4.記憶のない返信
やっとだ…
やっと君に出会える…
やっと手に入れられる
…そう思っていた
なのに
どうして、いつも俺を阻む
どうして、俺たちを引き剥がす
運命というものは俺たちが一緒になることが気に食わないらしい
だが、何が気に食わないのか、俺の知ったことではない
俺はただ、手に入れるだけだ
このクソみたいな運命は俺がぶち壊す
俺は諦めない
だから、待ってろ…みこ
─────────────────
「はっ?!!!」
僕は慌てて飛び起きた。
カーテンの隙間からは陽光が差している。
「夢…か」
それは、真っ暗闇で男の声が反響するだけだった。何を言っていたのかは全く覚えていないが、不思議と恐怖はなかった。
それもそうだ。あんまり夢を見る方ではないから、久しぶりの夢に驚いただけだし、覚えていないんだから、怖さも気味悪さもあるわけがない。きっと疲れてんだな。仕事のセーブも最近したばっかだし。
頭を無造作に掻きながら、あることに気付く。
「あっ!!風呂忘れてた…」
見ると、昨日、出掛けたままの服だった。
そのままベッドにダイブか…
布団も被ってないしな。
ピピピッピ ピピピッピ ピピピッピ
8:00
スマホのアラームを止めると、
「えっ?!!なんだ、これ?!」
見覚えのない企業からの返信メールが来ていたのだ。
「ウェイブリット社?」
メールを開くと、
『弊社の依頼をお受けして頂き、ありがとうございます。水曜日、よろしくお願いします。』
状況が飲み込めず、自分の送信メールも開く。読むと、確かに文章の構成も言い回しも普段通りだ。
「もしかして寝ぼけて送った…とか?」
確かに送った記憶はないから、寝ぼけていた可能性はある。
ただ、送ったのが、たとえ自分ではないとしても、今回の依頼は受けたような気がするのだ。何か強い意志を持って。
なぜだか、そういう直感的な確信はあった。
自分の知らない所で、別の自分が動いているような感覚だ。
ってSFかよ。いや、ホラーだな。
それに、初めて聞いた企業なのに、むしろ以前にも見たことあるような感じがする。
しかも、そこには、無性に追い求めていた何かがある、変な感覚がある。でも、それは、なんかモヤモヤするというか…
何だこれ、このよく分からない感情は…
て、朝から、変なこと考え過ぎだな。
「よし、とりあえず、顔洗ってこよ」
スマホをベッドに投げやると、洗面所へそそくさと向かう。顔を洗って、朝ご飯を食べて、なんやかんやしていると、さっき考えていたことなんて、もうすっかり忘れていた。
しかし、この違和感はだんだんと自分に深く沈み込んでゆくことを、この時の僕はまだ知らない。
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