第127話 結婚式

白いタキシードを纏った俺は待合室で声がかかるのを待っていた。


「よう、来たぞ!」


明るいヨウヘーの声が扉を開くと聞こえてくる。

男子応援団の仲間達が久しぶりに顔を合わせる。


「久しぶりだね。ヨル」

「セイヤも忙しいのに良く来てくれた」

「そりゃね。ヨルの結婚式だもん。僕のときもきてくれるんでしょ?」

「ああ。そのときは喜んでお祝いさせてもうさ」


ヨウヘーが容易されたワインを手にとって早速蓋を開ける。


「おいおい、20歳になったばかりなのにもう好きなのか?」

「くくく、身体に合ってたみたでな飲まずのはいられないんだ」

「身体に悪いんだからほどほどにな」


ヨウヘーからハヤトに視線を向ける。


「ヨッユーオベデドウ!!!」


号泣するハヤトはユタカにハンカチを渡されている。


「ヨル。おめでとう。今日は妹と一緒に来ているからツキさんの方に言っていると思うけど一緒に祝わせてもらうよ」

「ああ。ユタカも来てくれてありがとう。キラたちも来ているのか?」

「うん。キラたちは出し物のためにカオル先生と用意していると思うよ」

「はは、頼んだかいがあるな」

「本当におめでとう。こんなにも早く結婚して【邪神様】を引退するなんて、怒濤だったね」

「ああ、でも最初から決めていたからな」


ユタカの言葉に応えるように俺は窓際に立って式場の外を見る。


「この世界は男性が少なくて女性が多い。【邪神様】女性たちの心を惑わせる。それは俺が望む姿じゃない」

「そうか。僕はアイドルとして活動し始めて楽しく過ごしているよ」

「それはよかった。それを否定するつもりはないさ。応援しているよ」

「うん」


式場の人に頼んで五人で記念撮影を取る。

みんなスーツを着ていて、少しだけ大人になった姿は初めて出会った高校一年生のときよりも成長を遂げた。


「また後でね」

「セイヤ、みんなのことは頼む」

「ああ。団長の代わりは勤めておくよ」


拳をぶつけ合って、セイヤと別れる。


「ふぅ~大勢の人に見届けてもらう。だけど、緊張するな」

「新夫様。ご用意が出来ました」

「はい」


式場の扉の前に母さんが待っていた。


「あなたを送り出す日が来たのね」

「母さんには感謝しているよ」

「ふふ、本当にこんな日が来るなんて高校生になるまでは思わなかったわね」


母さんと腕を組む。


結婚式場の扉が開かれて左右に立会人が並ぶ。

これまで多くの人たちと関わってきた。

もう二度と会わない人もいる。


それでも貞操概念逆転世界に来て、過ごした時間は真実の時間だ。


「母さん今までありがとうございます。俺は結婚して、奥さんをもらいます」

「もう、泣かせないで……お化粧が落ちちゃうから」


母さんの瞳に光の滴が落ちていく。


「ヨル~おめでとう!!!」

「ヨル君おめでとう」


セイヤとアカリさん、アスカやクラスメイト。

男子応援団のメンバー俺の知り会いたちから声がかかって答えながら手を振る。


見たこともない人たちも大勢いるけど、彼女側の立会人たちに頭を下げる。


「よくぞ参られました」


シスターに出迎えられて、八人の乙女が白きベールを纏って出迎える。


母さんの腕を離れ、八人の乙女の前にでる。


「それではベールを」


神の誓いを行う前に、俺は八人のベールを一人一人外していく。


「タエ、綺麗だ」


右端に立つタエの姿は女性らしい肩の出た豪華な純白のドレスで、その姿はとても美しかった。


「はい。あなた」


嬉しそうに笑うタエは美しい。


次に白無垢を着たツユちゃんの前に立つ。


「今まで一番だよ」

「ありがとう。ヨル。愛しているわ」


ツユちゃんは妖艶な笑みを浮かべている。


「俺も愛しているよ」


ヒナタはスレンダーな身体をタイトなウェディングドレスに身に纏う。


「ずっと側にいてくれ」

「いる。私の全てはあなたのもの」


ランはミニスカートの可愛いウェディングドレスを着て鍛え上げられた足をさらけ出す。


「綺麗だ。やっぱりランの足は誰よりも素晴らしい」

「あなたに私の一番を見せたかったから」

「見ているよ」


テルミはシンプルであり、もっとも似合うウエディングドレスを着ていた。


「あっ、あの私がお嫁さんで」

「幸せだ。テルミが俺のお嫁さんになってくれて、幸せだよ」

「はい!」


ユウナは背中が開いたウエディングドレスを大胆に着こなす。


「ヨル~いっぱいイチャイチャしようね」

「ああ。ユウナが世界を取ってくれたらいっぱい甘えさせてやるよ」

「もう、ハードル高すぎ。でも、絶対やるよ。ヨルがそれを望むなら私は無敵だからね」


ツキの前に立つ。黒髪に似合った純白のドレスは、ベールをはがすと紫の瞳が俺を見る。


「兄さん。やっと私の願いが叶うのですね」

「ああ。ツキと俺の願いがな」

「はい」


レイカは胸元が大きく開かれたウエディングドレスを大胆に着こなしていた。


「あなたが望んだ姿かしら?」

「ああ。レイカの一番綺麗な姿だよ」

「ふふ、そんなことをいうのはあなただけよ」


全員のベールを上げるとシスターが頷く。


「皆と近いのキスを」


俺は一人一人にキスをしていく。


「誓いのキスをもって、結婚の誓いを結びます」


シスターの声と共に立会人から祝福の声が上がる。


結婚式は盛大に幕を閉じた……

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