけでなく、価値もそれなりにあるとなれば、早く換金して身軽になりたい気持ちはよくわかる。


 「なるほど、わかった。それなら俺たちはここでお別れだな」


 彼女らはトボトボと元来た街道を引き返していく。さすがに価値のある素材を宿に置いたままにする訳にはいかず、荷物をすべて持ってきていたのだ。


 まぁ、あれだ。


 残念ながら二人とも戦闘放水魔法はダメだったが、ジャイアント・ボアの素材が手に入ったのだから、成果としてはそれなりだろう。素材の売却のため彼女ら自ら引き返した訳だし、その点、こちらも気が楽というもの。


 さて、俺が彼女らに付いていかなかったのにはもちろん理由がある。


 第一に、まだ今回の旅で最大の目的地であるサティアの街に行けていないこと。これが大きい。少なくとも、そこの石碑を見ないことにはサンローゼに戻れない。


 次の理由は『空間魔法』についての情報が二人にバレてしまうことを恐れていたからだ。そもそも空間魔法というのはかなり特殊な魔法であって、大陸でも習得できる石碑はないに等しい。


 このサティアの石碑についても、俺が地図屋で超高額な石碑の地図を買って、ようやく知りえたものだ。この情報をあまつさえ第三者に漏らすのは危険すぎる。とはいえ、サティアの石碑で確実に習得できる保証はどこにもない。こちらも地図屋の親父によるとレベルの話でしかないらしい。


 仮にサティアがダメだった場合は大陸の辺境にある石碑まで行かないと空間魔法は習得できない。それは出来れば避けたいところだ。他力本願になってしまうが、俺のドクロ・パワー(?)で勝手に石碑のチラ見で空間魔法が手に入ることを祈ろう。


 さて、そうと決まれば善は急げ。

 すぐに宿に戻って、出発の準備をしなければ。


 まだ午前中だから、サクッと準備をして、宿で早めの昼食を取り、それから出発だ。距離からすると、夕方には着けるはずだ。


 ちなみに宿には他の客はおらず、貸し切り状態だ。俺はおばちゃんのご厚意でまだチェックアウトはしていないのだ。もちろん追加料金は必要ない。


 だが、準備や昼食の前に一つだけ急いでやることがある。


 「ステータス・オープン!」

 そう、自分のステータス画面の確認だ。


 --

 名前:サイ

 種族:ヒューマ

 職業:冒険者(Eランク)

 HP:1328 / 1328

 MP:2552 / 2552

 魔法:戦闘火焔魔法(超級)、日常火焔魔法(超級)、日常放水魔法(中級)、戦闘放水魔法(超級)

 スキル:身体強化、鑑定、魔力覚醒

 特記事項:状態異常(迷い人)

 --


 おお!

 うぉおおお!!


 当たり前だが、魔法が増えている。放水魔法が2種類。ついに火焔系以外の属性の魔法を手に入れた。


 既に魔法やスキルをいくつか得ていても、こうして新たに獲得するのは気持ちがいい。


 あっ、よく見るとHPだけでなく、MPも劇的に伸びている。とくにMPは倍以上の数字になっていやしないか? 


『ジャイアント・ボア』1頭でこんな数字になるのは考えにくいから、やっぱりカディナの街で倒した異常種の『ブラッド・ベアー』2頭のおかげだな。


 それと忘れてはならないのが、謎スキル【魔力覚醒】。


 もしかすると、これの影響もあるのかもしれない。

 まだよく分からないことだらけだが、おそらく倒した経験値の倍くらいが加算されている気がする。


 ステータスを確認し、諸々を済ませたところで、いざサティアへ向けて出発だ!



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